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26話7中秋節の祭事

謝砂もいつでも出かけるように外衣を着替えて部屋の外にでた。

 既に日が沈み真っ暗になり月が顔を出していた。今日はとくに雲もなく澄んでいる。

 屋敷中の屋根の側には大小の提灯がつけられ優しい灯りがついていた。

 謝砂が見上げると存在感が半端ない約2メータぐらいした大きな燕の提灯が屋敷の敷地内の空をゆっくりと飛び回っていた。

「あれは術?」

 部屋から出てきた爛に聞いた。

「呪符の応用だ。提灯にも呪符を書き込んで飛ばしているんだ」

「月見というよりも提灯祭みたいだ」

 提灯は色々な花の絵が描かれている。

 提灯の間から謝砂の室の手前にふわっと人が飛んできた。

 月の仙女が降りてきたように感じた。

 真っ白な裾の長い外衣の上に透け感のある薄い金色の煌めく羽織を重ねている。

 髪は頭の高い位置で一つにまとめられ生花が華やかに飾られ化粧を施した顔は普段の幼さは消え大人びた女性の顔だ。

「お兄様! どうですか?」

 姜はくるっと周って謝砂に全身を見せた。

「綺麗だよ。とっても綺麗だ」

「お兄様にお世辞は言えないですから誉め言葉はうれしく受け取ります」

 謝砂の言葉に姜がはにかんだ。

「もういい感じに月が出てきちゃってますよ。早くはじめないと」

 姜を年上のお姉さんの師姉が二人で呼びにきた。姜の後ろに立って長い裾を持ち上げる。

「もう時間がないですね。言い忘れてたのが瑛に手伝ってもらうことにしたのです」

「姜様お早くしてください!」

「分かってます。姜は祠堂に行きますね」

 大慌てで飛び出して行く姿を謝砂は見送った。

 爛がすっと隣に来た。

「下は混雑して歩きにくい。謝砂見やすいところにいこう」

 謝砂は返事をするまえに爛に抱えられ屋根の上にふわっと飛んだ。

「うわぁぁぁ」

 謝砂は怖くて目をぎゅっと閉じて爛にしがみつく。

 爛はお構いなしにぴょんぴょんと屋根を飛んで移動した。

「ここがいい。着いたから目を開けていいよ」

 謝砂は足は浮いているようだが座っているからには宙ではないことを確認して目を開けると塀の上に座っていた。

「…………」

 謝砂は言葉が出てこないし真下を覗き込む勇気もないがさっきまで頭上を飛んでいた提灯のツバメが目の前を通り過ぎた。思った以上に大きい。

 意識を手放したら落っこちておわりだ。掴まれるところは塀の厚みだけで固まった。

「目の前に祭壇があって見やすいだろ。月も近くていい」

 爛は謝砂の隣に腰を降ろした。

「し、下に降りて見てもよくないか」

 震える声で爛に訴えるが招功が屋根を飛び続いて桃展、桃常、柚苑、雪児が謝砂がいる隣に飛んできた。

 それぞれ手に月餅や果物や焼いた鶏肉など色々抱えている。

「やっぱり謝砂様いたんですね」

 招功に言われて「うん」と小さく返事をした。

(なんで皆くるんだ? 降ろしてって言えないじゃないか!)



 結局塀に並んで座り見学することになった。

 ひっそりと奥に隠れるように建つ殿堂は先祖を祀る祠堂だと招功が桃家の師弟に話した。

 招功はそのまま説明を続ける。

「謝家の中秋節は先祖の位牌が眠る祠堂から月の神仏を祀るために祭壇に女子が提灯を持ち導くように月までの道を歩きます。祭壇の一番上の真ん中に月がきて神仏の像となります。祠堂と向かい合わせで外に祭壇が作られているのはそのためです」

 月が来るように祭壇が用意されている

 祠堂から月のような丸い透かしが入った手持ち提灯を持った女の子たちが両脇に立ち道を照らす。中央の修錬場に用意された祭壇に向かって姜が歩いていく。

 血筋である親族白い燕の刺繍がされた外衣を纏ったお嬢様たちが祭壇の近くにいた。

 祭壇に一番近い端に瑛も同じように手持ち提灯を手に持ち謝家の一員として白い燕の服を着ていた。

 姜は祭壇にたどり着くと赤い蝋燭の火に三本の線香に火をつけ煙が上る。

 三礼して中央には鼎というどっしりとした入れ物に線香を立てた。

 蓮の花に飾り切りをされたスイカが目立つが葡萄やカボチャなどの野菜と果物が供えられている。

 謝砂はよく見ると要望通り胡麻団子も供えられていて満足した。

 提灯の燕が姜の頭上に行くとパンと弾く音が聞こえ燕が一瞬で散る。

 一枚ずつ呪符が重ねて作られていたようで紙吹雪のようにヒラヒラと舞い綺麗だった。

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