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自分への弔い

 紙銭を初めて見たが紙に銭のようにまるくて銭の絵が描かれものだった。

 石畳の上で用意した鉄の器の中に薪をくべ火のなかに入れて燃やした。

 紙が燃えると煙と一緒に灰が舞い上がる。

 柳花は知っているから謝砂の意味が伝わったようで一緒に紙銭を燃やしてくれる。

 火のなかに紙銭を入れながら考えていた。

 異世界に招魂された自分の体を弔っているのか。

 謝砂の魂への弔いなのだろうか。

 多分両方なのだと納得した。

 屋敷でのことを思い出した。

 招魂前の記憶も受け継いでいたら怖い思いをしなくても救う方法があったのだろう。

 持病のような怖がりの性格はどこに行っても治らないと学んだ。

 生まれ変わったとしても怖いものに対しての恐怖を克服することはできない。

 立ち向かう勇気はなく怖さから逃げるためにはどうしたらいいのか。

「どうか安らかに」

 爛も隣にいて燃えて上る煙を見上げていた。

 爛は何を考えているのだろう。

 謝砂は持っていた紙銭をすべて火のなかに入れて手を合わせた。

(招魂されて僕の体と君の魂は消えて死んだ。受け入れてるから僕はこの体で君の志を引き継ぐなんてことは約束できない。お願いだから呪わないでくれよ)

 自分の葬式の代わりに弔ったが、やり残したことは思いつかない。

 未練が残る人も思い出せない。

 気に入っていたドラマやアニメ、漫画や小説も見すぎて十分に感じた。

 最終回まで見ていないのもあったけど途中でも気にはならない。

 さほど興味もなかったように思える。

 自分を悲しんでくれる人はいるのだろうかとか、葬儀はどうなってるんだろうとかは色々考えても意味はない。

 自分自身ですら悲しくないのだから自分を悲しんでくれる人はいないのだろう。

 振り返ってみてせめて恋人が欲しかったという望みはこの世界でも叶えられる。

 集めてた石とか邪気払いグッズとかこの世界のほうでは法器などの詐欺でない本物を集められる。

 いつか死ぬことは生きている人の定めだと過ごしていた。

 紗々にとって外の世界は怖くて家の中にいても未来も考えられなかった。

 思っていることを話せる人もいないけど話すつもりもなかった。

 将来という希望はなかった。だけど死ぬのが怖くてただ生きていた。

 生きていた間に何度自分を殺しただろう。

 血を見るのも痛いのも苦手、高いところも怖い、人も人以外のものもすべて怖いものだらけだ。

 頑張らなかったわけじゃない。

 たどり着いた結論は自分が安心できる居場所を探していたんだと思う。

 目を開けるとそこに自分の居場所があるように思えた。

 この体に招魂されたこと感謝した。

 爛が自分の手を掴んだ時に助けられたんだと思う。

 謝砂が目を開けて爛の顔を見ると目はどこを見ているわけじゃない。

 燃え上がる紙銭を眺めながらもその瞳は別を見ているようだ。

 目の端から一筋のあとが薄っすら残っていたが火の熱で涙の痕もすぐに消えた。

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