特訓。
ドカッ!!! パシッ!!!
ドドドドドド!!!
激しい、殴打音が聞こえる。
「だだだだだだああぁ!!!」
「む、この動きについてくるか、やるな!!」
昼下がりの晴天の中、草原で2つの影が激しく動き回る。
「ハァ……ハァ……くそ!!全部防がれた!?ならば!!くらえ!!メガトンキック!!」
「甘い!!ギガトンキック!!!」
ドガア!!!
激しい蹴りが、ぶつかり合う!!!
ボリボリ……ポリポリ……
その光景を、ビスケットを頬張りながら、静観する1人の少女が、終わらない動きに歯止めをかける。
ゴクリ………ビスケットを飲み込み。
「アティー!お姉ちゃーん!お昼ごはんもってきたよー!!早く来ないと、食べちゃうぞー。」
片手を口に当て、大声で2人を呼ぶ、金髪の可愛い女の子の、手にぶら下がっているバスケットには、手作りのサンドイッチが、ぎっしりと詰まっている。
黒髪の、赤いアホ毛を生やした、男の子の耳がピクリと動く、ミラの方を振り向き、
そのままミラに向かって諸凸猛進!!突っ込む!!!
「もうそんな時間か!!飯、飯、飯ーーー!!」
「ふええぇぇ〜〜!?アティ〜〜、ストップ!!ぶつかっちゃう〜〜。」
ぶつかる!!と思ってミラは目を瞑る……………
あれ??何事もない。
そっと目を開けるとーーーー
パクパク……!! モグモグ……!!
アティアが勢いよく、サンドイッチを頬張っている。
「もう〜、びっくりさせないでよ〜。」
「わふい、わふい。」
アティアの走ってきた方から、ゆっくり歩いてくる1人の女が、アティアの背後へ、
ぺシッ!!
モグモグ、食べながら喋るアティアの頭を、軽くはたく、長い黒髪の、美しい女性が、口を開く。
「アティア!行儀が悪い!それにまだ手も洗ってないよ!全く……汚い手で直接食べ物を触るなんて……ちゃんと手を洗っておいで!!!」
「……はーい、カノン姉ちゃん。」
ちょっとふてくされて、手洗い場へダッシュしていく。
「あ、お手拭き用意してたけど……」
「あ……まあ、いい訓練になるさ。」
2人は、少し苦笑し、手をしっかり拭いた後、サンドイッチに手を伸ばす。
パクパク……モグ……モグ……
「ふむ、卵に良いした味がついているな、レタスもとても新鮮だ。ミラ、料理上手くなったじゃないか。」
カノンは、満足そうにサンドイッチを堪能している。
「えへへ……サンバおばあちゃんが教えてくれたんだ、料理は、真心と、新鮮な食材と、した味だ!!って。」
「私がいない一年の間によく頑張っているな、偉いぞ、これは今夜の晩御飯も楽しみだな。」
「任せて!!頑張っておばあちゃんのお手伝いするからね!?」
ミラはご機嫌でサンドイッチを頬張る―――
うん、美味しい。
「ただいまーーー!!」
ピョーンと、かなり遠くからアティアがジャンプしてくる、かなり鍛えてあるのだろう、ものすごい跳躍力だ!!
「ひゃ〜、相変わらずものすごい運動神経ね〜
、はい、ドーゾ!!」
ミラは、びっくりしながらサンドイッチをアティアに手渡す。
「む、あんがちょ、カノンねーちゃんに鍛えられてっからな!!」
そう言うと、サンドイッチにかぶりつく!!
ガツガツ!!モグモグ!!
さすが成長期の男の子だ、勢いが違う。
10分後…………
サアアアアアァァァーーー
3人は、草原の中心にそびえ立つ、大きな千年樹の下で昼食をとっている、そよ風が葉を揺らし、爽やかな音を奏でる。
「ふぅ〜、ごっそさん!!美味かった!!ミラ、やるじゃん!!いい嫁さんになるんじゃね??」
腹12分目、しっかり食べたアティアが、大きく膨らんだお腹をおさえながら、大木によりかかり、座る。
「お粗末様でした、そ、そう??………ま……まあアティアがどうしてもって言うなら………その……な、なってあげても……いーよ?? お、お、………お嫁……しゃん。」
チラリと、頬を少し赤らめ、髪を指でクルクル絡ませながら、青い瞳でアティアを見る。
Z Z Z Z z z z ……z z z……
「………ズズ………よー、寝とる。」
カノンが茶を飲みながら囁く。
「…………ふんっ!!」
少し頬をふくらませ、不機嫌なミラである。
「それにしてもミラ、また魔力が高まっているな、久しぶりに勝負でもどうだ?」
「ホント!!やったあ!!」
待ってました、と言わんばかりにピョンと飛び上がる。
久しぶりにカノンと戯れるのが、よほど嬉しいのだろう。
爆睡するアティアから少し離れ、10メートルほど距離を置き、2人は向かいあう。
「ルールはシンプル!!一撃でも私に入れることが出来ればミラの勝ち!!まあ、かなり手加減するから安心しろ。」
「わかった!!当ててみせるよ!!お姉ちゃん!!」
微笑するカノンに向かって、両手を突き出す。
「光よ!!お姉ちゃんに攻撃だあ!!」
ミラの足元に白い魔法陣が現れ、ゆっくりと、クルクル回り出す、そして、ミラの手が光りだす。
「発動までの時間が掛かりすぎているぞ?それではすぐに距離を詰められるよ!!」
カノンは腕組みをしながら、ミラの動きを冷静に分析する。
「うん!!知ってる!!いくよ!?
ホーリーレイ!!」
ミラの掌から、無数の細いレーザービームがカノンに向かい、放たれる!!!
「ホーリーレイ!!いつの間に中級魔法を!?」
まさかの攻撃に少し驚く、が、カノンは腕組みしたまま動かない、光は、そのまま全てカノンを通り抜け、散り散り散っていく。
「あ、あれ??」
ミラは口をヒクヒクさせながら、首を傾げる。
「………コントロールが悪すぎる、いくら威力の高い魔法が放てても、当たらなければ意味がない。仕方がない、今日はコントロールの練習に切り替えよう、これでは宝の持ち腐れだからな。」
「え?教えてくれるの?やったぁーー!」
「では、あそこの岩にむけて、魔法を放つ練習からだ。」
「はーい。」
2人の特訓が始まった、そして4時間後……
「ふわあーー……え、もう夕方やんけ、久々にカノン姉ちゃんにしごかれたから、つかれたんかな??」
あくびをしながら、アティアが起きる。
「おーー……やってんねぇ。」
ドーン!!…………ドーン…………
「よし!!今日はここまで!!」
「ひぃ……ひぃ……あ、ありがとうございましたあ……」
膝に手をつき、ダラダラ流れる汗を拭う。
キラキラと、汗が光りながら地面に落ちる。
「命中の精度はかなり上がってきている、だが、まだまだ魔法の発動時間が遅すぎる、明日はその特訓をしよう。」
ポン、とミラの頭に手を乗せ、優しく微笑む、ミラも、ニコッと微笑み返す。
「だいぶしごかれたみたいだなー!ミラ!、もうすぐ日が暮れっから、晩飯食いに帰ろーぜ!!」
いつの間にか、凹んだ腹を鳴らしながら、2人に近づく。
「全く、お前は、どんな胃袋してるんだ??あれだけ食べたのに、もう腹を減らすとは……。」
「ほんとだよぉ……」
カノンは少し呆れ顔で笑いながら、ミラはヘトヘトになり、精魂果てた顔をして、家に向かって歩きだす。
アティアはーーー
「超成長期也!!」
このドヤ顔である。
そして、三人はサンバとロウゴの待つ家へ、真っ赤な夕陽に照らされながら、仲良く帰っていったのであった。