27話8
「謝砂落ち着いたか?」
「うん。お腹も落ち着いた」
謝砂はほのかな茶の香りに甘い茶菓子の餅を食べて落ち着きを取り戻した。
茶屋には謝砂の隣に爛が座り、隣の机に桃展、桃常。反対側に柚苑と雪児も座って食べていた。
「謝砂様、水鬼の確認が終わりました」
茶屋の中に嶺楊が入ってきた。
「義荘でも確認しましたが変死は運ばれていません。どれも身内に弔われているものでした。
しかし話を聞くと病が原因で死んだはずの屍は放置すると狂屍に変わり、死んだ翌日には橋の上から飛び降りてしまうようです。また身代わりを求めて川にくる前に手をうちましょう」
「死んでるのに飛び降りるの? 不思議だ。嶺楊殿もとりあえず座って」
謝砂は嶺楊の話がちっとも理解できなかった。
嶺楊は謝砂の向かいに座り茶屋の給仕の女性に茶を頼んだ。
「嶺家で御剣して確認しましたが水鬼は残っていません。嶺家では解決できませんので爛様たちも一緒に東の橋下を調べてもらえませんか?」
「うん。用意してくれてた小舟で行くだろ謝砂?」
爛は肘で謝砂を突いた。
「御剣は嫌いだし歩きたくない。船でいいから丁露から買った竹籠をくれない?」
「籠ですか? 分かりました。乾いた籠を運んできて」
嶺楊が指示すると嶺家の門弟が茶屋の中へと籠をすべて運んだ。
「竹籠が浮きになるなら水のなかに引きずられても助かる可能性があるだろ。一緒に来る人は泳げても好きな物を一つずつ渡して。爛から選んでもいいよ」
「私は必要ない。謝砂にあげるよ」
爛の分まで謝砂は五個をつなげて紐で結んだ。
「絶対お手製の浮き輪だ。岩にぶつかっても衝撃に耐えられる」
謝砂は腰に一周巻いて浮き輪を自慢して見せつけた。
爛はニコニコと笑みを浮かべている。
「謝砂いい出来だ。よかったな」
「…………」
嶺楊に絶句された。
「いいか、桃家の子たち一緒にくるなら小さいのでいいから必ず身に着けるんだ」
爛が謝砂のそばに置いてあった小さな竹籠を師弟たちに一人ずつ配った。
「魚を捕るなら任せてください」
受け取った桃常は腕まくりをし腰に籠を付けた。
「「――うっ」」
桃展と雪児は食べかけていた餅を噛まずに呑み込んでしまい胸を叩いていた。
柚苑が慌てて茶を入れて飲ませる。




