表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷い  作者: あ行
迷い
9/13

9もっと

「もっと強くならないと。」

 何者かが竹刀を持って一生懸命振っている。

「ん。今日のはやけに美味いなぁ。」

 皿の上にのっている肉が輝いている。

「喜んでいただけて光栄です。」

 相変わらず使いは気味の悪い笑みを浮かべている。

 食夜は肉にナイフを刺した。

 ――――――――――

「っ……!」

 ビッと言う音と共に、食夜の頬に血が垂れる。

「誰だか知らないが、襲ってくる奴は容赦せぬ。」

 素早く近付き竹刀を振り落とした。普通の竹刀ではない。

 速い……。

「お強い方でしたか。」

 にやっと笑う。夕方時の光でさらに怪しさが増す。使いは、風であおられているカーテンのように、ひらひらと避ける。

 どうしましょう……。脚を先に折るか?いや、それでもこの速さならくらってしまう。しかし、首を狙うと……あぁ。こうしている内に、主人はのんびりとしているのだろう。羨ましい。もうやめたい。

 使いの目がを一瞬緩む。その時を待ってたのかと言う程に目の前に竹刀が来る。

 今だ……!

「やめて。」

「!」

 竹刀の奴が振りかざしかけた手を止める。

 目の前にいる使いは黙って泣いている。上目遣いで。まるで悪い事をした子供のようだ。

「……ぅ、……あ。」

 目先の奴の顔面に、はてなが食い込まれている。

「そんな命が惜しいか。だが残念だ。我は油断はしないんでな。」

 ゴッ

 やば……。

 避けようとしたが、もう遅かった。頭をやられた。その場に倒れ込む。

「……ぅ。」

「やったか。さてと。」

 竹刀の奴が後ろを振り向く。半襦袢(はんじゅばん)かなびく。油断。その瞬間、

 ばきっ

「やれやれ、あまりこの様な真似は、したくなかったんですが。一件落着です。」

 ぱっぱっと手についた砂を払う。使いは倒れたフリをしていたのだ。小さなため息をつく。

「擦れ傷程度ですが、一応手当をしなければなりませんねぇ。」

 傷の付いた手を太陽にかざす。指の間から光が漏れる。使いの目が揺れる。


「これくらいでしょうか。」

 使いは社の階段に座っている。側に、傷薬と包帯が置かれている。

「結構傷がついてしまいました。あの程度の者なのに、腕が落ちたかもしれませんねぇ。主人の使いとして失格です。」

    少しの間が空く。使いの表情が暗くなる。夕方の太陽さえ忘れるぐらい。

――――――――――――――

 「ん。もっと喰いたいなぁ。次も美味い奴を期待してるぞ。」

 席を立ち、使いに手の平を向ける。

「はい。ご期待にお応えできる様、しっかりと務めさせて頂きます。」

 使いが丁寧にお辞儀した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ