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ロールプレイとギルドタグ

 ニコと会話をぽつりぽつり、交わしながら作業をしていると、アヴァロンの女王がギルドハウスにやってきた。いつもぞろぞろ護衛を連れてくるのに、今日は護衛は一人。お忍びという設定とみた。


 下の部屋でギルマスと話をしているが、別部屋で話されていることは聞こえない=ログに出ないので、作業続行。えーっとこれ、多分ニコのところに来るっていう話だから、またロールプレイか。膝をついて挨拶することになるんだろうなあ。まあ、しょうがない、途中から普通の会話に切り替わるといいんだけど、話はニコに任せよう。


 部屋にあがってきた護衛と女王がドアを開けて入ってくる。

ニコと立ち上がってドアの方を向いて跪いた。


Lady Titania:No formalities, friends. Good evening, Little one and Rock

 (堅苦しいことは抜きにね、おチビさん、ロック、こんばんは)

Nicole:Thank you for coming, My lady

 (来てくださってありがとうございます)

Rock:Good evening, my lady, and Roland

 (こんばんは、女王様、ローランドも)

Rock:*bows*

 (礼)

 このローランドというキャラはアヴァロンの護衛隊の筆頭ということになっていて、狩りだけではなく、各地のパトロールとか、ダンジョンでも割とPKの多いところとかを回っているので知り合いだ。

 しかしロールプレイはそろそろネタ切れ。どうしたもんだか。


 ローランドは部屋の入口の横に陣取り、女王は椅子に座った。やっぱり椅子に座らないのがロールプレイということなんだろうなあ。徹底してるっていうか。


 英語が時々変になったが、俺とローランドはPKKについての話をした。どこの誰を討伐したとか、どこにどんなPKが最近出て、名前が誰だとかそういう話で、こういうのは知っておくのと知らないのとで大きく差が出る。BPKをするキャラは普通の人に見えるので、気づくのは攻撃されてから…というようなことになるから、前もって名前がわかると、名前がフロートインしてきた途端に心構えが出来る(か逃げることが出来る)というわけだ。


 ダンジョンに出るMPKの名前も憶えておかないと、ヒールしてやったキャラがMPKとかシャレにならない。あとは要注意ギルドのタグとかも。たとえば、うちのギルドの略称はBB。このタグのキャラクターと出会った人は安心していい。つまり誰もPKをしないからだ。


アヴァロンのAvaもそう。このタグのキャラクターとはどこであっても挨拶するし、協力しあう。同盟しているしね。うちのタグのキャラクターが襲われていたら同盟ギルドの人なら絶対ヒールをくれるとか、襲っている相手を攻撃してくれるとか、そういう感じ。もし、Avaタグのキャラに殺されるようなことになったとしたら、それは事故扱い。


 わざとそうしたとしたら、アヴァロンで処分が出て、例えば追放とかになったりして、うちへは謝罪と賠償が来る。わざとそうしたという話じゃないなら、これも謝罪で、うちのギルマスのところにはアヴァロンからの使者が来る、または女王その人がやってくることになる。


 こういうところはリアルとちょっと似ている。会社があったとして、下っ端が失敗したら上司が謝りにくるし、不祥事を起こしたら謝りに来るのはやっぱり上司で、処分は社内で行われる。首になったら、その会社の責任はもうそこで終わり…というのと、ギルド追放後はうちとは無関係というのと似ている。


 やばいギルドタグといえば、このサーバーなら、たとえばPKA。このギルド名は「Pik@chu」。かわいいギルド名だけれど、略称を見るとわかるように、実のところはPKが所属する。弱い奴が悪い、という感じで、強ければ尊敬されるし、トップの方のプレイヤーはそれほどでもないが、下っ端が弱い者いじめの生産キャラ狩りとか、面白半分のNewbieハントをする。


 ここまではっきりしたギルドの略称じゃないものでも、ゴーストハンターズGHとか、ダンジョンブローラーズDBとか、見たら警戒しないといけないタグがいくつかあって、ギルマスに覚えさせられた。


 多分ニコも覚えさせられていると思う。まあ、うちのギルマスやシヴァだったらどのタグであろうと襲うやつが馬鹿というぐらいで、PKはもれなく全員返り討ち。打ち倒せれば名誉だというので、突然飛び掛かられることもあるようだけれど、名乗って一騎打ち申し込みならともかく、不意打ち上等程度の雑魚では瞬殺で、逃がさず倒すことにしているみたい。


 情けないのは、PKがギルマスにばっかり攻撃して、完璧雑魚扱いで俺は真横にいても放っておかれることがあること。ギルマスは俺に「ロック念のため離脱しとけ」とか打つ余裕がある。俺を死なせないようにする手間が…ということなんだろう、一緒に戦える日は遠そう。


 ニコは女王と機嫌よく話をしている。感情表現の多い会話で、あとでログを見たほうがよさそうだ。これからもきっとロールプレイは必要だろう。日本人プレイヤーが、アヴァロンの護衛隊に入ったそうだ。それはいいな、話をする時に苦労がない。


 近いうちにアヴァロンの戦士たちと訓練をするセッションはどうかと誘われたので招待を受けることになった。スキルはだいぶカンストに近づいていて、こうなるとモンスター相手では上がらなくなってくる。効率がいいのがスキルが高いプレイヤー同士で弱い武器を使って打ち合うスパーリングで、セブンやギルマス、シヴァのスキルはカンストだから、やらせてもらうことがある。


 胸を貸すほうはヒールをしながら殴られているだけという、退屈な作業なのでいつもは頼めないが、お互いカンストしていないもの同士ならwin-winというやつで、これはニコも誘っていったほうがよさそう。


 ついでに包帯持って行って、ヒールもあげられるし、ニコは盾を使いたいと言っていたから、小型の盾を持って行って構えておけばShieldスキルが上がるだろうし、いいアイディアだ。ギルマスの許可を取っておくと言っておいた。


 大勢のスパーリング、それもNewbieが多いとヒールが間に合わなくて死ぬし、死ぬとresurrection(略してres、またはrez=蘇生魔法)してくれる人が必要になる。


 蘇生魔法は八階梯だったか、十階梯だったかずいぶん上の方なので、戦士キャラではまず使えない。メイジなら使える人は多いけれど、うちでかけられるのはギルマスとシヴァ。セブンのメイジキャラもかけられるらしいけど、作ってみたけど使いづらくてメイジはやめたらしいから、あんまり見たことがないキャラだし、出してこないだろう。


 ギルマスかシヴァが一緒に来てくれれば誰かが死んでも安心だけど、それが無理ならアヴァロンの方でrez要員を用意してもらうことになる。そういうことも相談してもらわないといけないんだけど、これは俺が直接交渉しないのがロールプレイ。ギルマスに伝言して、ギルマスがアヴァロンガードか、アヴァロンのweapon master(という役職名のトレーニングを統括する人)と連絡を取って相談するのが正しい。


 アヴァロン側が招待を出したなら、うちは招待状にありがとうございますと手紙を出し、ニコとアヴァロンの城へいったら礼儀正しくご挨拶を…となるわけだ。その代わり、アヴァロン側はニコと俺に失礼がないようにして、もしうっかりスパーリングの途中で死んでしまったりしたらアヴァロンから謝罪が入る。ほんと、いつの間にこんなロールプレイヤーになったんだか、自分でもちょっとわからない。やっぱり、ニコのせいなのかもしれない。

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