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ギルド会議の議題

 土曜日の7時は通常ギルド会議。シンイチにミサが入ってくれるので、副ギルマスを変更したいんやけどいいか、と頼まれた。別に何をしていたわけでもないので全然いいけど、ミサはソロがいいと言ってすべてのギルド加入の誘いを断っていたのに、どうしてまた今更。


 ミサはシンイチと俺の古くからの友達で、昔遊んでいたFPSがすばらしく強いプレイヤーだった。十代のころからの知り合いでそのころのプレイヤーの中でも女性は珍しく、引く手数多だったのだが、シンイチはそのあたり、思いっきり鈍くて、ミサを女と思ってもいないような扱いだった。ゲーマー同士、といえばわかるだろうか。


 そういうアプローチをかけられたり、女だということを揶揄されたり、女のくせにみたいなことを言われるのがもうすっかりいやになっていたミサは、シンイチのどっちの性別であろうとあんまり気にしないところが気に入ったといっていた。


 スコアがすべての世界で、強い奴が正義。そういう世界。技術をストイックに磨くプレイヤー同士だったのが気が合った理由なのかもしれない。


 シンイチが王国に出入りするようになってから俺とミサを呼んだ。FPSで培った「何か」はPvPがうまくなる要素と関連があったらしく、シンイチもミサも(ある程度までは俺も)瞬く間にランキングをかけあがったのだが、性別がミサの邪魔をした。


 プレイヤーの性別は男性で、キャラだけ女性、つまり俗にいう「ネカマ」だとはやし立てられたり、数を頼んで大勢で奇襲されてreskillされたり、どこへ行くにも狙われてどうにかして殺してやろうというプレイヤーが大量発生。シンイチのキャラはミサと組んで相当数の殺人カウントを取って赤ネームに何度なったか…。

 いくつかのキャラはついにパーマレッドになってしまって塩漬け、または削除で作り直し。


 俺のキャラも殺人カウントを消化するのに時間がかかり、パソコンを2台にしてアカウントを2つ持ってキャラを一時は10人使っていた。

 ミサに同情したランカーは多く、ハイランカー対雑魚大量の戦いは毎日の睡眠時間をすり減らした。


 サーバーは荒れて、殺伐とした街に敵対ギルド戦の死体が切り刻まれて散らばり、ギルドを強くしようとしたハイランカーは生意気なPKwannabeたちを持て余し、リアルでのケンカにまで発展したギルドもあったらしい。


 ミサは結局、ランクに参加するのをやめて、デュエルグラウンドに出てくることもなくなった。生産キャラを主に使って、PvPは親しいプレイヤーとだけ、室内でしかやらなくなった。


 シンイチは100人以上いたギルドを俺だけ残して解散させて、新しいキャラクターを一から作り直した。だから名前はシンイチではなく、Ichi。ロールプレイ寄りになったのは多分、殺伐としたプレイが嫌になったからだと思う。


 人との関係を大切にして、仲のいい人たちと楽しく遊ぼう。


 小学校の標語のようだが、ゲームの楽しみがまた、戻ってきたのは友情を大切にして、プレイヤー同士尊重しあって、まるでリアルの世界のように過ごすことにシンイチが心を砕いたから。たかがゲームだが、感情は本物。シンイチはいつもそう言う。


 リアルあってのゲーム。リアルを大事にしない奴はぶん殴るとセブンは怒られていた。ゲームを遊びすぎて単位がいくつか落ちそうになって、内定が出ていたのに危うく卒業不可になるところだった。シンイチは俺を連れてセブンの家へ行き、セブンの親御さんの前で、近くで見ていたつもりだったのに、こんなことになって申し訳ないと頭を下げた。


 なんとかして取れる分だけは取らせるように説得しますからと親御さんにお詫びを入れて、そのあと親御さんに大学の学費に一体いくら出させるつもりだと説教をして、一年ぐらい、なんてことないじゃん…みたいな軽さのセブンをぶん殴った(文字通り、バキッと殴った。親御さんに許可を取っていたあたり、シンイチらしい)。


 学校へ問い合わせをさせ、単位の必要数を把握してから教授と交渉させて足りない点数分の課題をもぎ取り(こんなことが出来るとは俺は考えついたことがなかった。すごい実行力)夜にゲームをしていた時間をすべて勉強に充てさせて、自分が仕事に行っている昼の間に何をしておくか指示を出して、課題が出来たらそれを添削して、結局単位をぎりぎりではあるが取らせて、卒業させてしまったのだった。


 セブンは普通に育った…というか三男で甘えん坊に育ったといったほうがいいだろうか、つまり「おやじにも殴られたことないのに!」というタイプで、卒業出来たのは、つまりワイルドと言えば聞こえはいいが、早い話が昔はグレていたというシンイチの鉄拳制裁に逆らえなかったというだけのこと。


 男にこれ以上加減がいるんかいとすごむシンイチを止め、泣くセブンをなだめながら勉強させるのは本当に大変だった。


 うちのギルドの学生プレイヤーに、テストスコアをギルマスに報告するルールがあるのは、つまりセブンの成績不良と卒業ギリギリ事件に懲りたシンイチの対応策。


 ニコは多分大丈夫だと思うが、ロックはどうだろう。今日のギルド会議の議題は、新しく副ギルドマスターになるミサと、ニコとロックの成績。


 ニコもロックも一年が4学期に分かれているそうで、短い期間で単位がはっきりするのはいいと思うが、テストはつまり年に4回。手がかかりそうな気がする。


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