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勇者が世界を救ったあと、僕は国を作ることにした  作者: あおいにじ
第二章:観測される側の論理
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やりがい

朝。


境界都市の掲示板に、人だかりができていた。


新しい依頼書が貼られる。


その中に、小さく〈ブリッジ〉の文字。


猫族が一番に見つける。


「ぶりっじ!」


葵は近づいて読む。


旧居住区・給水管補修。

南門倉庫・倒壊防止作業。


戦闘じゃない。


でも町にとっては重要。


受付の事務員が声をかけてくる。


「……あなたたちですよね」


葵が頷く。


「昨日の火災の」


事務員は少し迷ってから言う。


「同じ依頼主から、続きが来てます」


リオが一歩前に出る。


「構造系ですか」


「はい」


それだけで話が通じる。



午前中は給水管。


地下に潜る。


猫族が先行。


リオが配管の歪みを読む。


葵が支柱を運ぶ。


セラが上から振動を監視。


ジーナが耳元で告げる。


「この継ぎ目、内圧が上がっています。

外側から締めると破裂します」


「じゃあ?」


「一度水を抜いてください」


葵が栓を回す。


水が止まる。


補修。


再開。


うまくいく。


作業員が目を丸くする。


「そんなやり方、知らなかった」


葵は笑う。


「俺も今知りました」


ジーナ経由。



昼。


倉庫。


梁が傾いている。


正規の工務隊は順番待ちで三日後。


でも今にも落ちそう。


依頼主が困った顔。


リオが即答する。


「今日いけます」


猫族が資材を運ぶ。


葵が仮支柱を組む。


セラが上空から微調整。


ジーナが角度を指示。


誰も大声を出さない。


でも動きは早い。


夕方には応急補強完了。


拍手。


依頼主が頭を下げる。


「助かりました。

あんたたち、本当に“橋”みたいだ」


葵は少し照れる。



宿に戻ると、知らない人が待っていた。


革鎧の男。


傭兵。


昨日の人とは別。


「ブリッジさん?」


葵は頷く。


「北区の排水路、見てもらえないか」


続けて別の人。


「うちの家、床が沈んでて」


さらに。


「魔獣の足跡が畑に」


一気に三件。


葵は目を丸くする。


リオが小声で言う。


「……来たな」


「なにが」


「仕事が」



夜。


簡易食堂。


パンとスープ。


猫族は疲れて丸くなっている。


セラは外。


リオが地図を広げる。


「このまま全部受けたら、体がもたない」


葵は頷く。


「優先順位決めよう」


ジーナが静かに補足する。


「インフラ系を先に。

放置すると被害が拡大します」


「了解」


初めて、ちゃんと“選ぶ”。



同時刻。


人間側行政区。


簡易会議室。


数人の担当官。


壁の地図。


赤い印。


「最近、境界都市で小規模復旧が急増しています」


「誰が?」


「混成旅団。名はブリッジ」


エルフの代表が資料を見る。


「天使同行?」


「はい」


一瞬の沈黙。


「勇者とは別系統ですね」


「ええ。戦果は小さいですが、影響範囲が広い」


誰かが言う。


「再現できませんか」


別の誰か。


「検討中です」



さらに遠く。


魔族領。


黒い会議室。


斥候報告。


「境界都市周辺で活動する混成集団。

名はブリッジ」


幹部の一人が低く言う。


「勇者ではない?」


「違います」


「戦闘能力は?」


「低い。ただし……」


斥候は少し言葉を選ぶ。


「局所的に戦況と環境が変化します」


静寂。


黒衣の幹部が指を組む。


「……記録対象に入れろ」


「優先度は?」


「中。まだ脅威ではない」


だが、名は刻まれた。



夜風。


境界都市の外れ。


葵は屋根の上で空を見る。


星が多い。


ジーナが小さく言う。


「葵。現在総合干渉値、約23.4」


「少しずつだね」


「はい」


下では猫族が寝息を立てている。


リオは地図を畳んだ。


セラは空に溶ける。


葵は深く息を吸う。


明日はまた仕事。


それでいい。


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