黒霧
石像が動く細かな振動で湖の水面が波打つ。
湖から黒霧が湯気のように出てきた。
謝砂は恐怖で動けずただ霧の動きを目で追う。
動く石像だけで怖さは十分だ。
霧の特殊な演出はなくていい。
黒霧がだんだんと濃くなり石像を覆った。
「黒霧をあまり吸い込むな」
爛が注意すると謝砂は鼻と口を両手で塞ぐ。
「呼吸を深くしなければ大丈夫」
謝砂の行動に爛は両手を掴んで顔から手を降ろさせた。
「桃常、柚苑、桃展、雪児は祠より後ろに下がりなさい」
爛は掴んでいた謝砂を抱えて一緒に飛ぶように湖から祠のあるところまで下がった。
後に続くように塵有眉も後ろに下がる。
爛と謝砂が祠の前に立つと桃展たちが待っていた。
爛から降り謝砂は自分で立った。
「妖気を帯びた黒煙は祠から出てきたんですが何も気配はなかったんです」
展が謝砂と爛に祠を指さして言った。
「祠に悪さでもしたのか? 罰当たりなことしてないだろうな?」
謝砂は妖龍じゃない可能性を探したくて展にきいた。
「いいえ。触れてもいませんし、ただ調べただけですよ」
疑われた展は否定する。
謝砂は祠の中を覗き込むが中が見えない。
「祠に閉じ込められていたのかな?」
謝砂が聞いた。
「それはありません」
桃展が言い切る。
「呪符も結界も張られてはいませんでした」
「石像ではなくもともと妖龍が石像のフリをしていたのかな?」
謝砂は隣にいる爛を見た。
爛は考えるように石像がある奥を見た。
謝砂も目を凝らしてじっと見つめると黒霧の中に二つの怪しげな赤い点が光った。
(うわっ怪しすぎる。赤はとにかく危険だ)
隠れたいとと内部を見渡すが見つからない。
唯一隠れれるのは祭壇に使わられてる木机の僅かな隙間だけだ。
謝砂は奥から突進してくる気配を感じた。
「横に避けろ!」
爛は剣を飛ばして顔の前で構えた。
謝砂は爛の横に言われた通り避けた。
桃展たち4人も横に避けた。
コケそうにへっぴり腰でよけた謝砂とは違って華麗に飛び退いた。
黒霧を突き破るように妖龍が吠えるように唸り龍が祠をめがけて頭から突っ込んできた。
爛が剣で龍の動きを止めるが勢いに金属の火花が見えた。
みんなが避けたことが突っ込んでくる龍を爛は体を反らして攻撃を受け流す。
「ぎゃぁぁぁ! 龍じゃん」
しかし妖龍が突進してきた衝撃で祠も机も粉々に破壊された。
龍の全長は長い。短く見積もって3メートルぐらいだろうか。
(石像としては大きすぎないか?)
短い前足と後ろ脚は可愛く思えるが胴体をくねらせる様に鳥肌が立つ。
鱗は岩だがら硬そうでやすりのように見えた。少し擦っただけも身を削られてしまいそうだ。
柚苑と雪児は呪符を妖龍にめがけて飛ばす。
そして手で印をつくると呪符は爆発する。
妖龍はよろけもしないし無傷のようで壁に足を付けた。
「焔呪符では無理です。石が硬すぎます」
目ざわりだったのか妖龍は尾を振り回す。
「妖龍を怒らせるなよ」
謝砂は柚苑と雪児に怒った。




