27話5 水鬼
竹籠を売ってる店主は一人しかいないのに他の小舟よりも水に浸かってる。
店主は気が付いてないようで浸水ではないようだ。
じっと見ていると爛が声をかけた。
「あれは魚を捕らえる魚籠だが魚を釣るのか? 欲しいなら買う」
「違うって。そもそもいらない。そうじゃなくてあの船だけが沈んでないか?」
「そうだな。様子を見る」
爛も気づいていたのなら見間違いではないと謝砂はじっと観察することにした。
籠を買う客が離れるとグルグルと水面に影が集まった。
店主の男性を乗せたまま小舟は浅瀬から深い川の中心に向かって不自然に流されている。
周囲はざわついて舟から陸へと人は避難していた。
「何だ?」
店主は自分がなぜ流されているのか分かっていないようで周囲の声に戸惑っているようだ。
不自然に一隻だけゆらゆらと揺れ、そしてぐらっと大きく揺れた。
重ねて積まれていた竹籠が船が揺らされすべて川に落ちプカプカと籠が浮かんだ。
よく見ていると浮かんだり、なぜか沈んだりを繰り返している籠がある。
謝砂は謝家の門弟と桃家の師弟に言った。
「沈んだ籠を狙って突き刺せ」
謝砂は叫んで門弟と桃家の師弟が乗っている船に向かって叫んだ。
「あの距離だと剣が届きません」
「正体が分からないのに飛剣術を使えば男性を刺してしまうかも」
矢継ぎ早に誰かが言った。
御剣すると剣が使えないため手をこまねいている。
「呪符があります」
謝家の門弟は桃家の師弟たちに呪符を渡して沈んでいる竹籠を狙って飛ばした。
竹籠が弾き飛ばされると隠れていた頭が浮かんだ。
ぱっと数えるだけでも五つ頭がある。鼻から上を水面から出している。
青紫色していかにも体調が悪そうな顔色をしている。
濡れた長い髪の毛は顔にへばりつき隙間から白く濁った目を向けた。
どこを見ているのか分からないが謝砂は見たと途端にぞわっとした寒気が背中を這った。
「溺鬼も混ざってるがあれは水鬼だ」
冷静に爛が正体を告げた。
爛の携えていた剣が鞘から飛び出た。
「うわぁっぁぁ」
店主の男性は転覆しそうな船の上に座り込み淵にしがみついたままでパニックになっていた。
グルグルと水流が渦巻いていて店主の男性を今にも呑み込もうとしている。
「御剣する」
謝砂はすっかり腕に霊弦でつないでいることを忘れていた。
「あっ! 霊弦解いてからにしてくれ」
「今は無理だな」
謝砂は腕を爛に掴まれたままふわっと一緒に爛の剣に乗せられる。
浮かんだ剣は主を乗せて安定しているが謝砂は爛の背中にしがみついた。
「お、お、お願いだから高く飛ばないで」
「心配しなくても水面を飛ぶ」
低空で水面を乗ったことはないがサーフィンのように御剣した。
「違う意味で怖い」
爛に続いて皆御剣した。
「こっちに掴まれ」
爛が助けに行くのが見えても男性は怯えて船から手が離せない。
水鬼はその小舟だけを狙って集まっていた。
一鬼、一鬼と船を沈ませて男性に手が伸ばされて掴んでいた手を離した。
爛は船が沈む前に男性の着ている外衣の襟首を掴み船から引き上げるがグッと服の裾を水鬼が掴んだ。
水鬼は沈ませた船の上に乗り男性の服の裾を引っ張り沈ませようとする。
集まった水鬼は謝砂の外衣まで掴んだ。
「うわぁぁ! 飛んで、飛んでくれ。高くても大丈夫だから」
「分かった」
爛は水鬼ごと男性もぶら下げたまま体感ではマンションの3階以上の高さ程一瞬に飛び上がった。
くっついてきた水鬼は門弟が飛ばした呪符で感電したかのようにビクビクと体を硬直させドボンと音を立てて川の中に落ちる。
手足の一部が衝撃でばらけている予感がして確認はできなかった。
謝家の門弟は柚苑、雪児に手を借り捆仙網を投げ川の中の水鬼をまとめて捕らえ陸に持ってきた。




