妖龍
謝砂は爛を行かせて見送ったあとしゃがんだ足が痺れた。
どてっと砂利の上にお尻をつけた。
意外と座り心地がよくて足を伸ばした。
「ふぅー」
何もなければここはすごくいい絶景スポットだろう。
見上げれば天井は月夜と星空が見える。
すごく大きな水溜まりのような湖は綺麗に星空を洞窟のなかにキラキラと反射させる。
謝砂の隣に助けたその人も腰を下ろす。
謝砂は助けることに夢中で気がつかなかったが、清楚な雰囲気の顔をした小柄で華奢な女性だった。
濡れた黒髪は艶やかだ。
女性は濡れた髪の水気をしぼっているがその手は震えている。
謝砂は上着を一枚脱ぎ手渡した。
「嫌じゃなかったらまだ濡れてないので使ってください」
驚いたように謝砂を見る目が大きくなりやや間が空いてから受け取ってもらった。
「ありがとうございます」
女性は謝砂から受け取った羽織を肩にかけた。
「塵昌殿の姉上ですか?」
謝砂がたずねるとこくっと頷いた。
「塵有眉です。謝宗主?」
なぜか有眉に疑問形で名を呼ばれた。
やっぱり塵家とは何か因縁でもあるのだろうか。
「有眉殿はお一人ですか?」
謝砂が聞くと有眉はグッと噛みし首を横に振る。
「私は魂魄ごと水底に引っ張られていたんですが突然吐き出されたです」
「他の人はどこに?」
「私が最後だったんです。急いで扉に呪符を飛ばしました」
「外には出れなかったの?」
謝砂は指で上を指した。
「御剣して外に出ようとしましたが結界なのか塞がれて外に出れません」
(外が見えているのに出れないのか。飛べない一般人からしたら出口には思えないけど)
「妖気です!」
展の叫ぶ声が響いた。
謝砂は逃げたくて立ち上がりたいのに慌てて砂利に足を取られて立ち上がれない。
「妖気が石像に向かってます!」
謝砂は展の妖気の実況が伝えられると謝砂の頭上にも黒い煙が通った。
「謝砂立って!」
謝砂が気をとられているうちに爛が戻ってきていた。
爛はすばやく謝砂を掴んで立たせる。
黒い煙は意思があるようにうねりながら石像の中に入った。
「祠に妖魂が入っていたのか」
爛は独り言のようにつぶやいた。
「実体がないから石像の中に入り龍の姿を使っているんだ」
爛は謝砂に説明する。
「それで妖龍? 邪龍? 龍神なの?」
謝砂にとって龍かそれ以外なのかが大事なことだ。
「妖気がとりついているから石像は妖龍だ」
爛が謝砂に告げた。
ビシビシと石に亀裂が入る。




