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28話3

 謝砂は柱から手を離し後ろに仰け反ると足を滑らせてドンと尻もちをついた。

 瞬間、謝砂の首を狙って無数の糸が撚り紐となり飛んできたが紐は柱に巻きついた。

 勢いよく巻きついた紐を蜘蛛の精妖の手に戻ると柱は紐が擦れたようにくっきりと跡が残る。

「チッィ。すばしっこい」

「ぎゃぁぁ」

 謝砂は叫びながら立ち上がって後ろに逃げ出した。

「今度は捕まえてあげる」

 手に戻した紐をくるくると腕に巻くと無数の細い糸にもどし、あやとりのように自在に操る。

 謝砂はキラキラとした糸に絡まる前にぐっと立ち止まった。

「よほど目がいいのね。普通は見えないから自ら巣に突っ込む。手間だわ」

 見上げると細い糸は謝砂を絡めようと巣のように模様になって降ってくる。

「つまらない話だな。聞いてるだけで眠くなったのに謝砂はよく辛抱強く聞いていられる」

 謝砂の頭上に爛の剣が先に飛んできて頭上の糸を斬りふわふわとした糸が散りのように消える。

「謝砂もういいぞ。橋から落とされた人は嶺家が無事に回収した」

 爛は謝砂の間に飛んできて着地した。

「囮にされる作戦は聞いてない」

「謝砂を囮にしたつもりはない。自分で囮になったんだろ。助けようとしたが嶺楊殿は謝砂の意図を読んで霊力を使わずに回収した状況判断だ。謝家の傘下として宗主の意図を読むのは当然だ」

「爛は意図なんて何もないのを知ってるだろ。すぐに助けてくれよ」

「見とれてるのが分かったからだ。楽しそうに見えた」

「誤解だ。どういう眼鏡をかけたら見えるんだ?」

「私は目がいいから必要ない」

「意味が違う!」

「やっと仙師のお出ましか」

 言い合いをしていると蜘蛛の糸が爛を包むように飛んできた。

 爛は蜘蛛の精妖の手のひらで一撃を放ち蜘蛛の巣を吹き飛ばす。

「爛! 遅い!」

「よく耐えられたな。何を考えていた?」

 爛が言う耐えた意味と謝砂の恐怖に耐えたという意味ではないようだ。

「気になってたんだ。蜘蛛の精妖って口から糸を出すのか? 顔がお尻なのか? 尻が顔なのか?」

 蜘蛛と言えば口は食べるだけで糸は出さないはずだ。

 顔に見えるのがお尻なのかが気になって痺れそうな怖さを自分で中和させていた。

(顔が綺麗じゃなくてお尻が綺麗なのか?)

 蜘蛛の女性の顔が真っ赤になっていく。シューシューと口から音が漏れる。

「言ってることは同じだ。私が仙師たちに気づいていないとでも思っていたのか。全員、糸で捕らえてやる」

 橋の上にもどった蜘蛛の精妖は糸を張り巡らせていたのか橋の上に浮かんでいた。

 大小の水滴がついていて大粒はバスケットボールぐらい大きい。

「水滴がついた蜘蛛の糸は美しいでしょう」

 謝砂をじっと見下ろした蜘蛛の精妖の視界から爛は自分の背中に謝砂を隠した。

「あれは唾液だ。溶けるから気をつけろ」

「その前に仙師たちを捕らえましょうか」

 謝砂は爛の背中から首を曲げてこっそり顔を出し覗いた。

 額に爪ぐらいの大きさで六個の目が開いて別々に動いた。

「隠れても無駄だ。蜘蛛の目を侮るな」

 蜘蛛の糸が瞬時に各方面へ飛んでいく。

「うわっ!」

「ぎゃっぁ!」

 謝家の門弟と嶺家の門弟を捕らえたらしく糸がシュルシュルと戻される。

 糸でつないだままどさっと地面に叩きつけた。

 低い呻き声が聞こえた。門弟たちが捕らえられたらしいがまだ無事のようだ。

 後ろから呪符が飛んできて糸に触れるとぼぉっと火がついて糸を燃やす。

 火は細い一本の糸がちぎれるに燃えて黒い煙を上げて燃え灰となった。

 立て続けに呪符が飛んできて糸は燃え短くなりながら宙にふわっと浮かんで消えていく。

「焔呪符か。柚苑と雪児たちは一体どこにいたんだ?」

 謝砂が後ろをきょろきょろと見渡すと雪児に続いて後ろから柚苑がふわりと着地した。

「近くの屋根の上です」

「剣を使えよ」

「飛んでいるものは呪符が先ですと教えられています」

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