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焔呪符

 妖龍は赤い目のなかに真っ黒な瞳孔を細めた。

 短い手足の爪を立たせて憤慨しているのか宙に浮かんだまま勢いをつけ突っ込んでくる。

 謝砂は慌てて爛の後ろから雪児と柚苑がいる湖の右淵へと避難した。

「なんでくるんですか?」

 雪児が謝砂が来て不思議そうに首を傾げた。

「だって桃展と桃常は塵家の生霊がいるだろ」

「だからってこっちに来なくても」

 謝砂は雪児が言い終わる前に雪児と柚苑の肩を掴んで前に立たせた。

「爛の戦いを学べるいい機会だ。しっかり学びなさい」

(二人ともすまないが壁になってくれ)

 身長がまだ謝砂の肩ぐらいに二人の頭がある。

 二人の両肩に後ろから腕をまわした。



 爛は瞬時に鞘から剣を飛ばして指先で操る。

 剣先を妖龍の頭に向けてぐるぐると回転すると扇風機のように風が起きる。

 霊気を帯びて綿あめのように回転したまま細長く伸びる。

 キラキラと白銀に静電気のような光を帯びる。

 流れて竜巻のように妖龍を近づかせないようにしている。

 妖龍は進めないと分かると爛の剣と逆回転して竜巻を作る。

 爛は両手から霊気を込めるが押されて足が砂利に滑り後ろに下がった。

 黒い妖気を帯びた気流と爛の白銀の気流と相殺するように弾かれる。

 爛の剣も弾き飛んぶと同時に妖龍も後ろに吹き飛ぶ。

 長い尾が爛を狙って振り下ろされる。

(危ない!)

 謝砂は考えるより先に柚苑と雪児の手から呪符をとった。

 焔呪符えんじゅふは謝砂の霊力が注がれて尾に張り付いて呪符に火がつき燃え上がると「バン」と爆竹のように爆破した。

 呪符の衝撃をうけた尾は横に逸れて爛をかすめて左側にバンと落ちた。

 謝砂は呪符を立て続けにすべて妖龍に飛ばした。

 謝砂はまっすぐに爛の元に駆け寄った。

 妖龍は体をよじらせるが呪符は張り付いたまま振り落ちず次々に燃える。

 一瞬で呪符は火がつき燃え爆破させると呪符が張り付いた場所はえぐれた。

 洞窟の中は爆破した熱風が包み、昼間のように明るくなった。

 石像の妖龍の身をボロッとえぐれて遠ざける。

 そして一瞬の明るさを出したあと再び月明りと燭台の灯りになる。


 柚苑と雪児が飛ばしたときよりも呪符は威力を増した呪符は妖龍をえぐった。

 見ていた雪児と柚苑は謝砂が使ったものが同じ呪符だと思えなかった。

 突っ立ったままでポカンとしていた。その胸の奥に感じる高揚感は感動に近い。

「すごい」

 雪児が呟き隣にいた柚苑に話しかけた。

 視線は自然と妖龍から謝砂を追いかけている。隣の柚苑も同じように見ていた。

「僕たちが手に持っていたものだとは思えないよな?」

「焔呪符なのに威力が違う」

 


 妖龍は飛ばされて壁にぶつかり全体が揺れた。

 爛はとっさに避けて下がったが振り下ろされた衝撃で吹き飛ばされた。

「爛!」

 謝砂は叫んだが返事はない。

 吹き飛ばされても砂利の上を滑り壁にぶつかる前に鞘を地面に指した。

 持ちこたえたが片膝をガクッと地面につけた。

「カハッ」

 爛の口から込み上げるように咳込むと血も一緒に出てきた。

「血、血が出てる」

 謝砂は動揺したまま爛に駆けより同じように膝をつく。

 爛の背中を擦った。

「大丈夫ですか? 止血します」

 有眉が爛の前に座り経穴をついた。

 咳込んでいたが呼吸が整った。

「邪魔にならないように移動させたんです」

 塵有眉が門弟たちの体を湖の淵から後ろに下がらせて隅に寝かせていた。

 祠があった近くには湖の石像に辿り着く前に短めの通路があり、両側に視界に入らないような壁があった。

(ここの中ってひょうたんのような形をだな。入口が飲み口のある上でコロンとした下が湖か)

 地形を理解しても謝砂にはどうしようもない。

 

 

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