2章1
「謝宗主、爛様。何か買われたんですか?」
桃常が尋ねた。
「謝砂のだ。宿では話を聞けたか?」
「噂話ですが旅人から聞けました。えっと、一緒に食べますか? 部屋で食べますか?」
「一緒に食べる。爛も食べるだろ?」
謝砂が答えると驚いたが桃常は分かりましたと案内した。
師弟たちは夕餉を先に食べていた。
メニューは肉中心で茶色ばかりだ。
「それは鶏肉の照り焼きか?」
「もも肉がホロっとして美味しいですよ。豚肉の角煮も煮込まれています」
「君たち野菜は食べないのか?」
謝砂は偏ってた注文の仕方を見かねたが口々に返される。
「いつも食べてるので要りません」
「お連れ様ですね。何にいたしますか?」
若い女性の店員が聞きに来た。
「爛は何を食べたい?」
「謝砂の食べたいのを頼んでいい」
「えっと鶏肉の照り焼きをこっちにも頼む。あと海老料理ってある?」
「海老の蒸し餃子はいかがですか?」
「それもお願い」
「すぐにお持ちいたします」
爛は茶を謝砂の分も注いでさっと置いた。
言った通りすぐに料理が運ばてきた。
「お客様方はとっても綺麗な殿方ばかりですね。大盛りにしてもらいましたよ」
「この子たち皆が美形だろ」
「はい。いつもは綺麗なお嬢様方がお泊りになられるので空いているときでよかったです。大忙しになるところでした」
「今日は僕たちしかいないのか?」
「塵家の仙師たちが封鎖したので祠に誰も入れないと帰ってしまったんです」
「帰ってしまったのか。ご令嬢たちはこんな美形たちを見れずにざんねんだな」
おいしそうな料理を目の前にして箸を手に持つ。
「いただき――うぐっ」
謝砂は爛に口の中に鶏肉を突っ込まれた。
「言わないように気を付けて」
爛が声を潜めていう。
うんと頷く。
突っ込まれた肉を手を持ち一口食べて爛に差し出した。
「鶏肉美味しいよ。食べるか?」
「要らない。謝砂が食べて」
「もう一つは口をつけてないから食べるか?」
「口に合うなら謝砂が全部食べていい。私は他のを食べるから気にするな」
爛はいうと店員を呼び汁物を二つ頼んだ。
「謝砂も野菜を食べて」
師弟たちに言ってしまった手前要らないとは言えない。
爛が頼んだ具だくさん入った野菜の汁物を食べきった。
「美味しかった」
「食べ終えたら山に行く」
「下見に行くのか?」
「お客さん方! 今から祠に行かれるのならやめたほうがいいですよ」
「どうして?」
「夜に祠にいっては行けませんよ。石像に命を奪われます」
「お姉さん、詳しく聞かせてくれますか?」
桃常が店の人に尋ねた。
恥ずかしそうに顔にかかる髪の毛を耳にかけるしぐさをした。
(あの顔でお姉さんなんて言われてたらなんでも答えてくれるよ。自分の顔の威力を知らずに何人も女の子を泣かすな)
「地元では有名な噂話なんですけど。
祠の手前に小さな村があり十数人が暮らしてました。村と言っても物置小屋が一つあり身を寄せ合っていたようです」
師弟たちは店員のお姉さんの話に夢中で食べることを忘れている。
謝砂はわざと口の中に肉をむしゃむしゃと詰め込んで食べた。
爛は黙ったまま謝砂に茶を入れて渡した。
「町からだと祠に山の中を真っすぐ進めばたどり着きます。村があった場所は祠の手前の谷を通り昔の回り道なので通りません。近づくものもいませんよ」
「湧き水だけが名水として有名でした。
祠は洞窟のような場所で村人や旅人たちが立ち寄るだけのひっそりとした祠だったんです。
湧き水を汲み町に届ける仕事は渓谷の中を荷車を押して運ぶのも年寄りや女、子供の村だったので一苦労だったようです。
村人たちはその祠の管理と案内料を客に払ってもらい稼げるように祠で願うと祠が有名になり遠方からも尋ねてくる人たちが大勢くるようになりました。
村人たちは案内料と祠の管理の仕事で生活が一気に潤いました。
ですが夜に数人で祠の掃除するために入りました。
突然入口で見張っていた村人は祠の中から叫び声が聞こえ松明をもって駆けつけました。
すると石像が動き目を合わせると一人、また一人と祠の湖に引きずられていたそうです。
村にもどって助けを呼びにいったのですが助けに行った人も帰ってこなかったと。
そして村に残っていた人も魂を取られたように倒れて何も食べずにそのまま死んでいきました。
魂と引き換えに望みを叶えたんじゃないかと噂になりました」
「夜行ったらどうなるんだ?」
謝砂は聞きたくなかったが尋ねた。
「夜は道中死んだ村人が現れて、祠の中に逃げ込めば石像が動いて命を落とします」
謝砂はごくっと唾を呑み込んだ。
「恐ろしい。爛行くのはやめよう」
爛の袖を引っ張る。
「話を聞かせてくださりありがとうございます」
桃展が代金を机において支払い立ち上がった。
「噂は確かめないと。ほら謝砂も立って」
明るい笑顔で返されて謝砂は聞くんじゃなかったと後悔した。




