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塵有眉

 水は透明なのに少し鉄の匂いがした。

 爛が石像を観察している間に水流はないはずなのに水の流れを感じた。

 謝砂は水の中に気配を感じた。

「うぎゃぁぁ!」

 大きな石の影だと思っていたがだんだんと水面に浮かんでくる。

 どこかに行ってほしくてバシャバシャとその場で大きく足踏みをして水飛沫を飛ばす。

「謝宗主どうしました?」

 桃常が聞くが柚苑も叫んだ。

「こっちにも何かいます」

 桃常は柚苑のそばに行き腕を掴んで素早く引っ張り水から上がる。

「爛! 爛」

 謝砂は怖くて爛を名を叫んだ。

「謝砂落ち着いて」

 謝砂は爛がすぐに駆けつけて来たことで水を蹴りつけるのを止めた。

 謝砂は爛の背中に乗っかり首にしがみついた。

「足になにか触れたんだ。水の中になんかいる」

 爛は謝砂を背中に背負ったまま湖を凝視した。

 水面に塵昌が着ていたのと同じ羽織がぷかっと浮かぶ。

 服が動き、顔を出した。溺れかけているが生きてるようだ。

 爛は謝砂がしがみつかれて背負ったままだ。

 首を絞められるようにずるずると後ろに引っ張られると一度軽く謝砂を浮かせた。

 体が浮き持ち上がると謝砂は爛によじ登るように肩に手をかけコアラみたいに爛の背中にへばりついて離れない。

 爛は謝砂を持ち上げるとおんぶしたまま湖に進む。

 濡らさないように謝砂のお尻を持ち上げた。

 湖は極端に深くて爛の膝上から太ももの付け根まで一歩の距離で深くなっている。

 謝砂は爛の背中から腕を伸ばしてその人の手を掴んで引き上げた。

「大丈夫?」

「ゲホッ。ゲホッ」

 ずぶ濡れで顔色は青白いが生きている。むせてるだけだ。

 咳とともに口から水を吐き出した。

 爛は二人まとめて湖から連れ出した。

 爛に桃常が叫ぶ。

「爛様、奥でも浮かんできました」

 先に水から出ていた桃常と柚苑が呼びに来た。

 謝砂は爛の背中から降りる。

「爛見てきて。ここにいるから」

 謝砂がその場にしゃがむと爛はしぶしぶ離れて桃常たちが言う方を見に行った。



 爛は桃常たちに連れられて見るとさっきみたいに塵家の服を着た人が三人浮かびあがった。

 身動きをしないが顔を上げないがポコポコと周りに気泡が見えた。

「まだ息がある」

 爛が言うと桃常がすぐに湖の中に入っていく。

 柚苑は続いて入り桃常から一人ずつ受け取り爛に渡して祠側に引き上げ寝かせる。

「塵家の門弟だ」

 爛は寝かせた門弟たちの首を振れ脈を確かめる。

 湖から上がってきた桃常と柚苑は意識のない門弟たちを一人ずつ支えて身を起こす。

 爛が霊力を込めて一人ずつ背中を叩く。

 口から水が吐き出されて呼吸が戻った。

「意識が戻るまで壁際に座らせなさい。謝砂の様子を見てくる」

 爛は指示して謝砂のほうに戻った。

 桃常が脇に手を入れて上半身を持ち、柚苑が足をもって壁際へと運ぶ。

 門弟たちを洞窟の壁に背中をあずけさせ座らせた。

 柚苑は門弟の意識を戻そうと力が抜けだらりとした手を持ち上げた。

 爪を抑えても反応が戻らない。

「呼吸はしている。意識が戻らないじゃなくて魂が喰われた?」

 柚苑は桃常と顔を見合わせて謝砂のほうに向かった。

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