邪魔な≪堕ちた雌豚≫with陽キャ
初日のテストは理系科目だ。詩とシェーラ先輩に散々手伝ってもらったのだ。こんなところで点数を落とすわけには行かない。
「≪冥府の日輪≫様!貴方に会えなかったこの二日間はとてもつらかったです!」
(邪魔なのが来た)
宮下さんが僕の隣の席を奪って、話しかけてきた。当然教科書を読みながら無視する。僕が教科書を読んでいるのを見て、≪冥府の日輪≫から山井旭に対する話し方に戻った。
「いやぁ、今回のテスト範囲は難しいよねぇ~私も自信がないや~」
(『も』じゃねぇんですわ~。今回の僕には積み上げがある)
「ふっ」
「≪冥府の日輪≫様のドヤ顔素敵ぃ~。ってことは自信があるのかな?」
(僕としたことが宮下さんの言葉に反応してしまった)
僕のような陰キャを見下す≪堕ちた雌豚≫に反応する義理はない。それなのに、ドヤ顔してしまったことは大反省だ。
「おいお~い、あかね!そいつの自信なんて全く無意味だぞ?去年同じクラスだったけど、全科目でペケだったからな(笑)」
「え?やっば!『聖剣』を抜くだけでも終わってるのに成績も顔も終わってるんじゃ何で生きてるの?」
サッカー部の平野君、宮下さんの元親友の岡本さんが僕の方を見て侮蔑の言葉を僕に送ってきた。散々な言われようだけど、その通りなので仕方ない。
それにしても僕を蹴落とすことで宮下さんを取り戻そうとしているんだろうけど、それは逆効果だということに気付いた方が良い。
(僕よりも圧倒的に頭の良い人達なのに、何をやってるんだか…)
とりあえず僕は無視しよう。後は≪堕ちた雌豚≫がなんとかしてくれる。
「おい、てめぇ無視するんじゃ「うるさいなぁ」あかね?」
僕は無視する。ただでさえ赤点を取るかどうかの瀬戸際なのだ。一分一秒を無駄にしたくない。
「私の好きな人を馬鹿にするのはやめてくれない?」
「あかね!いい加減目を覚まして!そいつが私たちにしてきたことを忘れたわけじゃないでしょ!?」
「ブフっ」
アボリジニもビックリなブーメラン投法だと思う。おかしすぎて噴き出してしまった。
「俺はあかねを想って!」
「私を想うんだったらさっさと消えてよ。私は今、≪冥府の日輪≫様の横顔を楽しんでるの」
(ふざけんな。お前にご褒美なんてあげてたまるか)
僕は宮下さんと背を向けた。すると、キレたのは平野君だった。
「ほれ見ろ!こいつは真性のクズだぞ?あかねの純情を弄んでいるんだよ!いい加減目を覚ませ!」
「≪冥府の日輪≫しゃまが≪堕ちた雌豚≫に背中を見せてくれるなんて素敵ぃ。あっ、寝癖が付いてまよ」
(どうしようもねぇ)
僕が≪堕ちた雌豚≫に対して頭を抱えていると、今度は僕の正面に野球部の川村君とサッカー部の藤見君が僕の前の席に座った。凄い怒ってる。
「おい、山井…いい加減自首しろよ。お前がやってることは犯罪だぞ?」
(何でだよ…証拠あんの?)
突拍子もないことを言われて呆れてしまう。
「どうせ精神的にあかねを追い詰めてるんだろ?俺たちが証拠を掴む前に自首した自分のためになるんじゃないか?」
ブチっ
≪境界を超える者≫もそうだけど、僕の周りには思い込みが強すぎる人が多すぎる。僕は配信をしてるだけだ。
ただ、≪境界を超える者≫と違うのは悪意を持って僕に接してくることだ。嘘告白のことを忘れ、僕を悪役にしたて上げた陽キャは自分たちを正義だと思い込んでいる。それならそれでいい。
だけど、僕がキレるかどうかは別問題だ。
(そっちがその気なら久しぶりに解放してやろうじゃないの)
僕は席からスッと立ち上がった。
「あん…?」
川村君たちは一瞬呆気にとられた。
「テスト勉強してるんだから黙れよ、ゴミ共。『聖剣』抜くぞ?」
「「「!?」」」
僕は緩慢な動きでベルトに手をかける。
「ゴミだと?調子に「鞘より抜かれし『聖剣』は」てめ!」
僕は詠唱を始めた。
「やめろカス!」
「ぬ、抜いたら退学だぞ?」
(だっせ…僕はこんなやつらに屈してしまいそうになったのか。24時間常時僕を狙ってくる≪境界を超える者≫に比べたら恐怖の『き』の字もない)
僕はベルトを外し終わる。そして、チャックに手をかける。
「ど、どうせハッタリだろ?」
「こんな大勢の前で『聖剣』を抜いたら、た、退学だもんね」
その程度で僕がビビると思ってるなら、見当違いだ。
「闇夜に輝く一筋の希望となって我が覇道を指し示す」
なおも詠唱は続ける。
「お、おい!まさかあのイケボで本当に抜刀するんじゃ!?」
「止めてよ!」
陽キャだけじゃない。教室中の生徒たちが注目していた。そして、僕は
「暗雲を吹きとば「逃げろ!」」
僕が後一歩で抜こうとした瞬間に、≪堕ちた雌豚≫を残して、教室中から人が消えた。それを確認すると、僕はベルトをして再び勉強に戻った。
「流石光属性特攻の≪冥府の日輪≫様です!それで、もう一度『聖剣』でオシオキしてくれませんか…?」
「うるせぇ雌豚」
「~~~っ!」
キレ気味に宮下さんに当たる。元はといえば宮下さんが原因なのだから、僕がどうこうしてやる義理はない。
ただ、僕の暴言に悶えている変態のことはもう完全無視だ。
数学の最後の復習をしようと思ったけど、これではもう無理だ。僕は鞄から化学の教科書を出そうとするが、中で手が止まった。
見覚えのある機械が四つほど入っていたのだ。僕はそれをすべて破壊して、佳純先生が来るのを待った。
『重要なお願い』
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