27話3
用意された船は漁船ではなく屋根のついた船で普段は観光か屋台船に使われている船に見える。
船は広い甲板と小屋が付いたような造りで転覆はしなさそうに頑丈にみえて安心した。
「謝宗主早く来てください。船ですよ」
先に乗り込んだ桃常たちが楽しそうにグルグルと船の上を歩く。
謝砂が乗り乗り込もうとするたびぐらっと揺れる。
揺れるたび波止場と船の間に幅が生まれ足元に川がのぞく。
謝砂は波止場の船をつないでいる柱にしがみついて足を伸ばしたが船に乗り込めない。
「うっ。もうちょっとなのに。タイミングがつかめない。爛先に乗って」
後ろで待っていた爛が隙間から先に船に乗り込んだ。
「こっちだ」
謝砂の腕に繋がれていた紐を爛に引っ張られて勢いよく船に飛び乗った。
ずっと待っていたようで謝砂が乗るとすぐに船が波止場から離れた。
謝家の門弟が船尾に立ち長い板の櫂を手に船を漕ぐ。
十数人が乗っているが広々としていた。
「船酔いはないと思いますが吐くのは船の後ろでお願いしますね」
波止場からゆっくりと数回漕いだだけ川の流れに進んで中心へと運ばれる。
川の流れは早いが船の揺れは少なく甲板にでて渓谷の景色を桃家の師弟たちは楽しんでいた。
謝砂も甲板に出て一緒に遠目から川を眺めていたが水面に何かが飛び跳ねた。
(あれは魚だ!)
「ぎゃっぁあ!」
謝砂は悲鳴をあげて船室に逃げ込んだ。
船室には爛が一人座って書を読みながら茶を片手に飲んでいた。
爛は駆け込んできた謝砂に笑いながら書を伏せて椅子の上に置いた。
「謝砂は景色をみてたんじゃないのか?」
「自然の癒しという絶景だろうが川に魚がいたんだ」
「川だから魚ぐらいいるだろう」
「だとしても跳ねたんだ」
「もうすぐ着くが茶でも飲んで落ち着け」
謝砂は言われるがまま茶を入れてもらった湯呑を渡された。
謝砂が手に持つと湯呑にピシっと亀裂が入り卓に置くと二つに割れる。
「謝砂、けがはないか?」
「不吉だ」
謝砂は呟いた。




