宴の終了
爛から受けとり小さな盆にのせられた腕輪は注目の的でじっくり眺められていた。
「たしかに邪気を感じない」
「呪符であらかじめ封じ込めていたが桃宗主が弾き飛ばされた邪気だ。そんなすぐに弱まったとは思えない」
なにやら年長者の者たちが集まり頭を寄せて色々と思案し、相談しているのだろが結論はまとまったのだろうか。
難しい話を聞いていてお腹が空いた。
用意された料理も舞いに見とれて食べ損ねていた。
堂々と今箸をとりご飯を食べていたら目立ってしまう。
顔を動かさずに手だけを動かしでそっと葡萄を房から一粒ちぎり片方の袖で口元隠した。
じーっと謝砂に視線が突き刺さり食べにくくて口を閉じた。
「見られても困るんだけど」
困って爛を頼るように視線を送る。
謝砂が困ってる状況を楽しんでいるようで僅かに口元が上がった。
「桃宗主が弾かれたときに邪気も一緒に吹き飛ばされたということでしょう」
「そうだと思う」
爛の説明に謝砂は大きく賛成した。
芝居かがった説明にあきれたようにため息の声が聞えた。
「爛殿、適当なことを言わないでくれないか」
「では他にどんな説明が?」
「説明できないないので謝宗主が浄化されたと結論に至りました」
「邪気が消えたことはいいことでは?」
「そうです」
「本人が知らないと言っているのに分かる訳がない。信じないのか?」
早口で質問攻めにされた相手は口ごもってしまった。
「そうだろ。口数は少なくても真実を話す。それでもまだ尋ねるのか?」
爛はその場にいた者たちを黙らせた。
「もうやめなさい」
回復したのか静かに桃宗主が話した。
「爛の言う通りだ。謝宗主殿、家の者が失礼な態度をしてすまない」
「いえ」
謝砂は短く答えた。せっかく追及から逃れられたのに長く話して自爆したくない。
「仙噐や法器は道具の一つ。突然力を失うことはよくある。力を使い果たせばただの道具にもなる。邪気が払われたのだからそなたたちで調べればいい」
「分かりました」
桃当主は話題を戻した。
「直系の門弟たちを眉麗山に向かわせる。驍家荘と眉麗山も塵家の仙府だったな」
塵家と呼ばれて立ち上がったのは向かい側に座る男だった。
「はい。塵家が納めています」
「食魂を疑うような報告はなかったのか?」
「塵当主から聞いていないのです。
今は素貞殿から話を聞き、驍家の者と共に当主が供養をいたしております」
塵家の若君の報告に爛が一言挟んで報告した。
「他用で道中通りがかった謝宗主が尽力していただいたおかげです」
「謝宗主遅くなったが感謝する」
爛が話したせいで話が塵家からそれた。
謝砂は感謝されるとよけいに肩身が狭い。
怖いと逃げ回っていた負い目を今更感じて言われればなんでも引き受けてしまいそうだ。
「腕輪の場所が分かった今、祠を調べることが最優先だ」
「塵家も協力させていただきたいと願います」
「腕輪が放っていた邪気は強すぎました。
門弟たちは経験が浅く危険でこの件に関して荷が重たすぎます」
塵家は数に入らないと年長者らしき人から声が上がった。
門弟と同じだという意味に塵家の若君は手に力を入れているようだ。
「差し手がましいようですが、爛公子だけでなく謝宗主もご一緒されては?」
「いやいや。足を引っ張るだけなんで」
勝手に恐怖体験プレゼントされてもいらない。のしをつけて返品したい。
「謝砂宗主にとって仙府外で面倒なことに巻き込んでしまってすまない」
謝砂を無視して勝手に決めれられていく。
「謝家に帰り道の寄り道だと思ってくれ」
「えっ?」
「謝砂宗主にとっても桃家は家族の付き合い。ご理解いただけますとも」
「門弟たちは爛が率いる。この件は爛にすべてを任せる」
「分かりました」
爛は手を重ねて礼をし宗主の命を正式に引き受けた。
謝砂は何も言わしてもらえずそのまま宴は終了とされた。




