26話5
数日間見事に引きこもりにさせられた。
謝砂の望み通りというよりも強制的だ。
扉を開けても師弟が待っていて受け取り新しい呪符の束を受け取り待たれる。
部屋から出ようと扉を開けたらすぐに師弟が泣きついてくる。
「謝宗主お願いです。これを終わらせてくれないと私たちが師兄に責められるんです。師兄たちも疲れ果ててて筆符室では鬼のような状態で。私たちでは霊力が足りません」
「宗主としての命令でも聞けないのか?」
「普段なら断然謝砂様のほうが怖いです」
(面と向かって怖いって言うのもどうかと思うが相当切羽詰まってるんだな)
「今だけは師兄と宗主の板挟みの方がもっと恐ろしいです。求めてくる小仙家の方や民たちが押し寄せてきても対応できたのは謝砂様が呪符に霊力を込めるのが早いおかげです」
「だからって残りって言ったのに多すぎる」
「謝砂様は霊力を消耗しても回復が早いではないですか。普通なら起き上がれません」
ご飯は三食しっかりと運ばれてくるし食べるのもゆっくり出来ずに味は憶えていない。
焼き魚にご飯と汁物と副菜という見慣れた和風の定食だったのだが落ち着いては食べれない。
一日分が終わり風呂に浸かるころには湯舟の中で寝落ちしてしまい危うく溺れかけるときにタイミングよく爛に声をかけられ何回か助けられた。
謝砂は今食べているのが朝餉か昼餉か区別ができなくなった。
腹が空いていてすぐに食べ終わり向かい合った爛に茶を入れてもらった。
「仏頂面になってきたな。目も鋭くなってる」
表情は分からないが目は点ばかりを打ち続けて寄り目になっているのは自覚がある。
「今なら誰よりも正確に点を素早く打てる自信がある」
爛は寝起きの謝砂の顔を見るなり口元をくっと掴んだ。
強制的に口を開けられて一口サイズの塊が入れられる。
とっさに吐き出そうとする前に正体を教えられる。
「月餅だ。私も手伝ったんだ」
「美味しい。もう一つないの?」
爛はくるんでいた包みを開けた。
500円玉ぐらいの大きさでやや平べったい丸い形をしているが中心には燕マークがある。
さくっとしたやや硬めの皮に小豆の甘い餡、胡桃が砕かれて食感がいい。
「姿が見えないときは厨房で手伝ってたのか?」
爛が厨房にいる姿がまったく想像つかない。
「うん。今日の夜が中秋節だ」
「じゃ終わったのか?」
「部屋の扉を見てみろ。もう師弟はいない。今頃は最後の呪符を配ってる最中だ」
がらっと勢いよく扉を開けたが引き留める者もいない。
「やった! 自由だ」
「瑛を連れて遊びに行こうか」
謝砂の言いたいことを爛が先に言った。
「その前に行事があるんだろ。でも今日は月見?」
「ああ。そうだよ」
爛は自分で作った月餅を食べていた。
「厨房は空いてるかな?」
「何か食べたいのか? 月餅も終わったし祭壇の料理は大体作り終わったと思う」
「月見と言えば団子だよ」
「月見に団子?」
爛は不思議そうに尋ねた。




