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29話

「お兄様。謝砂兄さま起きてください。もう昼前ですよ」

 重たい目を擦って目を開けると姜に肩を揺すられていた。

 布団を頭まで持ち上げて潜った。

「うーん。まだ寝足りないのは多分酒が抜けてないせいだ」

「お兄様うるさいです」

 布団の上から姜に押さえつけれ、窒息する前にぐっと身を起こした。

「殺すな! えっとここは?」

「お兄様の室じゃないですか」

(寝床に横になった記憶はないんだけどな。爛が寝てたはずだ)

 部屋には爛の姿が見当たらなかった。

 謝砂が目を開けると寝台で寝ていたようだ。すでに着替えも済んでいた。

(夢遊病にでもなったのか。まったく記憶がない)

「爛はどこ? 星星は?」

「爛様はすでに起きて客間にいます。星星も桃家の公子たちと一緒にいますよ。しびれをきれて起こしにきたんです」

「遅くなったけど姜、お帰り。無事でよかったよ。嶺楊殿は帰ったの?」

「はい。溺鬼はいなくなったので門弟をつれて報告に嶺家に帰りました。嶺楊殿もお兄様が作った麺を食べて美味しいと褒めていました」

 部屋から姜と一緒に出て後ろをついて歩く。

 姜は歩くたびにくせ毛でややうねった毛足が揺れている。

「みんなで食べてくれたんだ。多めに作ったからどうしようかと思ってたから残らなくてよかった」

「お兄様、また作ってください。具材がもやしの鍋は初めてでしたがおいしいです」

「どうだった?」

「以前と味は少し違いますがおいしいです」

 話している間に客間について姜は部屋の扉をあけながら謝砂に話した。

「前にお兄様が食事は生きてる魂の修復だと言っていたのが分かりました。とっても優しい味です」

「姜殿、その話詳しくお聞かせください」

「僕も聞きたいです」

 扉を開けた途端に桃展、桃常、雪児に囲まれた。

 謝砂は姜より先に部屋の入って桃展たちを押し戻す。部屋には爛と星星もいた。

「とりあえず落ち着いて座ってくれ」

「魂だけになった場合は霊力でしか修復できませんが、生きている間民は仙術で修復はできないが代わりに食事で修復していると教えられました。想いが込められた食事は美味しいだけじゃなくて魂を癒すことができるのだそうです」

 謝砂が押し座らせると姜が説明した。

「謝砂様そうなんですか?」

 離れて座ったままだった柚苑が謝砂にきいた。

「えっと。それは謝家の教えだ」

(ええい。当てずっぽうだけどそれっぽい回答だ。君たちと同じで初めて知ったんだ。知るわけないだろう)

「食べ物は魂を修復術と同じで謝砂様が作った鍋で古い擦り傷のような痛みを感じない祓われたようです。あったかくなって癒されます」

 桃常が言うと爛が飲んでいた茶を卓に置いた。

「それは自分を責めて傷つけることの方が多いから。他人を傷つけるよりも自分のほうが簡単で自分を許して癒すのは難しい。暖かい手料理は癒しだということだ」

「姜もそういいたかったのに爛様のほうが謝家に詳しいですね」

 爛が言ったことは分かる。自分を責めて傷つけるのは簡単だ。

「見回りから帰ってきたあといい匂いがして厨房へ行ったんです。爛様と謝砂様が出ていかれたばかりで釜に弱火で作ってあったのでみんなで食べました。もやし鍋がおいしかったです」

「それはよかったよ」

 柚苑が謝砂に話たあとそのまま星星に視線が移動した。

「そういえば星星殿は蜘精しゅせいであっても絡新婦じょろうくもではないのですね」

「あんな醜女しこめの仲間にしないでよね。美しいのは私よ」

 蜘精しゅせいは蜘蛛の精妖のことを言うらしい。

 普通に感じていたが美貌は神秘的で増していた。

 星星の妖艶さは豊麗な魅力になり仙女の画に描かれているような純美な風貌だ。

 髪はまとめられていて蜘蛛の飾りがついた簪を刺している。

 星星は垂れ流した前髪をすっと耳にかけた。

「三十数年かけて蜘精になったけど謝砂の霊力で妖気が修復されて妖丹が魂霊丹となって宝珠として得られたから修行を積めば道を得た仙人になれるの」

「謝砂も私と同じ能力が使えるわよ。蜘糸しゅし共情きょうじょうの能力で巣に捕らえた魂や体の過去が見えるわよ」

「どうやって見るんだ? 糸なのに見えるの?」

「体の記憶。魂がなくても強烈な記憶だけは心の臓に刻まれている。謝砂は私の蜘蛛の霊眼で見えるの」

(あれは夢じゃなくて自分の心臓に糸を繋いでみた記憶だったんだ。リアルなはずだよな。酔っぱらって爛が話したことを夢で見たのかと思ったじゃん)

 霊獣は仙噐から自分の意思で出てこれる。

 主にしまわれたときは勝手には出れない。好きにさせるほうがいい。

 星星は謝砂の手を掴んで謝砂を横に座らせた。

「星星はなんでまだ人の姿なんだ? 仙の霊獣として元の姿でいればいいのに」

「謝砂に命じられているからよ」

 爛は星星が人の姿をしていることが気に入らないようでふんっと鼻を鳴らした。

 爛は謝砂の隣に腰を下ろし直し星星を押しだした。

「まったく。別にいいわよ。爛に謝砂を譲ってあげる。謝砂も私の霊蜘蛛糸使えるようになったようだしね」

「霊蜘蛛糸って?」

「契約をしたから私の能力を使えるようになったのよ」

 星星はぱっと手から糸を出しあやとりのように遊ぶ。

「謝宗主は蜘蛛宗主の別名通りになりましたね」

「桃展、恐ろしい名前を付けないでくれ」

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