兎耳ピコル。
「うおおおおお!!!」
シュバババババ!!!シュシュシュシュ!!!
ミーコに向かい、アティアの気合いの掛け声と共に、拳の連打が降りかかる、常人では、反応すらできないほどのスピードだ。
「フ〜ンフンフ〜ン。」
ひょい〜ひょい〜。
だが、そんな必死なアティアを目の前に、軽快なリズムに乗りながら、鼻歌混じりに巫女服にかすらせることもなく、全てかわしてゆく。
「くっそ!!当たんねえ!!これなら……どうだ!!」
そう言い放つと、足に光が纏わりつく、足のみを瞬間強化し、少し離れていた距離を、飛びかかる様に、一気に詰め、殴りかかる!!
「単調にぇ!!」
ひょい、と華麗に避けようとするが、次の瞬間!!
パンチを打つとほぼ同時に、空中で体を捻り、光を帯びた右足が、ミーコの顔面めがけて放たれる!!
バチイィィン!!!
「バ、バカな!?完全に奇襲のはずだぞ!!?」
強化された、アティアの足を、掌で強く叩き、そのまま華麗に空中にジャンプ、避けてしまった。
「今のは悪くないにぇ、私に手を使わせるなんて、これだけで来た甲斐があったにぇ、すごい運動神経にぇ!!」
アティアは、少し悔しそうな顔をする。
「はは……さすが……ロイヤルガードって感じだな、全く勝てる気がしねえ。」
アティアの頬に汗が伝う。
「こんなもんにぇ??」
「まさか!!次は必殺技をお見舞いしてやるぜ!!
ロイヤルガードなら、死なねえだろ!?」
そう言い、後ろにバック中しながら少し距離をとる。
「む!!必殺技にぇ!?全力でくるにぇ!!」
ミーコはクスクスと微笑み、身構える。
「全力ね!!オッケー………。はあああああぁぁぁ!!!」
右手の指先をミーコに突き出す、アティアの右手の中指と人差し指が激しく光り始める、身体中の魔力が、指に集中してゆく。
「にぇ…………。」
ミーコは視線を逸らさず、真っ直ぐアティアを見つめる。
「くらえっっ!!必殺!!アティアビーム!!」
指からビームが出ると思いきや、指の光が消え、その光がアティアのアホ毛に伝っていき、アホ毛がシャキーンとミーコの方を向き、アホ毛の先端から、指1本分程度の太さのビームが放出された!!!
ビビーーーーーーッ
「細っ!!いや、指じゃないんかーい!!!…………いや、これは危ないにぇ!!!」
ミーコはまさかの攻撃に思いっきりツッコむ、が、冷静にビームの威力を見極め、とっさに真横にダイビングジャンプ!!!ギリギリかわした!!!
ビームはそのままミーコの後ろにあった大きな岩を貫通していった。ミーコは直ぐに起き上がり、岩に駆け寄り、貫通した穴をじっと見つめる。
「げ、周りにヒビ1つ入ってないにぇ、洗練されてんにぇ、当たってたら、死んでたにぇ。」
「フゥ―――ッ、絶対に避けると思ったからな、俺の魔力の全てを使った!!!もう戦えねー。」
バタン、と後ろに倒れ込む。
「驚いたにぇ……まだ若いのに、ここまでの破壊力のある技を持っているとはにぇ、立てるにぇ??」
アティアに近づき、手を差し伸べる。
「ゼェ……ゼェ……あれを避けるなんて、ハッキリ言って完敗だよ、同い年くらいなのに、ちょっと悔しいぜ。」
ミーコの手を取り起き上がる。
「にぇ?全然同い年じゃないにぇ、私はチミの2倍くらいは生きてるにぇ、私の子供時代より、全然センスあるにぇ、馬車を降りてきて、よかったにぇ!!」
アティアは顔を赤らめる。
「ロイヤルガードにそこまで言われると、流石に照れるぜ……って、今何つった??俺の倍生きてる?……じゃあミーコって……ババ……」
ベシッ!!
「続きは言わせないにぇ。」
無慈悲な空手チョップが顔面直撃。
「ギャッ!!……いてて、でも、なんでそんなに若い顔してんだ??」
首を傾げるアティア。
「………コホン。【見た目老化防止魔法】にぇ。」
ボソッと、呟く。
「ふーん……いろんな魔法があるもんだな。」
そんな他愛のない話をしていると、今度は、青色のローブを着た魔導士の集団が現れた。
「わあーっ、赤と青が揃ってキレイ。」
2人の戦いを見ていたミラが、後ろを振り向き目を輝かせる。
そんな中、颯爽と現れた豪華な馬車が、アティア達の目の前でとまり、1人の少女が姿を現した。
「……あんた、こんなとこで何してるピコか??」
ピコ??……ん??よく見ると、綺麗な紫色のロングヘアーに、ウサ耳だ……ウサギの耳がついてる。
ミーコは、ちっ、と舌打ちをして。
「なんだピコ兎か、早かったにぇ、もう追いついたかにぇ。」
罰の悪そうな顔をして、うさ耳少女に突っかかる。
「は??あんたがテレテレしてるから、追いついただけピコよ??このポンコツ。」
眉間にシワを寄せ、腰に両手を当てて、ため息を漏らす……ウサ耳をピクピクうごかしながら。
すると、後ろからーー
「ウ……ウシャ……ウシャミミ……」
ウサ耳少女を目の当たりにし、興奮したミラの手の指が、ワシャワシャと無造作に動き始める。
そしてーーーアティアが異変に気付く。
「あっ……ウサ耳にも反応すんのか!?そこのウサ耳少女!!逃げなあ!!!」
すぐに叫んだ!!だが、ひと声遅かった。
「だーれがウサ耳少女ピコか!!わたしは、
【ピコル】ピコ!!」
ピクッーーー 「ん〜〜??」
ふと、危険を感じ、ピコルは後ろを振り返る、すると、目に飛び込んできたものは、獲物を狙う、ハンターの目をしたミラが、ピコルに飛びかかってきている姿であった。
「!!??ひっ……」
「う〜さ〜ぎ〜!!!」
反応する暇がなかった、時、すでに遅し、ミラはピコルに飛び付き、頬擦り開始!!!
「………うわぁ……なかなか、ミラの動きも俊敏にぇ。」
若干引きぎみに、なかなかやるじゃん、みたいな顔をしてうなる。
「あ〜あ、ミラは兎に目が無いからなー、昔から、見つけた瞬間、抱きつく癖があるんだよ。」
眉を下げ、困り笑いしつつ、解説する。
「す〜りすりすり〜。かわいい〜〜ウサ耳〜!!」
「やめろおぉぉ!!!離せえええぇぇ!!!」
力が思ったより強い。離れない!!!
「ねぇ〜〜!!ミーコ!!!一生のお願いピコ!!助けてえええ!!!」
「え〜??どーしょっかにぇ〜〜。」
ミーコは、ニヤニヤしながら、その様をジーっと見つめる、とても楽しそうだ。
「ウサ耳ふぅ〜〜っ。」
うさ耳に息を吹きかけ、遊ぶ。
ゾワゾワゾワゾワ………
「ひいいいいいぃぃぃぃ!!!!」
ものすごい断末魔が響き渡る。
「ぷー、くすくす。」
ミーコは小馬鹿にしてクスクス笑っている。
「……ったくしょうがねぇ奴だな……。」
アティアはミラの首筋の裏の皮を手で掴み、ピコルから強引に引き剥がす。
「はっ!!私は……またやってしまった!!」
我に帰るミラ。
「はあーっ……はあーっ……はあーっ。」
目の前には、登場僅か30秒足らずでひどい目にあった、ザコ兎が、力尽きていたーーー。