第2話 魔王軍の最初のピース
この世界は前世とは全く時代も環境も異なる。
そう、まさに異世界。
時代は中世あたりだろうか?
レンガ作りの建物が多く、自動車ではなく馬車を使っている。
総理大臣の代わりに王様がおり、警察ではなく騎士が国を守っている。
僕が1番テンションが上がったのはやはり魔法の存在だろう。
この世界では剣術や体術の他に魔法が戦闘の基本となっている。実に素晴らしい。
今日も相変わらず福音書を眺めている。
記述通り魔王修行は続けており、少し早いが魔王の衣装も用意してしまった。
あとは何が足りない……?
「魔王軍……。魔王軍だ! 1人寂しく魔王を名乗っても僕の目指す完全無欠の魔王にはなれないんだ!」
僕の思いが伝わったのか福音書は眩く光始める。
慌てて本の中を確認すると新しい記述が追加されている。
『王都郊外で彷徨う双子のエルフを助け、魔王軍に加えろ』
今までには無いパターン。
自分の願望を記述してくれるとはなんて親切な本なんだ。
今日も大事にアルコールで磨いてあげるよ、本さん。
「いざ、出発!」
善は急げ。僕の良い所・長所は間違いなく行動力だ。
エルフを助けるか……
この世界には人間の他にも獣人とか亜人などの他の種族も存在するが、エルフを見た事は一度もない。
長い耳が生えているというイメージが僕の頭に浮かび上がる。
だが、それより大切なのはいかに魔王らしく現れて助けて、どのように魔王の手下にするか。
こういうのは演出が大切なんだよね。
こう、クールで強くて、唯一無二みたいな存在。
難しいな……
まあ、こういうのは何度も想像したし、僕にかかれば魔王修行前って感じかな。
空は飛べないため、跳躍魔法でそれっぽい雰囲気を醸し出しつつ、僕は荒野を彷徨う2人のエルフの少女を見つける。
「あなたは……誰?」
震える声で姉と思われるエルフは僕に尋ねる。
「我が名は魔王ルーク。この世に災いと破壊をもたらすものだ」
決まった。完璧すぎる。少女たちはきっとこう思うだろう。
この方は私達を救いにきた魔王様だと。
そして僕は彼女たちに力を与え、晴れて魔王軍の最初のピースは埋まる。
「こっちに来ないで……」
傷の手当てをしてやろうと思い近づくと、警戒され風魔法で吹き飛ばされる。
あれぇ? なんか思ってたのと違う……
「落ち着け俺は別にお前らと戦いたいわけではない」
僕は放たれる突風を避けながら彼女たちに武器を持っていない事をアピールするが効果は薄く突風は竜巻に成長し僕に襲い掛かる。
だが、急に突風は止み姉のエルフは倒れた妹を必死に治癒魔法で治している。
「見せてみろ」
俺は姉のエルフの手を握り落ち着かせ、妹の容体を見る。
魔力暴走か……。
魔力暴走。主に魔法を日常的に使う種族にみられる病の一種。
治癒魔法ではダメだろう。
「おいエルフ。妹を救いたいか?」
俺は姉のエルフに決断させる。
「当たり前でしょ。私のたった一人の家族なの……」
姉は涙ながらに俺に救いを求める。
「なら、俺様の眷属となり生まれ変われ」
僕は彼女たちに血を与えたのだった。




