表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/26

「アルテリオ、初陣」

出陣は即日だった。


魔族の先遣部隊が、王都郊外まで迫っていたからだ。


アルテリオは拒まなかった。


装備の説明を受け、剣を受け取り、防具を身につける。


訓練など不要。


身体が最初から動く。


仲間として同行するのは三人:


回復役のミア。

弓使いのカイル。

盾役のグロウ。


全員、歴戦。


でも誰よりも緊張していた。


城門が開く。


外は焼けた草原。


遠くに黒い影が蠢いている。


魔族兵。


異形の体。

歪んだ角。

赤い目。


数は百を超えていた。


普通なら撤退案件。


アルテリオは一歩前に出る。


剣を構え、深く息を吸う。


「みんな、後ろでいい」


ミアが叫ぶ。


「アル!? 単独は――」


アルテリオは振り返って微笑んだ。


「大丈夫。守るよ」


次の瞬間。


地面を蹴った。


速すぎて、仲間の視界から一瞬消える。


一体目。


横薙ぎ。


魔族の胴が裂ける。


二体目。


突き。


核を貫通。


三体目。


空中で回転しながら斬り落とす。


魔法も補助もいらない。


剣だけで、前線が崩壊していく。


魔族の反撃が入る。


黒い火球。


アルテリオは避けない。


直撃。


――だが倒れない。


世界補正が発動。


皮膚は焦げても、致命にはならない。


アルテリオは歯を食いしばり、踏み込む。


「終わらせる!」


剣が光る。


光波が走る。


十数体がまとめて吹き飛ぶ。


戦闘開始から、わずか三分。


魔族部隊は壊滅した。


静寂。


風だけが吹く。


仲間たちは立ち尽くしていた。


カイルが呟く。


「……一人で足りるじゃん」


グロウが苦笑する。


「俺たち、何しに来たんだ」


アルテリオは剣を下ろし、息を整えた。


そして仲間の方を向く。


「怪我してない?」


ミアが首を振る。


「あなたこそ……」


アルテリオは肩をすくめる。


「このくらい平気」


そして倒れた魔族を見つめる。


表情は変わらない。


憎しみも、快楽もない。


ただ、


「もう、誰も傷つかなくていい」


それだけ。


この瞬間、


世界は確信した。


この勇者は完璧だ、と。



その同時刻。


遠く離れた日本。


雷雨の夜。


一人の少年が、部屋で椅子に座っていた。


名前は葵。


耳元には、小さな妖精端末。


「jp-mu76、初期化を開始します」


淡々とした声。


外で雷が落ちる。


通信塔が光る。


世界のどこかで、勇者が召喚され、


同じ瞬間、


演算層がズレた。


白。


ノイズ。


座標消失。


誰にも観測されない落下。


――ここから、もう一本の物語が始まる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ