表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/152

セブンはお兄ちゃん

 白黒画面のニコのPC。


 ぱしゅんと音がして、ゲートが消える。


 ダンジョンで死んで、自分の死体から、物を盗っている人をみるのはいやなものだ。

 「lootされる」という。英語だとlooted。外に出て、装備がメイジっぽい人に、声をかける。ちなみにこれがもし、他のギルドの人で、相手がシヴァとかギルマス、ミサだったらもちろんみんな町までのゲートぐらい出してくれる。


 それを見慣れていたニコだった。

 

 なんでもないようなシーン、ダンジョンの前ではよく起きることだ。rezはかなり高階梯なので、スキルカンスト=100パーセントにかなり近くないとかけられないが、ゲートならスキルが75パーセント近辺で案外使えるぐらいかけられるというのもあって、rezより頼みやすいというのもある。


 ニコがタウンだと言われてくぐったゲートは、全然知らない所に到着するゲートだった。



 しょうがない、この国はそれほど広くもないはずなので、ニコは適当な方向に走り始めた。

 モンスターだろうが、動物だろうが幽霊なら怖くはない。


 海辺に出た。うーん、行き止まりですね。

 海にそって、海岸線を走ってみると、しばらくたって見覚えのある所に到着…した気がします。


 「がーん(こういう表現も覚えました)。ここは島、かもしれないです」


 メッセージが送れる人はだれか。ギルマス、シヴァ、ミサはオフ。ロックもオフ。

 David, Lady Titania, Roland もオフ。


 セブンがオン。


 ニコは、セブンがなんていうかがなんとなくわかる気がした。


 「ばっかじゃねえ?」


 絶対言う。



 不注意だった。これはゲートPKというものの亜種。ゲートPKというのは、マーカーを例えば、ダンジョンのすごい深層とかにマークしておいて、そのマーカーに「森の町」とか名前をつけて、人に渡したり「町に送ってあげる」といってnewbieを誘って、そのダンジョン深層に送り込んでしまうというようなPKのやり方のこと。

 もちろん、PKカウントは取らないし、間違いなく嫌がらせで、知らない人のゲートに入るリスクがあるということは教わっていた。


 幽霊を送り込むのはPKじゃないような気がするが、ともかくこれが嫌がらせっぽい行為なのはわかった。

 もう一周回ってみたけれど、やっぱりここは島だということが分かったニコは、もうこれはどうしようもないな、というわけでセブンに連絡してみることにした。


(セブン兄?)


(どうした、ニコ、PKか)


(幽霊になっていて、場所がわからないときには、どうしたらいいでしょう?)


(何が見える?)


(海が見えます)


(ほかは?)


(まだ一周しただけで目立つものはない感じです)


(一周、ってことは、もしかして島?)


(多分…。)


(大体、どうやってついたんだよ、そんなとこに。船?)


(船って、あるんですか?)


(あるよ)


(ゲート出してもらって入ったらついたのです)


(うーん、ゲートPK?)


(ニコ、ゲームの正規版買った時の箱もってるか)


(?????)


(ゲームのディスクが入っていた箱)


(あると思います)


(さがせ)


(ありました)


(その中に地図入ってるから)


(知らなかったです)


(まあ、いらないからな)


(地図あったか)


(ありました)


(形、どれに似てるかちょっと、見てみろ)


(ええ?無理ゲー)


(どこで覚えたそれ)


(セブンがいつも言っているでしょう)


 ニコは、多分これ…という島を見つけた。セブンは、その島に「白い像があったはず」と言い出した。探せ、というわけで、ニコは島を走り回り、馬に乗った人の像を見つけ出した。


(セブン、ありました、像。馬に乗っています)


(昔、イベントの時行った)


(ちょっと、その像のあたりでまってろ)


(なんどかゲートをかけるから、探して入れ)


(わかりました)


 セブンはマーカーをひとつ、銀行から探し出し、ギルドハウスにそれを置いてログオフ。

セブンのメイジがログオン、マーカーを取ってゲート。


…とやって、幽霊でゲートをくぐり、ギルドハウスの前まで、帰るのに成功。


rezもかけてもらって、ヒールしてもらったニコが


Nicole:*hugs*


Nicole:thank you Brother Seven!


といったら、セブンは


7L7:間抜けだよなあ…今度から野良ゲートはやめて走って帰ってこい!バーカ


――と言ったとか。


 いつも意地悪を言うセブンだけれど、助けてもらっていた最中は、全然意地悪を言わなかったの、とニコは喜んでいた。


 俺とニコはギルマスに呼ばれて、こういう離れ島にNewbieを飛ばす嫌がらせがあることを説明された。

 

 同盟タグ、または知り合いのいるのギルドでなければ、野良ゲート(と呼ばれるらしい)に入らないこと、もし入って、違うと思ったら、その瞬間ゲートに入りなおすのが、一番マシな選択肢であること、disperseをかけるぐらい念入りに嫌がらせをするようなプレイヤーもあるが、とりあえずじたばたする前に誰によって送り出されたのかをメモして、そのあと、今回のニコのように帰らせてもらえる友達がいれば頼んでみるか、どうにもならなければ、自分のメニューから「GMを呼ぶ」ボタンでGame seerか、Game counselorを呼ぶのが正攻法だ、というコツも教わった。


  Game Masterを呼ぶボタンは、Game MasterではないGame Seerとか、Game Counselorとかのボランティアさんたちを呼ぶこともある。この世界ではほとんどの問題解決がプレイヤーに任され、GMコールはよほどのことがないと推奨されないそうだけれども、幽霊で、見知らぬ島に置き去りにされるというのは、打つ手がかなりなくなるので、テキトウなところに飛ばすだけなら、やってくれるそう。


 ニコはログからチェックをして、それがPKなどの多い「要注意ギルド」のタグだったことから、「不注意やな」と言われていた。こういうことがあるから、ちゃんと覚えておかなくてはならない、と言われはしたが、今回はニコはがんばって対処したので、大雷にはならなかったらしい。


 ニコは、不注意でした、ごめんなさいとギルマスに謝って、でもセブンがやさしかった、と報告していた。


 シヴァはとギルマスは、そこのマーカーを持っていなかったので、セブンがいてよかったらしい。


 ニコも、俺もそこのマーカーをセブンに借りて、その島の像のそばでマーカー作成をした。

陸続きになっていないところは、全部あった方がいいんじゃない…?というニコに、俺もぎくっとした。


 もう、数か月遊んでいるけれども、たとえば、一番最初にその島へ行った人って、マーカーがなかったはずで、その人はどうやって?


 ニコとギルマスのところへ質問に行き、船に乗って、そこまで行くという話が聞けた。


 ニコは乗りたいです!!とギルマスにねだり、週末に、マーカー作成ツアーをやってもらうことになった。


 ニコはリアルの地図をもって、マークしたい場所をチェックしていた。


 シヴァとギルマスと、ミサ姉、俺、ニコの5人は時間をかけて回って、見たこともないようなオブジェや、像を見て回った。

 観光ですね、とニコは喜んでいた。


 セブンがあんな場所のマーカーを持っていたのは、多分セブンがかなりのオールドタイマーで、初期の頃から遊んでいるからだろうということだった。


 今はもう、継続しているだけといった状態だが、昔はいろいろなイベントが開催されていたこともあったらしい。ただ、セブンはベータからのプレイヤーで、ギルマス、ミサ姉、シヴァは実は後発組だときいてびっくりした。


 ニコに「ベータプレイヤー」の説明をしながら、船を「forward」とかコマンドで動かしているギルマスは、「船なんか久しぶりに乗った」と笑っていた。


 ギルドに、全部の島のマーカーを置く、とギルマスは言い、ギルドの小部屋の箱の中にマーカーを並べることになった。


 街、ダンジョン、島。 なるべくマークの位置を覚えて、飛ばされたときにこれを使ってお迎えゲートを出してもらい、帰ってこれるようにということで、マーカーの入った箱には、本を入れて、そこにマーカーの詳細がメモされた。


7L7:ニコって色んなものに引っ掛かるよな、バーカバーカ


Nicole:バカっていったら、そっちがバーカ


Siva:=) ニコ、それは正しいけど、どこで覚えたのそれ


Nicole:街で聞いたの。面白いと思って覚えておいたんです


Rock:兄妹げんかだ


Missa:本当にね


Ichi:ガキやのぅ、お前ら


7L7:ニコもバカっていったから二重にバーカ


Nicole:シヴァ、これは本当ですか?


Siva:この場合はね、ニコ、もう黙っておくのがいいんだよ


Siva:これは取り残される方がバカっぽいから。


Missa:そうねlol



 いつも意地悪言うくせに、頼ってこられたらその時は…。

 ケンカばっかりしていたけど、いざとなったら味方してくれる。それがうちの姉ちゃん。

 セブンもきっとそうなんだと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ