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書庫

――数日後

 塵家の若様は宴の後、御剣してすぐに屋敷に帰ったときいた。

 爛の機嫌が悪くなることはなかった。

 爛は忙しそうにしていたから暇な時間に姜の室にお邪魔していた。

 瑛の様子を毎日心配で見ていたが

 瑛に倉で憶えていることを聞いてみたが記憶が曖昧で憶えてないらしい。

 ご飯も食べて夜も眠れてるならそれでいい。

 子供と遊んだことはないが、瑛は謝砂も懐いてくれた。

 瑛はとってもよく謝砂と遊んでくれる。



「修練はしないのですか?」

 姜の一言が謝砂に訊いた。

「修練って何のこと?」

「とぼけないでください」

 姜に怒られるが心当たりがない。

「柳鳳から聞きましたよ。素晴らしい技を披露したと」

「それは一緒に掃除したんだよ」

「お兄様が箒を手に持ったことは一度もありません」

「箒ぐらいは誰でも持つよ」

「謝家秘蔵の教えだと弟子たちの間で噂になっているようです」

「ごめんなさい」

「箒で修練している姿を謝家で見たことが一度もないのはなぜでしょうか。他家に教えるまえに謝家の弟子たちに教えるべきです」

「瑛、怒らないように姜お姉さんに伝えてくれない?」

「こっちにおいで」

 どちらの言うことを聞けばいいのか幼いのにすでに分かってる。だまって謝砂から離れて姜の隣に座った。

「霊力が有り余るほど回復しているのですか? 宴の席でも邪気を取り除いたらしいですね」

「瑛、またくるよ」

「お兄様、姜はまだ言うことがあるんです」

(柳鳳の奴なんで姜ちゃんに話したんだ。怒られたじゃんか)

 謝砂は姜の追及に耐えきれずに逃げ出した。


 


 宴の翌日、一日中謝砂は作戦を考えていたがいい案が思いつかない。

 仮病を装っても無意味に思えた。

 祠に行っても中には絶対入らず外に立っていればいいと結論をだした。

 逃げるためにも誰にも関わらず、ひっそりできる場所はないのか探していた。

 謝砂は部屋に戻ってきた爛に尋ねた。

「書庫っていうか書斎ってある?」

「蔵書室がある。好きに出入りしてくれればいい」

「入っていいの?」

「いいよ。どんな書を読みたい?」

 謝砂は許可をもらっても読めるのかは疑問だった。

 ここに来てから字を見ていない。

 漢字はそのまま読めたし、どんな文字なのか考えてなかった。

 この世界の言語を話せて聞き取って理解できてるから読めるはずだ。

 この体は頭もそのままで魂だけが呼ばれた『自分』だから生活には支障がないという大まかな推測をした。

 案内された書庫は壁収納のように丁寧に並べられている。木簡や巻物に本もあった。

 窓際と部屋の中心に本が読めるように机があり、座布団も用意されている。

「いっぱいだな。勝手に読んでもいいのか? 読んだら呪いがかかるとか危険な本とかはない?」

「ここにはないし、読むだけでは呪いはかからない。禁書物は目に触れない別にしまわれている」

「安心してもいい?」

「謝家には術や呪符の専門書が多い。桃家の書物は一通り集められているが剣術の会得について書かれている」

「剣術は扱えないけど読みたいかも」

「ここで読んでもいいし、私の部屋に運ぼうか?」

「しばらく眺めてる」

「爛様、宗主がお呼びです」

「急ぎか? あとで行く」

 爛はちらっと謝砂を見た。

「行ってきなよ。ここにいるから大丈夫」

 パラパラとその辺に並んでいる書に目を通す。

 読めるか気にしていたが爛が言ったように剣術の説明が多い。

 修練して霊力を高めることで術や呪符も扱えるようになるらしい。

 手に持って駆け巡らせて鍛えた気功のような剣を操る方法で剣術が絵で描かれているため動きは理解できた。

 謝砂が知りたかったのは術とか剣のことではない。

 術や剣が必要なことは極力避けたい。

 使う必要はなくていいと心から願ってる。

 自分の記憶力は目を通しただけで記憶できるほどの持ち主ではない。

 だけどすでに知ってる気がした。

 書を裏返して手首を動かしてみた。

 そして書を表に返して確かめてみると動きが再現出来ている。

 本来なら憶えられないのに体が憶えている。

 見る必要がないと書を棚に戻した。 

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