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 話に夢中になっていたから来た道を憶えなかった。

「案内図とかはないのか」

 適当に歩いてるとすれ違う人はいた。

 帰り道を尋ねようとするが声をかけることがどうしても怖くてできない。

 謝砂に気づく人もいたが、挨拶をされ道を譲られる。迷子だとも言いづらい。

 とりあえず人の気配が多いところに向かって歩いた。

 桃の木が庭園のような植えられている。

 水の流れる音を辿ると庭に池があった。

(豪邸だな。ドラマのセットみたいだ)

 川から水を引いているのか湧いているのか池の水には流れがある。 水面が揺れて覗くのをやめた。魚がいる池に落ちたら大変だ。気が狂う。

 小学生の野外学習でマス手づかみ体験として強制参加させられた人工的な池に放たれたニジマス。

 魚が足元を通り抜けじっとしていると人に押されて全身水に濡れたが怖かったのは水ではなく逃げる魚だ。池に浸かった短パンの中になぜか一匹逃げて入ってきた。あの感覚は恐怖だった。泣きながら友達に魚を掴んで取ってもらって池から脱出した。

 怪我もないのに泣き叫び、半ズボンも脱いでその場にゴミとして捨てた。代わりに持ってきていたズボンに着替えたが魚掴みで泣いた子ははじめてだと管理人のおじいちゃんに塩を振って焼かれたニジマスの串焼きを一本もらっておいしく食べた記憶がある。

 ホームセンターで死んで浮かんでいた金魚を共食いしているのを目撃してしまってからは水族館で泳ぐ魚も見れなくなった。料理の魚は食材としてみてるから平気なのにと自分でも不可解だが魚の動きも苦手で寒気が襲う。

 極力池を見ないようにぎゅっとこぶしを握りしめて橋を通り中庭のような場所に出た。


 修練場なのか同じような服をきた弟子たちが剣を持って鍛えている。

 そっと柱に隠れて様子を見ていた。

「柳鳳 師兄しけいもう無理です」

 一人の若い弟子が剣を置いた。

 続くように何人も剣を置きその場に座った。

「罰をうけて書の書き写しに籠ってたからって終わった途端に僕たちに当たらないでくださいよ」

「師兄なにがあったんですか? いつものような邪鬼や妖獣をはらったのでしょう」

「爛様が持ち帰った腕輪は怨念と邪気で分からなかったけど法器だったんですよね。柳花 師姉ししは腕輪を他の先輩方と家宴のあと調べると」

「そうだ。呪符を解きなんの法器か確かめどこにあったのか思念が残っていないか探るらしい」

 聞き耳を立てていたが一歩踏み出してしまった。

「誰だ? 出てこい」

(ほんと耳がいいな。柳鳳だからついでに案内してもらうか)

「お邪魔してます」

 そーっと顔を出して姿を見せた。

「謝宗主がしゃべった!」

 弟子たちがザワザワとざわめき一斉に謝砂に顔を向けた。

「兄さんでしたか」

「「「えっ?」」」

 何人か同時に聞き返した。

「そんなところじゃなてここに出てきてください」

「稽古の邪魔してすまない」

 逃げるのも変だと柳鳳に言われるがまま弟子たちの前に出た。

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