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28話2

 早めに湯から出て用意された服に着替えた。

 黒い外衣は珍しく着ると自分がカッコよく見えた。

「謝砂様、嶺楊殿がお戻りになられました」

「約束は守ってくれたみたいだな」

 謝砂は門弟が呼びにきて待っているという室まで案内してもらうことにした。

「だからもち米は今度から持ち歩くべきだから『もち』というじゃないか」

「もちっと粘り気があって伸びるから溺鬼が捕らえられたのかな」

(なんかダジャレにされてる。笑われてるのか真面目なんか分からないだけどツッコみするべきだろうがどうやってツッコめばいいんだ!)

「もち米の粥や菓子は民の知恵なんだな」

(話まとまったのかな……。どうしてって聞かれても困るしスルーしたい)

「謝砂様が参られました」

 門弟が大きく言いながら室の扉を開けてしまった。

 客室に歩くと桃展や桃常も屋敷に着いていた。

 部屋には嶺楊が嶺家門弟が二人部屋の扉近くに立ち、爛が座って茶を入れていた。

 桃家の師弟たちは扉の近くに餅菓子をあけて話し合っていた。

 空いているのは爛の隣だけで謝砂は座った。

「ずいぶん早かったな。まだ顔にかかる髪が気になる?」

「うん。ぞわぞわは引いたけど気にはなる」

「よければ私が結います。触れていいのでしたら編みこむことはできます」

 嶺楊が申し出た。

「いいの? ありがとう。好きに頼むよ」

 謝砂は向きを変えて嶺楊に背を向けて座りなおすと背中に立った嶺楊の気配を感じた。

「爛様ご覧になりますか? 簡単ですよ」

 嶺楊は爛に気をつかいながら謝砂の髪を櫛で梳いた。

(女の子に髪の毛を触られるのって何気に初めてだ。誰かに髪を梳いてもらうのって子供に戻ったみたいだ。視線が突き刺さってる)

 爛が覗き込んでいるのが分かって少しお尻をずらし斜めを向いた。

 あっという間に長い髪は編みこまれて頭のてっぺんに持ち上げられると団子のようになり紐でグルグルと留められる。

「終わりました。お似合いです」

「ありがとう」

 嶺楊は爛の謝砂に報告をする。

「嶺家の門弟を呼んでいただいたおかげで完全に暗くなるまえに川に浮かんだ屍を回収して運びだせました」

 爛が謝砂が湯に入っている間に手伝いに屋敷にいた嶺家の門弟を向かわせたようだ。

「もう川に何も浮かんでない?」

 謝砂は怯えながら聞いた。何が浮かんでいるとは口に出したくない。

「回収済みです。屍に戻ったから動くわけじゃないしあとは弔えばいい」

「質問です!」

「何か気になることがあったのか?」

 桃展が代表して手を挙げた。

(来た。来てしまったけど答えられない)

「溺鬼はなぜ餅菓子を食べたて屍になったんでしょうか?」

「あれは溺鬼じゃないから妖気が抜けて逝ったんだ。難しければ餅を食べて満足して成仏したんだと思えばいい」

「爛様それは適当すぎませんか。謝砂様はどう思いますか?」

「溺鬼じゃないの?」

 謝砂が驚いて爛に聞いた。

「妖気を帯びた糸で繋がれて操られていた屍は餌か人形だったと推測ができる。糸の正体は謝砂で分かったし片付けようか」

「ちょうど夜になりました」

 部屋の窓を眺めるともう真っ暗だった。

「謝砂片付けにいこう」

「片付けは終わっただろう。どこに行くんだよ」

「吊り橋の片づけが残ってる」

「嫌だ。溺鬼は退治できたし、川に飛び込んだという屍も回収しただろ。近所で話を聞いて何か収穫があったのか?」

 立っていた嶺家の門弟が話す。

「話を聞いて回ると先日橋を通ってから病になったという男が一人いました」

「嶺家門弟で見張ってますが動きがあれば報告が来ます」

「ぎゃぁ! なに!」

 トントンと窓が叩かれた。謝砂は叫んで嶺楊の後ろに隠れた。

 窓の隙間からすっと形代が入ってきた。

「門弟から病になった男が外を歩いて吊り橋に向かっていると。反物を抱えているらしいです」

 嶺楊が読み上げると形代は消えた。

 嶺家の門弟を引き連れて部屋を飛び出して庭から御剣した。

「僕たちもいこう」

 桃家の師弟たちも部屋から飛び出して御剣して飛んでいく。

 爛と謝砂が部屋に残った。

「爛行かかないとだめか?」

「顔に糸が張り付いた感覚を払うためには行くしかない。安心したら感覚はなくなるだろ」

(あれだけ洗ってもなぜか取れた気がしない。爛のいう通り何もないと分かれば安心できるかも)

 謝砂は茶をぐっと飲み干した。




 爛は謝砂をつれて御剣した。

 謝砂は爛の後ろに立ち腰に腕を回して足元を見ないように背中に顔を付ける。

「吊り橋だ」

「もう着いた?」

「気づかれないように手前で降りる」

 ふっと体が浮き軽くジャンプしたと思ったが急に足元の剣が消えががくっと足に重力を感じた。

「わっぁぁ!」

 謝砂は爛にしがみついたがふわっと着地した。

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