表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者が世界を救ったあと、僕は国を作ることにした  作者: あおいにじ
第二章:観測される側の論理
19/26

エリート部隊

朝。


境界都市の掲示板が、いつもより騒がしかった。


紙が何枚も重ねて貼られている。


赤い封蝋。


行政印。


猫族が先に見つける。


「ぶりっじ!」


葵が近づく。


大きな文字。



多種族混成対応部隊 発足のお知らせ


人間・エルフ・オーガ・猫族・天使、各勢力より選抜された人員による

都市間連携試験部隊を設立する。


目的:魔族対応およびインフラ復旧の迅速化。



リオが静かに読む。


「……来たな」


葵は瞬きをする。


「来たって?」


「上が動いた」


周囲では傭兵たちが話している。


「混成だってさ」


「勇者とは別枠らしい」


「選抜だぞ、選抜」


「装備も出るって」


空気が少し浮き立つ。


猫族が首をかしげる。


「みんな、まね?」


葵は苦笑する。


「たぶんね」


ジーナが淡々と補足する。


「ブリッジの活動ログと相関性があります。

制度化までの所要期間、予測より短縮されています」


「早いね」


「成果が可視化されたためです」



昼。


受付前。


葵たちは依頼の確認に来ていた。


いつもの事務員。


でも今日は、後ろに別の職員が立っている。


書類の厚みが違う。


事務員は少し言いづらそうに言った。


「……大型案件が出ています」


葵が顔を上げる。


「どんな?」


「北街道の崩落地帯。

魔獣複数。住民孤立」


リオが反応する。


「構造と戦闘、両方いる案件ですね」


事務員は頷く。


「はい。ただ……」


一瞬間。


「こちらは、新設混成部隊の初出動案件になります」


葵は黙る。


「ブリッジには、周辺の小規模復旧をお願いしたい」


つまり。


大きい仕事は、そっち。


葵はゆっくり頷いた。


「分かりました」


事務員はほっとした顔をする。


「助かります」



宿への帰り道。


猫族が小さく言う。


「あっち、すごそう」


リオは歩きながら答える。


「実際すごいだろうな」


葵は地面を見る。


「俺たち、外された?」


リオは少し考える。


「優先順位の問題だ」


葵は小さく息を吐く。


「そっか」


セラが静かに言う。


「合理的判断です」


ジーナも続ける。


「現在のブリッジは、戦闘能力より環境対応に強みがあります」


「便利屋枠だね」


「表現としては近いです」


葵は苦笑した。



夕方。


酒場の壁に、新しい紙。


混成対応第一部隊 出動


構成員の名前。


肩書き。


装備一覧。


猫族の目が丸くなる。


「よろい、すごい」


リオは静かに読む。


「エルフの計算官……オーガの前衛……天使の指揮官」


葵は覗き込む。


「ちゃんと揃ってる」


「揃えたんだ」


「強そう」


リオは頷く。


「強い」


それだけ。



夜。


ブリッジの簡易宿。


猫族は疲れて寝ている。


セラは外。


リオは地図を畳む。


葵は椅子にもたれる。


「なんかさ」


リオが見る。


「うん」


「俺たち、追い抜かれた?」


リオは首を振る。


「違う」


「じゃあなに」


リオは少し考える。


「並ばれた」


葵は目を瞬く。


「それ、同じじゃない?」


リオは小さく笑う。


「違う。

向こうは“作られた混成”。

こっちは……」


言葉を探す。


「……成り行きだ」


葵は少し笑った。


「成り行き、強いよね」


ジーナが静かに言う。


「成り行きは予測困難です」


「だよね」



同時刻。


北街道。


新設混成部隊。


整った隊列。


完璧な装備。


エルフの計算官が指示を出す。


オーガが前に出る。


猫族が偵察。


天使が全体を統制。


魔獣の群れが現れる。


連携。


一糸乱れぬ動き。


強い。


短時間で殲滅。


住民救出。


被害軽微。


報告が即座に都市へ送られる。



境界都市。


掲示板に貼り出される戦果。


人だかり。


歓声。


「すげえ」


「これが混成か」


誰かが言う。


「ブリッジより上じゃん」


葵は遠くからそれを見る。


猫族は読めない。


リオは視線を外す。


ジーナが小さく報告する。


「公式混成部隊、初戦成功です」


「そっか」


葵は頷く。


胸の奥が、少しだけ重い。


でも仕事は残っている。


明日は給水路。


その次は屋根。


葵は立ち上がる。


「よし。寝よう」


リオも頷く。



光る戦果と、静かな復旧。


同じ“混成”。


でも、形は違う。


まだ誰も、それに名前をつけていない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ