27話9
「籠の中にいれてあとで食べよう」
謝砂は包んでもらった蒸して作られた餅菓子を一つずつ魚籠の中に入れた。
二手に分かれることにした。
地元を知る嶺家の門弟に道案内を頼み謝家の門弟桃柚苑、桃雪児たちは歩いて調べるらしい。
爛と謝砂についてきたのは桃常、桃展に嶺楊だ。
先頭の小舟には謝砂は爛と嶺楊が乗った。後ろの二隻目には桃常と桃展が乗る。
二隻は一列で並んで川をゆっくりと進む。
小舟は細長いが幅は狭い。
安定してる船の中央に真っすぐ座っても座れない。
横を向いて座っても腰に巻いた魚籠浮き輪は邪魔になった。
腰を下ろすが魚籠が挟まりお尻が浮くためしゃがむと謝砂が動くたび船が揺れて怖い。
魚籠の方が丈夫で船の両側に挟まっても押し返そうとして圧迫された。
爛に繋いでもらった霊弦は解けてはないため爛にも魚籠があたる。
謝砂は爛に当てないように身を捻るとぴったりと船に挟まってしまった。
(しまった。座ることを考えて前と後につけるべきだった)
魚籠は丈夫で挟まった場所がへこんでいるだけで壊れていない。
魚籠浮き輪を外そうにも結んだ紐に魚籠が邪魔をして手が届かない。
「爛、ごめんな。挟まっちゃったんだ。紐にも手が届かなくて解けないんだ」
爛は声に出して笑ってはいないが目で笑っていた。
「解かなくていいよ。謝砂座れないなら私の膝の上に座るか?」
爛はポンポンと膝の上を叩いた。
「挟まって抜けないんだって」
(爛を椅子にすると底上げされて高さが出るから浮き輪は外さなくてもすむかも。問題は船から浮きでるから船端に腰かけるのと同じで防ぐものが無くなることだな)
爛は腕を伸ばして挟まった謝砂の脇を抱えて自分の膝の上に座らせた。
「これなら外さなくても済むだろう」
視界が高くなり船から浮いたようで怖かった。
「紐をほどいて、腰じゃなくて首にかけて」
謝砂は爛の肩を掴んだ。
「せっかく似合っているのに外さなくてもいい。大漁みたいで気分がいい」
爛は謝砂から顔を背けたが笑っていた。
「掴むところがなくて怖いなら支えててやろうか」
「いいよ。腕が疲れるだろ。ちょっときつく巻きすぎたんだ。浮き輪にはゆとりが必要だから緩めに巻きなおしてくれる?」
「わかった」
きつく結んだ結び目を爛は器用に解いた。そして腰ではなく骨盤で止まるぐらいにゆるめて結んでもらう。
「ありがとう。肩から手を放すから支えていてくれよ」
謝砂は肩から手を放すと浮き輪の紐を持ち上げて片手ずつ外し首にかけ直した。
「これで余裕で座れるよ。邪魔したな」
謝砂は船が揺れないようにゆっくりと爛の膝から降り胡坐で座りなおした。
魚籠の中に重りの代わりに入れている包みは手をつけたくなかった。
爛の後ろに置かれていた大きめの竹籠を見てると視線の気づき爛が菓子の包みをとって広げた。
「移動すると粉をこぼすからこのまま食べて」
爛の膝の上は謝砂のテーブル代わりになり菓子を摘まんだ。
向かい側に乗っていた嶺楊と目が合い手に持っていた餅を差し出した。
「嶺楊殿も食べる? 美味しいよ」
「私は見てるだけで満足ですので謝砂様が食べてください」
「欲しそうな顔をしていたから勘違いしてごめん」
(女子だし勝手に摘まんだ菓子を渡したら嫌がるはずだよな。面と向かって言われなくてよかった)
謝砂は片手には自分で食べてる菓子があり、嶺楊に断られた摘まんだ菓子を爛の口に運んだ。
「並んでいる姿もいいけど、あのままでよかったのに残念です」
嶺楊になにが残念なのか詳しくは聞けなかった。
しばらくすると日が沈もうとして遠くの山が黒いシルエットとなる。
空は水色と雲は薄い紫ピンクとなり遠くから川を赤く染めた。
やけに艶やかな赤色で血の川のように見えて謝砂は怖く感じる。
川沿いの家はもう門を閉めて閂まで閉じた音が聞こえた。
「目の前にある橋が長舌鬼に会ったという吊り橋です」
嶺楊が言うと急に川幅が狭まっていた。
水が引きあがっているのか急に石だらけで小舟が行違えるほどの幅に狭まり吊り橋の下は水が湧いているように広がりそしてまた狭まってから川は広く水が流れている。
吊り橋の真下が幅広くそこだけが川にできた湖のようだ。
謝砂には水が引きあがっているのか川の淵はゴロゴロと石が転がっているのに三日月のような地形に感じた。




