1食事
「今日は何人迷い込んだ。」
不敵な笑みを浮かべて、一人玉座に座っている。食夜が見下しながら問いかける。淡い月明かりが包む。
「はい。今日は一人でございます。」
使いも不気味な笑みをして、執事みたくお辞儀する。
「よくやった。では食そう。」
頬に乗せていた骨と皮だけの手が、椅子の手すりに移した。
「かしこまりました。」
手の平を胸に当て、身体を前に下す。そして食夜の後について行く。
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二人以外誰もいないのに、縦に長いテーブルがポツンと存在している。その両端に椅子二席が置かれている。照明が無駄にぎらぎら光っている。
「どうぞ。」
主人の目の前に皿を置く。主人はまた口角をニッと上げた。主人はよく笑う。
「ん、これは子供か。どれ、どんな人生を歩んできたのか見せておくれ。」
照明で肉がきらきら光沢している。ナイフで綺麗に裂いてやる。スッと入る。もう片方の手に持っているフォークで肉を刺す。そして涎いっぱいの口に運ぶ。
「お母さん!見て見て!」
子供の記憶だ。太陽の笑顔で見ている。手には一匹の金魚が入っている器と、ぼろぼろのぽいを一つ持っている。
「すごいなぁ。可愛い金魚さんやなぁ。」
子供の母親なのか。優しく微笑んでいる。
「……。ふぅん、なるほど。面白い。」
食夜は満足気な顔をしている。
食夜→食べる奴