日本砦
日本ギルドは結構な数がこのサーバーにあるが、その中でも最大の建物がこの砦。
アヴァロンの城よりは小さいが、その次に大きい。日本人の置いた店が並んで、コールイン地点は建物の前の地面ではなく、二階の正面ドアの前。二階になんでまた外に出るドアがついとるんかは不明やが、二階にあるのでコールインしてきたときに待ち伏せされてgang-bashになりづらいんが利点や。
この砦は、ギルドを問わず日本人の交流地点で、プレイヤーショップが並び、日本人向けの「お友達価格」で商品が売られとるんが特徴。一階からの入り口、および階段には乗り越えられない家具が積み上げられて封鎖されとるもんで、この砦の二階入り口のマーカーをもらわんと入れん。
つまり一見さんお断り、英語で言うならinvitation onlyというわけや。
ここの入り口マーカーは絶対になくさんように、持ち歩かんようにという約束の下、決まったプレイヤーだけがマークすることになっとって、銀行のボックスからのみ飛ぶのに同意して、手に入れることになる。
招待が出来るのは、上層部の決まった数人のみ、外国人プレイヤーはともかくも入れんということになっとるらしく、誰かが野良ゲートよろしく、入ってしまうと困るので、ゲート禁止でコールのみ。
中でうっかり死んだら、誰かにremoveしてもらって下へ降りて走って町へ行くか、誰かを中へ呼んでrez。
外国人がいるのが嫌いという差別的なアメリカ人プレイヤーに執拗に攻撃されることもあるらしいんやが、下から上に向かって撃つのは難しくても、上から下に魔法を撃つのは案外簡単で、上からバリバリと撃って倒すらしい。
プレイヤーショップは、かなりいい武器でも「使わないけど、出たから」と500ゴールド均一で出されていたりするんがちょっと驚くが、買い占めるようなことをするようなプレイヤーではまず、招待まではたどり着かん。信用と、信頼の上に成り立つ、身内用というわけやな。
俺とミサ、シヴァはここで適当に余ったアイテムをさばいとったんやが、ニコとロックが最近ここのマーカーをもらいよったらしい。実はセブンはもらえてへんのはまあ、あの口調とふるまいやからやな。自業自得。セブンも「入りたい」とは言いよらへん。
ニコとロックは知り合いの日本人ギルドで、newbieキャラの育成をスパーリングで手伝っているうちに、認められたらしい。まあ、ええことや。
ポーションがとても安いので、時々買わせてもらって、作っている人がわかっているので、時々regも届けているそうな。作っている本人は「損はしない」ようにしているらしいが、なんとなく手間のことを考えるといつもミサに頼むのはイヤやということやった。
この砦は「いつダメになってもいいように、1日以内に全部撤収出来るようにしてください」というルールがある。フレンドされた人間は全員そう言われる。なんでも、この砦が建っている地面には、1マス分、ゲームマスターを呼んで、障害物をどけてもらったところがあるそうで、そういう特別処置をしてくれるゲームマスターと、してくれないゲームマスターがいて、他のサーバーにはもっと小さい建物しかないらしい。
この砦も、いつ「不法建築」と言われるかわからないので、そうなった場合、ゲームマスターに撤収を求められるかもしれないから、とそういうことらしかった。
ニコはこの日本人砦の話を、ロールプレイギルドのKingdom of Luminusの女王にしたらしい。アヴァロンつながりで、アヴァロンと国交があるという設定になっとるこの小国ギルドの女王様が遊びに来た時に、ニコもご招待に預かったというわけやな。
その時に、ルミナスの女王は、あの場所に、本当は砦を建てたかったのだが、ゲームマスターにはそういう特別扱いをするわけにはいかないと断られたことがあると教えてくれたとか。ニコは、日本砦の「一日ですぐ撤収出来るようにしてくださいルール」の話をルミナスの女王に教えた。
なので、誰かがずっと住んでいるわけではなく、日本人プレイヤーの半ば公的な広場のように使われているのだという説明をしたら、ルミナスの女王は、ずっと理不尽だと思っていたが、今その話を聞いて、悔しくなくなった、と言ってくれたそうだ。
「だめになったら、全員、あきらめてください、運営側の決定に抗議はしませんのでそのつもりで、24時間以内に撤退です、それが出来ないと思われる方は、利用しないでください」と言われたと補足説明して、日本人って、そういうところがcoolだと、とルミナスの女王とTitaniaは感心していたらしい。
こういうとこから、お互いの文化の理解は進むもんなんかもしれんな。




