27話8昔話
茶を運んできた給仕の女性は嶺楊に花びらが入った花茶を持ってきた。
謝砂は食べかけの蒸されたもち米で作られた甘い菓子を指さす。
「これって持ち帰り用はある?」
「船の上でも食べれるように包んだものがございます。街の東に行かれるのですか?」
「うん。何か知ってるの?」
嶺楊が小さな銀子を机の上に置いた。
「嫁ぐまでは町の東に住んでいたんです。この街はずっと地元で暮らしていた人よりも新しく来た人のほうが多いの昔を知らない人ばかりです。東の橋は首吊り橋と昔は呼んでいたのをご存じですか?」
謝砂は話の始まり方にドキッと心臓が縮こまり爛の袖の上からぎゅっと腕を両手で握りしめた。
「私がすっごく幼い頃にひいばあちゃんの子供の頃を聞かせてもらった話です。人吊り橋と呼ばれる理由は夜中に橋の上ですれ違った人の首に縄をかけて川に突き落とし溺死させ殺していたと。だから親は怖がって子は橋を1人では渡ってはいけないと言っていたと」
「だから人吊り橋と呼ばれていたのか」
「その話には続きがあります。橋に縄をくくりつけたままで溺鬼を飼っていたそうですよ。殺していたのは溺鬼に餌をやるためだったとか色んな話があります」
「殺していた人は捕らえたの?」
「すごく昔なので曖昧で分かりませんが街に来た仙師の方が話を聞いて夜中に橋の上で待ち伏せをして捕らえられていた溺鬼をまとめて祓い退治したらしいです。飼われていた溺鬼を祓ったあとは殺しも止まったとか」
話終えた給仕の女性は仕事に戻って謝砂が頼んだ持ち帰り用に数種類の菓子を包んでいく。
「嶺家の記録では見たことがない話です」
嶺楊は湯呑のなかにゆっくりと沈んだ花びらを見つめて真面目に言う。
「祓ったのが嶺家ではないだけですよ。昔ですから民だけで解決することもあります。謝家の呪符を毎回頂いているので気持ちですが用意したお土産をお受け取りください」
抱えて持ってきた木の薄い皮の包みを机に積み上げられ山ができた。
「うちのは経木で包んでいるのでくっつきにくく食べやすいですよ」
店の奥さんだったらしく太っ腹だった。




