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29話一回目の花火

 蛇から目を反らさず剣を向けたままじわじわと詰め寄られ輪になった。背中が集まった中心に謝砂は逃げるように隠れる。

 くるくると回りながら蛇の動きを観察した。

 青邪蛇は細長くてアマゾンとかに生息している大きめの蛇ぐらいだ。

 記念に肩に蛇を乗せて写真が撮れるような蛇に姿はよく似ているが敵意むき出しの邪蛇との違い。

「爛……あっ」

 謝砂は下がってきた桃常に気づかず袖が絡まったままぐると回ると桃常の肩を引っ張った。

「わっ! 謝砂兄さんなにしてるんですか!」

 持ち上げられると謝砂の長い袖と洗濯機の中で絡まったような状態になっていた。

「ごめん。解くからちょっと待ってて。――危ない!」

 目が逸れた桃常の喉に向かって飛んでくる。くるっと絡まった逆方向にねじって解き桃常を中に押し込んだ。

「謝砂兄さん」

 謝砂が標的に代わり蛇が口を大きく開け舌を出し襲いかかってくる。

 爛の剣が抜かれて謝砂の隙間から出てくるのが見えた。

 筆を蛇に向けてぎゅっと目を閉じたが星星の巣糸が謝砂の前に現れ飛んできた舌を張り付けた。

 爛の剣は蛇の口に突っ込み長い胴体を二つに裂いた後、剣は回って血を振り払った。

 亡骸はバシャと血の上に落ちた。

 糸は蛇の舌を絡めたまま蛇を妖気ごと包むとジュワと溶けて妖丹だけが残る。

 おかげで謝砂は見なくて済んだ。

 謝砂はいつの間にか隣にいた爛の背中にしがみついた。

「剣で斬るには口から裂かないといけないが謝砂が糸を出せるなら片付けられる」

「桃常はどうした?」

「こ、ここです」

 桃常は謝砂に押されたまま爛と立ち位置を入れ替わり持っていた剣先を青邪蛇の頭に突き刺していた。前のめりで腕を桃展に掴まれていた。

「一体ずつ斬らないといけないが皮にも毒を帯びています。舌を斬っても動くし妖毒をかけられる」

 招功が向き合った蛇の舌を切り落として返り血を吹き飛ばしながら話す。

「剣で頭を突き刺せばいい。桃常よくやった。舌を封じるしかない」

「口が閉じた瞬間だ。引き寄せてから剣で頭を地面に突きさして飛ぶんだ。後は謝砂がどうにかする」

(どうにか? どうしろって? 巣飛ばしができたけどまぐれなんだ)

「「「はい」」」

「爛? 飛べって飛べないんだけど」

「目が光った。今だ!」

 爛が合図をすると一斉に剣を頭から地面に突き刺し高く飛び上がった。

 青邪蛇は刺されても剣を抜こうと血が地面に滲みながらも動きまわる。

「な、な、なんで飛ばないの?」

「逃がすには標的が残らないと」

 爛の腕を掴んだままその場に二人取り残された。

「まったく何を考えてるんだ」

 赤黒い目が光る瞬間、モスキートンのような聞き取りずらい音を出しているのか頭に突き刺さった剣がわずかに揺れた。

「爛の剣は?」

「頭に刺したままだ。いざとなったら抱えて飛べる」

 一斉にうねるのを止めて体をぐるぐると渦巻になり剣を浮かせようとし始めた。

「もう見たくない。限界だ」

 ぞわっとした寒気と震えが足から頭のてっぺんまで駆けあがると勝手に涙が流れた。

「まったくもうっぅ。抜けないぐらい深く突き刺しておいてくれよ」

 謝砂はパン、パンと仙筆をグッと握って振り回した。

 筆先から糸が飛び巣は縄を飛ばしたように一体ずつ被さった。

 星星の蜘糸は細くても切れない。動き回る蛇の身を糸で切り溶かすようだ。

「いいぞ。謝砂もう少しだ」

 もう一度糸を飛ばし今度は一体ずつ巣に包む。

 青邪蛇は霊力を帯びた蜘糸の巣の中でジュワっと糸ごと溶け剣だけが残った。

「みんな降りてきて大丈夫だ。言っただろう謝砂が何とかするって」

 次々に着地し自分の剣を拾う。剣の刃についていた糸も一振りでふわっと消えた。

「爛いい加減な丸投げはやめてくれ。もうなんともできそうにない」

 爛の胸倉をつかんでぐっと顔を近づかせた。

「私が悪かった。剣で斬ってもよかったんだが蜘蛛糸出せたし、これで妖丹は回収できた」

「関係ない」

 バンと空にピンク色の花火が上がった。

「やっと一発目か……」

 謝砂はふうっと大きくため息をついた。

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