あとしまつ
境界都市に、緊急連絡が入ったのは三日後だった。
北街道のさらに奥。
渓谷沿いの集落。
魔獣の群れ。
加えて、地盤沈下。
公式混成部隊が先行。
ブリッジは後方待機。
そう通達された。
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掲示板の前。
人だかり。
紙には赤印。
公式混成部隊 出動中
猫族が見上げる。
「いかない?」
葵は首を振る。
「今日は、呼ばれてない」
リオは腕を組む。
「規模が違う」
セラが空を見上げる。
遠くに光。
ジーナが小さく報告する。
「勇者隊も同時展開しています」
「そっか」
葵はそれ以上聞かなかった。
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夕方。
境界都市の通信水晶が点灯。
報告。
魔獣殲滅。
だが地盤崩落。
谷側集落、半壊。
負傷者多数。
死者は出ていない。
指令所は「成功」と処理した。
町はざわつく。
「助かったんだからいいだろ」
「家がなくなった」
「またか」
⸻
夜。
ブリッジの簡易宿。
猫族は落ち着かない。
リオは地図を見つめている。
葵は窓際。
ジーナが控えめに言う。
「現場、環境損失率推定61%」
葵は目を閉じる。
「……高いね」
「はい」
それだけ。
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翌朝。
行政区から使者が来た。
形式ばった服。
丁寧な口調。
「ブリッジの皆様に、協力要請です」
葵は一瞬黙る。
「どんな?」
「崩落後の集落復旧。
公式混成は前線に戻ります」
リオが聞く。
「住民は?」
「避難済みですが、水と道が」
葵は頷く。
「行きます」
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現地。
谷沿いの村。
半分が崩れている。
瓦礫。
濁った川。
猫族が走る。
セラが上から安全確認。
リオが地形を読む。
葵が支柱を組む。
ジーナが言う。
「この斜面、二段階補強が必要です」
「了解」
誰も派手なことはしない。
時間がかかる。
でも少しずつ形になる。
住民が手伝い始める。
誰かが水を運ぶ。
誰かが木を切る。
夕方には仮設通路ができる。
夜には水が戻る。
拍手はない。
ただ、深い息。
帰路。
リオがぽつり。
「公式は、間違ってない」
葵は歩きながら答える。
「うん」
少し間。
リオは続ける。
「でも……」
言葉を探してから、
「今日は、長かった」
葵は一瞬考えてから頷く。
「そうだね」
同時刻。
勇者隊。
別の戦線。
アルテリオが魔獣の群れを切り伏せる。
一瞬。
完璧。
ミアは後方で治癒。
カイルは索敵。
グロウは盾。
勝利。
また一つ拠点が消える。
指令が来る。
「次へ」
アルテリオは剣を納める。
迷いはない。
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境界都市。
ブリッジは泥だらけで戻る。
掲示板には公式混成の新しい戦果。
大きな文字。
誰かが言う。
「やっぱ勇者だ」
葵はそれを見て、目を逸らした。
猫族が袖を引く。
「おなかすいた」
葵は小さく笑う。
「帰ろ」




