29話泰山前夜
謝砂の予感は当たった。
「謝家も師弟と門弟を率いて泰山に登山しますよ」
「謝砂お兄様はまだ若宗主ですから参加していただきます」
「招功に参加してもらったら駄目? 代わりに謝家の屋敷を皆がいない留守を守るよ」
「招功師兄も参加しますよ。謝家としては宗主が出席しないといえば誰も行きません」
「今年は体調不良で不参加ってことにしようよ」
「ですが師弟たちは中元節で灯篭作りと呪符を頑張ったのに行かないとなればお分かりですよね?
剣で刺されても文句言えませんよ」
姜は冷ややかな目で剣を持ち鞘から刀を少し出し青白い刃に謝砂を映した。謝砂を震えさせるには十分すぎる。謝砂は爛の腕を持ち上げて長い袖の後ろに隠れる。
怯えた謝砂ににっこりと微笑んでから鞘に剣を納めた。
「なんでそうなるんだ。鬼とか妖獣とかは会いたくない。姜も参加するの?」
(姜がいたら万が一の時は守ってもらって、姜を理由にすぐに下山できるかも)
「柳花と嶺楊と瑛と街で遊ぶ約束をしています」
「そっちに混ざりたい。女装でもしようか?」
「「ぶっは」」
聞いていた桃常たちが我慢できずに噴出した。
「謝宗主すみません。強い妖鬼を退治した経験と証明ががないと参加資格はないんですよ。倒した鬼の邪気や妖気の量で競います。参加すれば分かりますよ」
「捕らえた妖鬼の数と妖丹などの戦利品の価値でも順位がつくから家の順位を競う」
「それだけじゃないんだろう。案内の書では廟に運ぶときに豪華な神輿も見えた。あと収穫されたものを荷車に乗せて運んでもいたけど関係するの?」
「各仙府の土地神の像や宝を運ぶ神輿は豪華であるかも威厳を示すことにはなる。廟に納めるからには中身も外見も占める割合は足される」
「参列するときの見た目の印象も関わるなら神様の祭りとして豪華な神輿を作ろう」
「えっ? 神輿ですか。中元節の後なので謝家はいつも簡素ですよ。納める収穫物は豪華な霊玉をだしていますけが……」
姜が言葉に詰まって謝砂を見た目は本気かと聞いているようだ。
「神輿は豪華じゃないと。土地神を乗せるんだから燕の灯篭のように大きく見上げるほどの高さがあって大勢の力で引っ張るんだ」
謝家の師弟と門弟は大きな提灯が作れるんだから神輿ぐらい作れるはずだ。
「姜ちゃん、筆と紙とって」
謝砂は紙を受け取ると筆で大神輿を描いた。
金箔で豪華に作られていたが図面を適当に書いて丸投げをした。
「灯篭のように作れると思いますので招功師兄に伝えます。お兄様も帰りますよ。爛様も手伝ってくださいね。余計なことを言った責任取ってください」
「分かった。桃展たちは柳花と一緒に帰りなさい。泰山で会おう」
「今すぐ御剣して帰らないと修宴に間に合いません」
姜は燕の形代に謝砂が描いた絵を移して飛ばした。
桃展、桃常、柚苑と雪児は柳花と共に桃家に戻った。
姜に言われた爛は謝砂と一緒に神輿を作りを手伝うことになり桃家に先に謝家入ることになった。
謝砂が爛と一緒に御剣して謝家に戻ると師弟たちは総出で修練ではなく神輿づくりに追われた。
「謝砂様その蜘精は仙霊ですか?」
「星星だ。糸を出して接着を手伝ってくれるはずだ」
謝砂は着いてから筆を取り出して星星を呼び出した。
招功に紹介するとすぐに手伝いに引っ張られていく。謝家は暇を持て余している手伝えそうな人材はすべて神輿づくりに回される。爛も当然のように頭数に入っていた。
「神輿はお任せください。ですが廟に献上し納める霊玉は未完成なのでお一人で頑張ってください」
「はい。分かってます。無理を言っていることは承知の上なのでなんでもします」
謝砂は師弟たちが作る間にその間は呪符作りと亀裂の入った霊玉という水晶のようなものを修復し金色の模様を入れた。霊玉は野球ボールぐらいありかなり手間取った。ぐっと掴んで直接霊力を送るが少しづつしか模様が入らなかったが金の花のような模様にになった。
「とんとん」
「はい。瑛、入っておいで」
立ち上がって扉を開けると瑛が立っていた。
瑛はメモのような紙を手に持っていて謝砂に渡す。
「姜からだな。おにぎりと具は海老の佃煮?」
「瑛はしゃしゃ様を呼びに来ました。姜お姉さんが神輿ができるからおにぎりを作ってくださいって」
「瑛も一緒に作ろうか」
謝砂は瑛に厨房に案内してもらうと瑛は自分で踏み台を運んで謝砂の隣に立った。
干し海老の佃煮を混ぜ握ったおにぎりの注文らしい。
ご飯は釜からおひつに移されて用意されていた。
(準備がいいな。必ず作れってことだな)
竈の火は瑛がつけた。
干しエビは醤油と砂糖にみりんを入れて汁気を飛ばして煮詰めて手間をかけた。
厨房からしばらく歩くと修練場は松明と提灯の灯りがついていた。ある程度片付けられて道具が片隅に寄せられてる。
「謝砂様! こっちです」
「まだ厨房にもあるんだ。運んでくれるかな」
謝砂がおにぎりをもって運んでいるのに招功が気づいてそばにいた門弟と駆けより門弟は謝砂と瑛から盆を受け取り運んでいく。
「神輿は間に合いました。星星殿の蜘蛛の巣で壊れないように覆ってあります。あとは参列するだけです」
「無理を言ったお詫びだ。おにぎりでも食べて」
「ちょうど皆お腹が空いていたんです。それで霊玉はどうなりましたか?」
「これでどう?」
謝砂は巾着に入れていた霊玉を招功に渡した。
「銀金花の花みたいだ」
耳元から爛の声がして振り向いた。
「うわっ! 爛いつの間に!」
背後にすっと現れた爛は謝砂の肩に顎を乗せた。
「姜は容赦がない。私は桃家なのに」
パンパンと手を叩く音が修錬場に響いた。姜が中央に立ち瑛がおにぎりを渡した。
「食べたらすぐに出発です。もう早いところはすでに泰山に着ているはず向かいますよ」
泰山への登山許可を知らせる花火が空に上がった。




