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王国で会いましょう  作者: 唐木沢みのり
始まりより前に…。
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プロローグ05 幼稚舎

 寝食満ち足りて、お友達と楽しく遊び、興味の持てる学習をしている幼児というのは幸せなものです。慣れてしまえば学園は楽しいところで、それ以外の生活を知らなければ何の問題もありませんでした。


 4歳から6歳の子どもが縦割りで同じ教室にいる幼稚舎のルールは多くはなく、習慣の力でルールは浸透しており、あまりうるさいことを言われた覚えはありません。ひとりひとりが好きなことをして遊べるようになっていました。


 ここでする遊びやお勉強や、作業は全部「おしごと」と呼ばれていて、機織りや縫いものの基本になるような作業や、はさみや糊を使う工作、洗濯や掃除にお絵描きや文字や算数の勉強まで、かなりの種類が用意されていました。キュウリを切ったり、玉ねぎをむいたりするような「おりょうりのおしごと」はいつも大人気でしたし、これはあとからわかるのですが修道院の収入に貢献している、ビーズ細工の練習になるような「ビーズのおしごと」は熱狂的に好きな子も多かったです。

 

  アクセサリなどは教室には持ち込み禁止ですが、この「ビーズのおしごと」で作ったアクセサリーは身に着けていてもよかったのがその理由で、その日一日、寮のお部屋に帰るまではつけていてもいいことになっていましたから、毎日飽きずに作っては付けました。指輪、腕輪、ネックレス、ティアラ、アンクレット…もうなんでもありで、お友達同士で交換もしました。


 6歳のお姉さんたちが、それぞれお気に入りの小さい人たちにビーズ細工をプレゼントするのはよくあることで、人気のある子はジャラジャラとネックレスだのブレスレットだのをしていたものでした。大好きなお姉さまからもらったビーズ細工は、大事に取っておくのです。


 ただ糸にビーズを通しただけのようなものから、複雑に糸を通して立体になったものまで、なんとなく捨てられなくて取っておいたら、初等科が終わるころにはおどろくほど貯まりました。全部バラバラにして、分類し直して長期休暇を使ってビーズ織りにしたのは、いまだに手元に残してあります。


 ビーズ織りだけではなく、立体のお花であるとか、驚くほど複雑なアクセサリーだとかといったようなものを作れるようになるのは、長期間ビーズ細工を趣味にするからでしょう。中高生になってもまだビーズ細工が好きな人が大勢ありました。


 大人になっても修道会に残り、いろいろな手工芸品をを作る人もいます。幼児のころからの筋金入りで、相当の腕前の人も多いのです。幼児が作ったビーズ細工はさすがに売り物にはなりませんが、初等部高学年ぐらいから、バザーに出すと売れるようなものを作る子はその時期にはシスターに自作のビーズ細工を受け取ってもらえました。


 今考えると、違法ともいえないでしょうが、微妙に児童労働っぽいですね。本人たちは楽しんでいたので、セーフ、ということにしておきましょう。

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