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23話

 謝砂は爛の部屋で窓の近くに腰かけて体を冷ましていた。

 ちびちびと茶を呑む。

 元コーヒー派だったがお茶も悪くないと思えてきた。

 爛はゆっくりと風呂に浸かっているようでまだ戻ってきていない。

 謝砂は湯を浴びてさっさと爛の室に戻った。

 久しぶりの一人きりになった。

 頭ではどうしてなんだと大混乱しているのに、ぼーっとしてしまう。

 なぜ祠にも巻き込まれたのだろうか。

 宴に出席しなければよかったと後悔が押し寄せる。

 恐ろしい祠に連れていかれるなんて怖くて泣きたいのに泣ける状況じゃない。

 どう防げばいいのか作戦を立てようとぐるぐると考え続けた。

 今夜は布団を頭からくるまったとしてもとても眠れないだろう。

「ちゃんと拭かないと風邪をひくぞ」

 爛はいつの間にか部屋の中にいたらしい。

 爛からまだ熱気が伝わってくる。

 くっつけば湿気は暖かいほうにうつって自分の服は乾くだろう。

 謝砂の後ろに立っている爛に支えてもらうように背中を預けた。

 爛の湯上りの熱を利用させてもらって乾かせれるだろうか。

 持たれると謝砂の服は湿気って背中に張り付いたが不快ではない。

 乾燥機にする考えは爛に読まれていた。

 乾いたガーゼタオルのようなふんわりした布で謝砂が拭くのをあきらめた髪のしっかり水気をとるように拭ってくれた。

 自分で受け取って拭けばいいのだが、めんどくさくて小さい子のようにじっと待っていた。

「乾いた」

 爛は謝砂の背中を押し戻して座りなおさせた。

「ありがとう」

 謝砂は乾かしてもらってサラサラになった髪を一つに束ねて紐で結んだ。

「これからは急がずにゆっくりすればいい。急がなくても誰も来ない」 

「風呂は短い。長く入るとのぼせてしまう」

 爛に説明した。普段はシャワーだといっても伝わらない。

 ガス代節約で風呂は五分以内だったなんて言えない。

 爛はお風呂も好きで綺麗好きなんだろう。

 見た目がかっこいいじゃなくて美人だから綺麗好きなのも分かる気がした。

 短くても全身を洗える技術があるから綺麗だといっても信じてもらえなさそうだ。

「拭けてないのは長い髪に慣れてないから腕が疲れたんだ」

「髪が短かったのか?」

「短髪というぐらい短くはなかったんだけど、顔が隠せれるぐらい」

 長い髪が普通の爛にはピンと来ないようで首をかしげた。

「なあ、なんで魂霊丹のことは言ってないんだ?」

「騒がれるのは嫌だろう。それより謝砂、腕輪に何をした?」

「何もしてない。残ってた力が無くなっただけだと思う」

「謝砂も腕輪の思念を見たのか?」

「桃当主よりももう少し鮮明って感じで美玉さんたちが祠に言って拝んでた」

「拝んでた?」

「断片的にだったから説明ができない」

「分かった。謝砂お腹は空かないか?」

 食事はほとんど食べれなかったのを気にしてるんだろうが、謝砂の食欲は失せてる。

「それよりも祠には朝から向かうの?」

 爛に聞きたいことがいっぱいあったが重要なのは祠だ。

「準備があるから早くて二日、余裕をみて五日ぐらいあと」

「なんで引き受けたんだ?」

「だめだったのか?」

「嫌だよ。怖いじゃないか。なにがいるか分かったものじゃない」

「多分行ってから調べることになるな」

「恐怖は一生分を味わった。お代わりはいらない」

「私は塵家が謝砂に根に持ってるのが気に入らない」

「気に入らないからって張り合わなくてもいいじゃないか。なんか恨まれてるのか?」

「ああ。塵家は謝家の足元にも及ばない小仙家だったが桃家の傘下に入って力を得たんだ。

今の桃宗主が仙家のまとめ役に選ばれた。

 仙家が集まる席で桃家の一員ではない小仙府の宗主に対して威張っていたのを見た謝砂に恥をかかされたと根に持ってる。

 何を言ったのかは知らないが多分一言くだらないとか、うるさいとかを言ったんだと思う。

私が気に入らないのは謝砂が当主になれたのは謝理理のおかげだと勘違いして言いふらしたことだ」

(何を言ったんだろう。敵が多いって姜ちゃんが言ったな。姜の立場なら宴は行きたくない。絡まれるのに決まってるから)

「謝家の功績は素晴らしく、古くから力をもつ大仙家だというのに」

「そんな大きな家の主なんだ。荷が重い」

 爛は珍しく怒ってるようで戸棚を開けて酒を持ってきた。

 封してある栓を荒っぽく開けてそのまま口に流し込む。

「謝砂が宗主になったのは理理りりの婚姻のおかげじゃない。

謝砂が当主になることを選んだから婚姻できた。

順番が逆なんだ。知らないからって言いたい放題だ」

 ゴクゴクと飲み、酒が零れた口元は手で拭った。

「謝砂も飲め」

 謝砂の目の前にぐっと突き出された酒を受け取った。

 すでに半分以上は飲まれて軽かった。

「いただきます」

 謝砂は溢さないように口をつけて飲んだ。

 飲みなれない酒に酔いが早くまわり、翌日昼までぐっすり寝ていた。

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