28話吊り橋の蜘蛛
日は完全に沈み夜になっていた。
先に出たはずの嶺家の門弟たちの姿はなく報告を受けた家に向かったようだ。
橋の手前の物陰に隠れて待機する。
月は顔を出してないが空には星が出ている。
橋の出入口には松明の灯りがついてぼんやりと明るい。
日は完全に沈み夜になった。
月は顔を出してないが空には星が出ている。
橋の出入口には松明の灯りがついてぼんやりと明るい。
「橋の上に人が見える」
人の姿は分かるが橋の真ん中にいて顔が暗くて見えない。
服の身なりからして女性だ。
「止まってください」
人を追いかけてきた足音と声が聞こえた。
桃柚苑と雪児の声に嶺家の門弟が数名一緒にいた。
嶺楊は爛と謝砂の姿を見て追いかけた門弟を制しした。
足元をふらつかせながら男性が橋の上を歩いた。
「硬直してないから体はまだ死んでないが既に魂は吸われている」
「頼んでいた反物を持ってきたのね。これで新しい服が作れるわ」
女性の声はやけになまめかしく謝砂をぞわつかせた。
見ていると女性の方は腕を男性の首にまわす。
「シュー、シュー」
爛は謝砂の口を手で塞ぐ。
空気の漏れるような音がすると白い紐で首輪がされていた。
ぐっと紐を持って顔を近づけた。
「いい子ね。私のご飯にしてもいいんだけど川で死んでしまったら鬼になるかしら」
糸を出して薄い繭のように男性を包むとドボンと橋の上から川に投げいれた。
謝砂は怖くて直視できなくてうつむいた。
「あと糸が取れかかってるけど、もう一人いるわね」
ぐっと顎がぐっと謝砂は隠れていたところから道に飛び出させた。
「この子も蜘蛛の巣にかかったのね。おいで」
謝砂が気づかれていない爛を見たが薄情にも行けと手で合図をしている。
頭の先から痺れるぐらいの恐怖を感じた。
しかし顔が引き寄せられるように言うことを聞かない。
謝砂は吊り橋の手前で柱につかまり必死に抵抗すると止まれた。
近づいてきた女性は口をすぼめた。口から細い糸が見えた。
「ぎゃぁぁ! 蜘蛛」
見えなかった糸が吸われて回収されたのか謝砂は頬のぞわぞわから解放された。
謝砂が気を失わずに何とか立っていられるのは蜘蛛の女性が怪しくも綺麗な美女だからだ。
豊満な体をくねらせて唇に指を当て怪しい美女は目を細めて謝砂に微笑みかける。
「あたり。私は蜘蛛の精怪だもの」
「よ、よう、妖精?」
「私は精怪だといってるでしょ。妖丹を練って美しく生きしているの。蜘蛛の糸は綺麗でしょ」
「長生きしたんなら平和に生きてきたんだろ。街に出てこなくていいじゃんか」
「おかしい。私の妖気を流した糸が顔にかかったというのに魂が吸えてない」
「しばらくこのままでいてくれ。蜘蛛の姿にはならないでくれ頼む」
話がかみ合わずお互い自分の言い分だけを話している。
謝砂はお願いをして蜘蛛ではなく人の姿なら話はできる。
蜘蛛は女性の姿のまま舌を出してペロっと唇をなめた。
「この姿が気にったのね」
謝砂の頼みを聞いてくれるらしい。
「体の魂とは違うからあなた一回死んだの?」
「なぜわかるんだ?」
「糸で体の情報がわかるの。体に違う魂が入ってるのに同調している。あなたは鬼? 悪鬼ね」
「ちがう。恐ろしいものと一緒にしないでくれないか」
「じゃあお詫びに聞きたいことを言っていいわよ。教えてあげる」
「どうしてここにいるの?」
「仙師をおびき寄せるため」
謝砂は自分が仙師だとは思われていないのはなぜか少し悩んだ。
「山で鼠の妖獣に聞いたのよ。修仙の生気を糸で吸収させれば修行しなくても仙の力を得られる」
「吸うって人は食べないのか?」
「吊り橋に糸を出して巣を作っていたら先にいた長舌鬼が勝手に張り付いたの。食べるときに昔の出来事を知ったってわけ。糸は記憶を知ることができるし長舌鬼を始末して私が芝居を続けたの」
「退治されるとは思わないのか? それに溺鬼はどうしたの?」
「真似するなら徹底的に。蜘蛛のやり方は『待つ』なの。狂屍もいるし、違う場所から連れてきた溺鬼と一緒に飼ったけどだけど数匹逃げたのよね。話は終わりよ」
話している間に距離を詰められた。すでに謝砂の目の前に立っていた。
謝砂は一瞬にぞっとした殺気のような恐怖を感じた。




