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超魔導戦線リクレシア  作者: 超一蘭
6/32

スーパーアティア。



 ある家の煙突から、モクモクと、煙がでている。


 

 トントン……トトントン……トトトン……トトトン……ストトトトン。



 「はいっ!!人参切ってー!!玉葱切ってー!!牛切ってー!!」



 軽快なリズムをきざみながら、大声ではしゃぐ老婆がいる。



 「サン婆!!ただいまー。」



 アティア達が元気に帰ってくる。



 「はい!!おかえりいいい!!手洗って、うがいしてきなあー!?」



 アティア、ミラ、カノンが家に帰宅すると同時に、奥のとびらから、元気なサンバおばあちゃんの声が聴こえてくる。



 「はーい。」



 アティアとミラは、いつもと同じトーンで返事を返し、洗面所へ、そしてカノンは、家の空気を吸う。



 「久しぶりだな、この匂い。」



 「カノン!!あんた!!帰ってきたんかい!?早よ言わんか!!料理、追加せないかんやん!?ちょっ……買いもん行ってくっから、そのホコリまみれの体、さっさと洗い流してきなあ!!」



   ダダダダダダーーーー!!!



 そう言うと、ダッシュでサン婆は、家を出て行った。


 

 「………相変わらずだな、サン婆は……。」



 そう言うと、カノンは脱衣所に向かう。



 「ミラ、一緒に入るか??」



 「うん!!入る!!やったー!!」


 

 「俺は、ローゴ爺の墓掃除してくるわ。」



 アティアは、庭にある墓を拭きにいく。



 「あ、そうだった、先に手を合わせよう。」



 「だねー。」



 カノンとミラも、墓の前で手を合わせる。


  

 「もう2年か、早いな。」



 「だなー、サン婆と、激しい言い合いのケンカして、珍しく激昂したと思ったら、脳の血管が切れて死んじまったからなー、あん時は焦ったぜ。」



 「ねー、びっくりだったねー、頭から血が吹き出したもんねー………さ、お風呂入ろう、お姉ちゃん。」



 「そだな。」



 ローゴとの思い出を語りながら、2人は風呂場へ向かった。



 「ローゴ爺、俺たちゃ元気でやってるぜ。」



   ダダダダダダダダ………キキィーーーッ。


 

 激しい砂煙を上げながら、急ブレーキをかけたかのような音をたてて、サン婆が帰ってきた。



 「ゼェ……ゼェ……ほれ!!アティア!!そんな小汚い墓掃除なんかしとらんで、はよう野菜の皮むき手伝いなあ!!!」



 「いや、あんたの旦那の墓なんだが!?」



 アティアは突っ込んだ。かわいそうなローゴ爺であった。



 30分後……



 「ふぅ……いいお湯だった。」



 「アティもはいりなよ〜〜、気持ち良かったよ〜。」



 「お!!じゃあ久しぶりにアティア!!一緒に風呂!!入ろうか!?!?」



 何を血迷ったのか、急にアティアを風呂に誘うサン婆。



 「アホか!?ヤダ!!絶対入ってくんなよ!?」

 


 「そりゃフリかい!?」



 「んなわけあるかあ!!??BBAーー!!!」



 ピシャアッ!!脱衣所のドアが激しく閉まる。



 「冗談だよい!!ったく……照れおって。」



 いや、心底嫌がってます。


       ミラとカノンは、そう、思った。



 「さて、サン婆、あとは私達がしよう、少し休んでてくれ、後は、煮るだけだろ??」



 「ごめんね、手伝うとか言っときながら、帰り遅くなっちゃって。」



 ミラは、申し訳なさそうにサンバに向かい、顔の前で手を合わせる。



 「どーせ夕方まで帰ってこんと思っとった!!いつものことじゃろが!!……しかしカノン、いつ戻ったんだい!?」



 よっこらせと、椅子に腰掛け、あっつあつの緑茶を片手にサンバが尋ねる。



 「思ったより任務が早く終わってな、報告は明後日までにすればいいから、久しぶりにサン婆を尋ねに帰ろうと思ったら、偶然アティアとバッタリ会ってね、久しぶりにしごいていたのさ。………あち。」



 鍋の具材がカノンの手に飛んで火傷をしてしまった!!



 「お姉ちゃん!大丈夫??」



 「舐めてれば治る。」



 チロチロと、舌で手の甲を舐めるカノン。



 「ダメ!!光よ、火傷を癒やして。」



 ミラの人差し指が少し光り、カノンの火傷した手の甲へ光が差す、すぐに火傷が治ってしまった。



 「ん、すまんな。」



 「ところで!!バリバリ……!!アティアの奴は!!モグモグ……3日後のナイト試験に参加する!!なんっつって!?行く行くゆーて、ききゃーせんのだけど!?いーんかい!?………ズズ……。」



 サン婆は、ボリボリと!!せんべいを食べ散らかしながら、緑茶で飲み込む!!



 「あいつは言い出したら効かんからな、それに……母さんの事もあって、どうあっても戦いの道に進むさ。遅いか、早いか、だけだろう、私もさっき話は聞いたよ、あの実力であれば、余裕でクリアできる。」



 出来上がりつつある、香ばしいカレーをかき混ぜながら、そう呟く。



 「あ、その事なんだけど……私も、アティについて行く!!」



 「はいいいぃ!!??ミラ!!何言ってんだい!?危ないよ!!やめときなあ!!!?」



 ドン!!と飲みかけの熱々の緑茶を激しく机の上に叩きつける!!そして、飛び散った緑茶が、サンバの手に降り注ぐ!!

 


 「あっつぁ!!!」



 ピタリ……カノンのカレーを混ぜる手が止まる。



 「……ミラ、サン婆の言う通りだ、下手したら死んでしまう、やめておいた方がいい、今のままでは、間違いなく死ぬぞ。」


 


  カノンは、振り返り、ミラを見据える、カノンの目が急に厳しくなった。



 「私、本気だよ?だから今日だって、一生懸命魔法の特訓したんだよ?アティアに、置いて行かれないように……いつも、崖から落ちそうな時とか、スライムにおそわれたりして、守ってもらってばかりだから……守られてばかりじゃなくて……私もアティアとお姉ちゃんの助けになりたいから……!!」



 カノンの目を真っ直ぐに、瞬きもすることなく、自分の思いを打ち明ける。



 カノンは少し息を吸い込む、そして……問う。



 「そうか……本気なんだな??引き返すことは許されんぞ?そんなに甘い場所ではないからな、一度戦場に出てしまえば、待っているのは、恐怖、悲鳴、怒号、死、だ、耐えられるのか??私もいつ死ぬか分からないこの状況下で、ホントに……アティアについていくんだな?」

 


 「行きます、本気です。」



 目に一層力が入る、一度もカノンから目を逸らさない。



 「……そうか………わかった、全く、お前の頑固さは、今に始まったことじゃないからな、ダメと言ってもついて行くつもりだろう??」



 ふぅ……とため息をついたあと、頭をポリポリかきながら、仕方なくカノンは折れた。



 「お姉ちゃん!!ありがとう!!私、頑張るから!!」



 ミラはホッとした表情を浮かべる。



 「やれやれ……こりゃあ……参ったね……寂しくなるねえ……。」



 サンバはボソッと、本音が漏れる。



 「ふいーっ、いい湯だったぜえーー!!」



 そんな空気の中、頭をバスタオルでワシワシ拭きながら、アティアが風呂から出てきた、そのまま食卓の椅子に腰をかける、3人は、アティアを見つめる。



 「………よっこらす……ん??どしたん??」



 まあ、そうなるよね―――。 



 部屋中に、カレーの匂いが染み渡る。



 「さ!!出来たぞ!!ミラ、カレーとポテトサラダをもって行ってくれ。」



 「はーい。」



 「……やれやれ!!いつかは、こうなるこたあ分かってたよ!!ったく!!アティア、ミラを、しっかり守ってやんなあ!!」



 バンっ!!サンバは、隣に座るアティアの背中に喝を入れる。



 「いで!?……はあ??まあ、いつもの事だろーがよ??」



 コト……コト……カチャ……カチャ……



 ミラはカレーとサラダを食卓に並べる。綺麗に盛り付けられて、とても美味しそうだ!!



 「うっひゃー!!!牛スジ煮込みカレーかよ!!?ご馳走だあーー!!!いっただきまーす!!」



    フライングいただきます発動!!!



 フライングいただきますとは!!家族団らんで食事をする際、皆で手を合わせていただきますをするのは至極当然だ、が、稀に極限まで腹を空かしたハナタレが、ルールを無視して我が先に食べようとする、万死にも値する、いただきますである。



 その瞬間、カノンの眼がギラリと光る、サラダ用のフォークが、ヒュッーと音を立てて、超スピードでアティアの額に放たれた!!!



 「甘いにぇ!!」  パシィーーー



 そのフォークを、左手の中指と人差し指でキャッチする!!


 

 「ふっ。」



 アティアは鼻で笑う。



 「なっ、なにい!!??止めた!?」



 アティア以外の3人は、その指のこなしに驚愕する!!今の今まで数百回、フライングいただきますをする、行儀の悪い弟を、カノンの放ったフォークが、そのバカ弟の額にクリーンヒットしていたのを目の当たりにしていたからだ!!



 今日初めて、そのフォークを止めたのだ!!



 「……す、少しは成長したようだな……やるではないか……。」



 カノンは口をひくつかせながら、少し悔しそうな顔をする。



 「すごい!!やっと止められたね!!」



 「初めてじゃね!?お前!!やるやんかい!!」



 サン婆とミラは、今までアティアが痛い目に会っていたのを知っていたため、素直に称賛する。



 「当然だ、今日の俺は、いつもと違うからな。」



 鼻から煙が出そうなほど、鼻息が荒い、とても嬉しそうな顔をしている。



 「いつもと違う!?今日のあんたはどう違うってんだい!!?」



 サンバが問うた。



 赤いアホ毛を、ピコピコ動かしながら、右手の親指を顔に向け、3人に、ドヤ顔で返した。



     「俺は、スーパーアティアだ。」




         なんじゃそら。



 




 

 

 

 



 


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