湖の浄化
塵有眉が指揮をとり後片付けを塵家の門弟たちに指示を出した。
「行動開始。明け方までには祠の浄化と周辺の妖気の確認をするわよ」
有眉が怖いのかテキパキと行動して無駄な動きがない。
応援も駆け付けてきたのか人では増えていた。
二十代後半から上の年長者の姿もある。
生霊になっていたいた門弟を運び連れていく。
処置をすれば元に戻るらしい。
桃家の師弟たちも入ってきて桃展たちも一人ずつ手当されて肩を担いで祠の洞窟から出ていく。
「桃家の公子方の手当をお願いします」
「桃常大丈夫か?」
「ドロドロだな。顔も汚れてる」
少年たちの声明るく声が聞えてきた。
一番心配だった桃常も支えられているが自分で言い返している。
会話ができるなら大丈夫だ。
謝砂は動かずに立ったままで見送った。
塵昌と有眉は謝砂の元に来る。
「謝宗主に言われた通り外の鬼も消えました。調べると骸はすでに無縁塚に埋められています」
「うん」
「塵家として礼を述べさせてください」
謝砂に塵有眉と塵昌は並んで頭を下げ胸の前で手を重ねて礼を取った。
「謝砂殿と桃爛殿のお助けに感謝の礼を。ありがとございます」
爛を起こさないように気を付けて肩を揺らさず小声で「うん」と話す。
片手で顔をあげてくれるように手で合図した。
お礼を言われるのは悪い気分ではない。
恐怖が消えるるわけではないけれど。にこっと笑った。
「礼は爛にだけでいいよ」
「謝宗主、入口に馬車を用意してます」
塵家の門弟が言いに来てくれた。
爛は僅かに身じろぎぐりぐりと頭をこすりつけた。
ぐっと謝砂の袖を掴んだ。
手の血は止まっていない。力を込めたのか血がべったりとつく。
忘れていたが爛の手当をしないといけない。
見た目よりもひどいのにずっと黙っていたんだろう。
謝砂は爛の頭をそっと触れて撫でた。
「黙って行くな」
寝言だろうか爛はぼそっと呟いた。
「どこにも行かない」
自分の居場所を作ってくれている。
(消えられて困るのはこっちのほうだ。ちゃんと横になったほうがいい)
爛が袖を握った腕を掴み手から自分の霊力を送る。
肩の重みが離れて、袖が軽くなった。
爛と向きあう。
手を離されて霊力を送るのを止めた。
「ごめん。寝てたみたい」
爛はまだ熱っぽいようで目がとろんとしている。
ぼーっとしたままだ。
本来なら一刻もはやく洞窟から出て遠くまで離れたい。
謝砂にはまだすることが残っていた。
茶葉を取り出して湖に葉を撒いた。
砕けた石像は湖の底に沈んだが妖気が僅かに残っている。
水は透明なままだが錆の匂いがする。
(茶葉で香りがマシになるかもしれないし。ここから湧き水が湧いているわけじゃない)
謝砂は湖の水にビリっとした霊力を込めてしまった。
(しまった! なにかやっちゃった)
謝砂が気づいたときにはもう遅い。
湖の水は渦巻き水柱が天井の穴まで貫いた。
妖気の汚れを洗浄しているように透明な洗濯機を見ているようだ。
湖の底に沈んでいた剣が飛んできて有眉の元に戻る。
「剣がありました。ありがとうございます」
ぐるぐると渦巻いて妖気が洗われたのか水柱は細かな霧になる。
静かに洞窟の壁につき雫となり流れ落ち湖の中に再び水が溜まった。
呆気に取られ黙ったまま見ていた有眉が何か言いそうに口を開けた。
謝砂は慌ててその前に話す。
「何も分からないから聞かないでくれ」
湖に漂っていた妖気が茶葉によって浄化されたようで清々しい。
「謝宗主はなんともありませんか? 霊力の消耗されていると思いますが」
「にゃんともない」
謝砂は焦りすぎて噛んだ。
恥ずかしくて爛を引っ張って洞窟を出て馬車に乗った。
「塵家に行きますか?」
爛が答えた。
「町の宿に行ってくれ」




