スイカが2つ。
兎の耳をつけた少女が、魂が抜けたような顔をして、呆けている。
「あわわわ……ごめんなさい!!ごめんなさい!!初対面なのに、色々しちゃいまして、えーと…………ごめんなさい!!」
ミラは、呆けているウサ耳ピコルに向かって、顔を赤くし、ちょい涙を流しながら謝る。
「…………ほんとピコ………」
ピコルの口が微かに動いた。
「ぶいーーっ……………ふぇ??」
「ふぇ??じゃねーピコだよ!!いきなり見知らぬ奴に、背後から飛びつかれて、ほっぺすりすり、耳に甘い吐息とかかけられて、たまったもんじゃないピコ!!!許せないピコ!!!!」
ぶいーっと、鼻をティッシュでかんでいるミラに向かって、激しく怒りをあらわにする。
まあ、当然と言えば当然か……。
「おい、雑魚兎。」
「誰が雑魚兎ピコか!!?」
腹を抱えて笑っていたミーコが、急に真顔で雑魚兎に言葉を浴びせる。
「全く、情け無いにぇ、仮にも私と同じ【ロイヤルガード】なら、そもそもミラの飛びつきなんて、避けなきゃいけないにぇ。」
両手の掌を空にむけ、首を振りながらピコルに近づく。
「バカタレか!!そもそも、さっきあんた達が戦ってた【闘気】と【魔力】が残ってたせいで、弱小小娘の気配なんて、かき消されてたピコなの!!!分かる!?」
ピンっと、近づいてきたミーコに、デコピンをかます。
「いでっ、何するにぇ!!」
「ふーん……気づかなかった、か、なるほどな、強い奴でも、こんな事があんのか……小さな気配は、わりかし便利に働く事もあると言うことか……。」
デコピンをされているミーコを横目に、ふむふむと、ちゃっかり戦闘の知識を蓄えているアティア、本当は静かな昼下がりを過ごすはずが、今度はロイヤルガード同士の言い合いが始まった。
「そもそも!!なーんで助けてくれなかったピコか!!」
「あんな姿のピコルはレアだにぇ!!そんなもん、黙って見るに決まってるにぇ!!!」
「はあ〜〜!?黙って!?そういやあんた、さっき爆笑してたピコよね!?」
「え〜??どうだったかにぇ??忘れたにぇ。」
「くっ、このポンコツ猫〜〜!!!」
「雑魚兎!!かかってこいやあ!!!」
うーん、醜い掴み合いが、始まった。
「あわわわわ……私のせいだ……私のせいで、ごめんなさい〜!!」
その横で、ミラがどうしていいか分からず、ビービー泣き出す。
「うわぁ……。ナニコレ??」
カオスだーーー。
アティアはその状況をただ、漠然と見守るしかなかった。
めんどくさ、1人でさっさとゴリラ山行こうかな。
そう思っていると、ピコルの乗ってきた馬車の方から、新たな女の声が鳴り響くーー。
「こらあー!!何やってるんですか!?先輩、ピコル!!」
ピタリ、とミーコとピコルの動きが止まる。そのままゆっくり2人同時に、じわじわと振り返ろうとする。
すると、なかなかキレイなシルエットがあらわれ、両拳をポキポキ鳴らしながら、銀髪ショートボブ、推定Kカップはあろうかというボインが、ゆっくり、ゆっくり、静かなる怒りのオーラを放ちながら、近づいてくる。
「う、うるさいにぇ!!後輩は黙って……」
ミーコが、後輩は黙ってろと言わんばかりに振り向いた瞬間ーーー。
ドグウォアアアア!!!!
先程アティアが極細ビームで貫いた大岩を、爆乳銀髪女が反動もつけず、ただ、岩に向かって裏拳を振っただけで、えげつない音を立てて、爆散した!!!!
「は!?……ウソ……だろ??縦横3メートルくらいあったよね??あの岩……。」
「ひっく……えぐ……………え?」
アティアの顔が引き攣っている。そして、目線が自然に胸元へと移行する、銀髪女が岩を破壊した後、プルルン、プルルンと無造作に揺れる爆乳に、心と目を奪われる。
「ば……化け物だ……。」
ミラもビックリしすぎて泣くのをやめた。アティアと同じく、初めて見る大きさの胸に喉を鳴らす。そして、自然に口が動く。
「ス……スイカだ……。」
パラパラと、岩が石に変わって地面におちていく。
「ねえ??ミーコ先輩??時間ないの、わかってますよね??あなたのおかげで……後ろ……詰まってるんですけど??マジ、何してるんですかあ??それと……ピコル??あんた止めに行ったんじゃないの??何小動物同士、戯れているの??」
あまりの迫力のせいか、ロイヤルガードの2人が後退りする。
「い、今から、引きずって……連れて行くとこだった……ピコ……。」
マジギレしている同期生を前に、ピコルはしょうもない言い訳をしながら、フルフル震えている、その証拠に、自慢の長い耳が、へにゃんと、垂れ下がっている。
「い、いや違うにぇ!!?私は、ただダイヤの原石を見つけてにぇ!?え〜と……将来有望な騎士になるからちょいと……」
「………本当は??」
必死の言い訳を遮るが如く、低く、太い声で、真実を問う、爆乳。
「……………楽しくて、遊んでたにぇ。」
「……早く行きますよ??ピコル??」
そう言い残し、ミーコの猫耳を引っ張りながら、ズルズルミーコを引きずって、馬車へ向かう。
「ま、待つピコ〜〜!!」
「いでででで!!耳!!痛い!!もげる!!もっと優しくするにぇ〜〜!!!…………あ、アティア!!ミラ!!またにぇ〜!!!いでででで!!!」
そのままミーコは、ポイっと最前の馬車に放り込まれ、怒れる爆乳と、震えるピコルも後ろの馬車に乗り込み、馬車は走り去って行ってしまった。
「な、何だったんだ??あいつら………。」
「ねー……びっくりしちゃった、でも、ロイヤルガードと戦ったなんて、アティア運がいいよ!!なかなかないんじゃない??」
チラリとミラを見る。
「…………お前はロイヤルガードに頬擦りしてたけどな…………、まさかうさ耳にまで反応するとは。」
冷静に突っ込む、ミラは、舌を出し、軽めの拳で頭をコツン……いわゆるテヘペロである。
「だけど……凄え奴らだったことには間違いねえ、あの3人からは、なんかこう……底の知れねえ魔力を感じた……だてに【皇女の側近】やってねえぜ!!」
「だね〜、それにみんなとっても可愛かった!
【ロイヤルガード】かあ〜、憧れるなあ。」
走り去る2つの馬車を眺めながら、2人は奇妙な体験の感想を述べる。
「さーて!!俺らも止まってられねえな!!
ミラ!!行くぞ!!ゴリラ山に!!!」
「おー!!!とるぞーブルーサファイアー!!」
そして、2人は結界道を途中で抜け、出発から半日かかって、ようやく目の前に聳え立つゴリラ山に到着した。アティアとミラは、山のてっぺんを指差し、ブルーサファイアを求めて歩きだす。
その指の先には、一際大きな白いゴリラが、山の天辺でドラミングをしながら待ち構えていた。
ドンドンドンドンドン!!!!
「ウーホウホウホウホー!!!」




