ホワイティコング。
パチンッ。
「結界石よ、私たちを守りたまえ。」
詠唱と共に、手に持っている魔法石を、中指と親指に込めた魔力で粉々に砕く、すると、粉がキラキラと輝きだす、その光が、アティア、ランス、ミラの周りを包む。
「結界まで張れんのか!!大したもんだ、本当に。」
結界内の小岩に腰をかけて、一息つくランス。
「小さな結界ならね〜、光よ。」
気絶している、アティアの頭を柔らかい膝に乗せ、回復魔法をかけるミラ。
「……それにしてもコイツ、かなりボロボロじゃねーか、ここに来る前にも戦ったのか??」
マジマジと、傷ついた手足を眺めるランス。
「うん……そーなんだ、ミーコって言う、猫耳ちゃんと戦って、魔力をほとんど使っちゃって……いつもなら、ゴリ3匹くらい、ちょちょいとやっつけちゃうんだけど、今日は疲れちゃったみたい。」
アティアのおでこを撫でながら、ボソッと呟く。
「猫耳………は!?ミーコ!?ミーコって……あの、ロイヤルガードのかよ!?」
ブフーッと、口に含んでいた水を吹き出す。
「うん!めっちゃ可愛かったよ!あと、うさ耳ちゃんと、スイカオバケもいたよ!!」
「うさ耳!?……ピコルか!!すごいメンバーだな!!……スイカお化けは流石にわからんが…………!?なるほど、結界道を新しく張り替えるためか!!結界道はかなりの長距離を繋がなければいけねえ、【最高クラスの魔力】と【魔力持続力】が無いと、すぐに消えちまうからな。」
口から滴る水を拭いながら、ポケットをゴソゴソし始める。
「あ〜、だからミーコ達みたいな、魔力の強い人が張るんだね〜、ランスくん、詳しいね!!」
「ああ!!俺の夢は【ジェネラル】になることだからな!!その辺の勉強は、昔からしっかりしてるぜ!!あ、あとランスでいーぜ。」
そう言いながら、ポケットに入った、非常食のビーフジャーキーみたいな食べ物を取り出すランス。
クンクン……クンクン…………パチッ。
香ばしい肉の匂いに反応して、鼻をヒクヒクさせながら、アティアが目を覚ました。
「よかった、起きたんだね!アテ………」
「飯ーーーーーー!!!!」
ホッと胸を撫で下ろし、声をかけるミラを置き去りにし、獣の如くランスの左手に顔から突っ込む!!!
「うおおおぉぉ!!??」
いきなり突っ込んでくるアティアに反応して、体ごと避けるランス。
「肉ぅ……!!よこせえ〜〜!!ガルルルル!!」
「び、ビビったじゃねーか!!いきなりなにしやがる!!」
獲物を狙う獣の顔になっている。それに、赤いアホ毛もピン!と伸びている。結構こわい。
「こっこれは!?体力が無い時!!そして極度の飢餓状態になった時だけに発動する!!
ビーストアティアモード!!!!」
グッと、握り拳をつくり、目を輝かせながら、声高らかにミラが力説しだした!!!
「ご丁寧に解説どーも!!!」
「グルルルル………」
ビーフジャーキーを巡っての睨み合い、互いに動かない!!そして、数呼吸後、ランスが動いた!!!
「………それ。」
「!?」
ヒョーイと、ミラの手前にビーフジャーキーを投げた。
ダダダダダダ!!!
ビーストアティアは、身体の四肢を全て使いながら、ビーフジャーキーに追いつき、かぶりつく!!!
「おー、よしよし。」
ビーストアティアの頭を、満面の笑みで頭をヨシヨシしながら、なだめるミラ。
あー、なんなんだ?こいつら……先が思いやられるぜ。
パーティーを組んだことに、ちょっとだけ後悔したランスであった。
10分後
「悪いな!!どうやらビースト化しちまったみてーだ!!あの癖は早く治さねーとな!!」
「いや、癖なのかよ!?」
両手を頭の後ろに組み、肉を食べて体力回復したアティアが笑いながら駆け上がる、ランスの切れ味鋭いツッコミが炸裂する中、いよいよ一行は、ゴリラ山の山頂に辿り着く。
「あ、見て見て〜〜、大岩の上に、白いゴリラさんがいるよ〜。」
「ウホ!!ウホ!!ウホ!!」
真っ白な3メートルはあろうかという大きなゴリラが、天に向かって、激しくドラミングをしている。
「ん??あれは……見てみろよ!!アイツの胸にぶら下がっているやつ!ブルーサファイアだ!!やっと見つけたー!!」
夕陽に照らされ、キラキラ光り輝くブルーサファイアを指差し、興奮するアティアそして、全く躊躇することなく、ゴリラに近づく。
「おい!!図体だけでかいマウンテンゴリラ!!その首にぶら下がってるブルーサファイアをよこしな!!」
ゴリラを見上げ、ブルーサファイアを指差し、ふんぞりかえる。
「………………。」
プイッ!!
ゴリラはチラ見した後、ソッポを向き、再びドラミングを始める。
「あ!?こんにゃろー!それがねーとナイト試験受けれねーんだよ!!…………命が惜しかったら早く渡しなーー!!」
うーん。ゴリラにカツアゲをする主人公。
「アティ!!ダメだよ!!そんなに脅したら、ゴリラさん可哀想だよ!!」
ミラがツカツカと近づいてきて、プンプンと、アティアを叱る。
「いや、ここはアティアに任せてみよーぜ、戦わないに越したことはねーからな。それに、お前さっき普通にゴリラ吹っ飛ばしてたじゃん??」
ランスが、どーどーと、眉を垂らしながらミラをなだめる。
ゴリラの眉がピクリと動く。
「これが最後だぜ!?マジでボコボコにされたくなかっ…………」
「仲間をやったのは、お前達か……!!」
ゴリラの口から、おっさんみたいな、図太い声が、聞こえる。
「え??」 「は??」 「んっ??」
アティア達は、3人共ゴリラの顔面を、一斉に見上げる。
「俺様の庭と、ファミリーを荒らしているというクソガキ共は!!お前たちかあーーー!!!」
口からいっぱい唾液を吐き散らしながら、怒りを露わにして白ゴリラが吠える!!!
「………………………。」
3人は目が点になっている、ゴリラが喋るなんて、たとえ地球が真っ二つに割れてもありえない、とりあえず固まって思考停止している。
「………………何黙ってんだ!?聞いているのか!?それに赤いアホ毛のガキ!!お前誰に向かって口聞いてんだ??この、【ホワイティコング】様にカツアゲたあ、100年早いぞ!!この、ゴリラの下位互換共が!!!」
さらに、罵声を浴びせるコング。
「………は?下位互換だあ??舐めやがってよお!!単細胞マウンテンゴリラの分際で、俺を見下してんじゃねーぞ??やんのかコラァ!!」
普通にペラペラと汚い言葉を話すゴリラに、イラっときたアティアも負けじと意地を見せる。
「………………。」
ランスとミラは、まだポカンとしている。
「あん??この俺様と戦る気か??チビガキ。」
「ああ、かかってこいや、クソゴリラ。」
早朝出発して、今は夕刻、沈む夕陽に照らされながら、ついに、カツアゲされたホワイティコングと小馬鹿にされたアティアのブルーサファイアをめぐる喧嘩が始まる!!




