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拗ねるセブン

Ichi:もうちょっと考えろ、セブン。ニコがうまいことやりよったから、問題にはならんかったけど、ああいう口を利くようになったらトラブルが無駄に増えるんや。何を考えてあのラノベやってん


ギルドハウスに呼びつけられたと思ったらこれだ。ニコが間抜けなのが悪いんじゃん。


Ichi:それともお前はリアルでああいうしゃべりかたする人間を見たことでもあんのんか


ぎいんと音がしてHPが半分ぐらいに減る。一発でこれだけ持っていかれるとか。スキル値カンストだろうなあ。ダメージボーナスが入るスキルも絶対取ってる。


7L7:いや、だってまさか本気にするとは


がしゅっと魔法が飛んできたのがわかった。ズバンとHPが減り、画面のフチが赤くなる。うわ、早っ。こうなったらもうHPが一桁になっているということで。今死んだらせっかくこないだ順位が上がったのが無駄になる。


7L7:すいませんでした


もう謝ってしまおう。どうせギルマスは寸止めにしてくれる。


ギルマスは武器を持ち替えたのだろう、小さめの曲刀を手にして一歩踏み込んできた。


次の瞬間、画面が白黒に。あ、ちょっと、死んだ。ええー?


 と思ったら蘇生の効果音がなって、蘇生しますかYes/No画面。


7L7:ギルマス、なんで、俺、こないだ順位が


Ichi:おう、気にしとったんかい、知らんかったわ、すまんのう


7L7:すまんのう、ってまた上げ直すのに時間かかるのに


Ichi:どうや、セブン。知らんかったわ、でさらっと流されたら、もっと気を遣ってくれたらええのにと思わんか?


Ichi:俺はな、大体は寸止めにしとるやろ。順位の上下を気にする奴は多いからな?練習する時も死なさんようにしとるんは知っとるよな?


うん、それは知ってる。全然歯が立たない。スキルキャップに到達しているスキルの数はそれほど違わないはずなのに、なぜこうまで差が出るのかさっぱり不明だ。


Ichi:例えば俺がな?毎回練習の度にお前のこと殺しとったら、練習する気がのうなるやろうが。ロックもそうや。それはこっちのほうが教えとるんやから当然の配慮やと俺は思うとる。得意不得意というものは誰にでもあるからな、なんで出来へんねんというのは、聞かれてもわからんのが普通や


荷物を死体から拾う。鎧上下、兜、小手、ネックガード、剣2本、ポーチ、ナイフ、はさみ、スクロール、包帯、マーカー。面倒くさい。


Ichi:TPOに合わせて言葉遣いを変えるということについては、お前の方がニコよりずっと上手なんや。ニコは初心者やからな。そのあたり、気を遣うたってくれへんか。みんなが、いろんなことで助け合ってほしいんや。お互い様ということを考えたれ


7L7:リアルのことなんか…ゲームなんだから


Ichi:この世界はな、「たかがゲーム」やないんやと俺は思うとる。感情は本物やからな。まあ、お前がお互い様はイヤや、というなら、シヴァも俺も手加減はせんがな。ほんなら、試しに今週末終わるまでは気は遣わんとこか。試してみてから考えや


ちょっとイラついただけなのに、この会話の後のゲームプレイはなかなかきつかった。今から考えたら生産の材料採取とかにすればよかったのに、普通に狩りに出かけることにしてしまったのが失敗だった。


Rock:今日はヒールは各自でかけろとギルマスに言われたけど、なんかあった?

ロックはあんまりこういうことに気を遣うタイプじゃないよな。別に、としか言えなかった。


結果、ものすごく大変だった。PvPの練習になるんじゃないかと思うぐらい、ヒールが間に合わなかった。包帯を巻いてもヒールが効くまでにダメージをくらうと回復量が減る仕様なのが無理。魔法は二階梯のライトヒールだと回復量が足りず、たかが四階梯のヒールが敵の攻撃を格闘スキルで振り払いながらかけると失敗しやすい。碌に稼ぎもしないうちに撤退。


 ギルドハウスに帰るとシヴァとギルマスにPvP=対人戦の稽古をつけられた。二人とも容赦なくえぐってくる。何度死んだか、思い出したくもない。reskill状態。順位は4ケタ落ち間違いなしだ。ロックは寸止めなのに。

ここで謝ってしまえばよかったのに、なんだか謝れなかった。


 床に自分の死体がびっしり散らばるのを見るのは気分が悪い。死体が消えるのに十五分かかるので、つまり十五分以内に何度も殺されてるってこと。ロックが個別メッセージを送ってくる。

(何やったのか知らないけど、謝っちゃえよ、俺も一緒に頭下げてやるから)

ムカッと来たのでロックにとびかかって殺しておいた。


 ギルマスは黙って俺を蘇生し続ける。これをギルマスがしてくれなかったらどうなるかというと、俺はタウン圏内まで走って行くか、NPCの野良ヒーラーがフィールドを歩いているのを捕まえるしかないってことだ。いや、もちろんアヴァロンへ飛び込めば誰かが蘇生してくれるだろうけど…カッコ悪い。

reg切れでヒールが出来なくなった。


 町のバンクにコールアウトするしかない。もういいや、コールアウトしてバンクでregだけポーチに足して、どうせやられるなら、知らない奴相手のほうがましだ、というわけでデュエルグラウンドへ行った。


 デュエルグラウンドというのは大きめの町の真ん中にある四角いコートのことで、ここでは同意したもの同士の対人戦が出来る。攻撃の犯罪者タグはこのコート内に限って出ないが、Loot、つまり死体から持ち物を取ると犯罪者タグが立って、街の中にあるので誰かがGuardと叫んだ途端にNPCに瞬殺されるから、死んでも持ち物はロストしないのがいいところ。


 デュエルのルールは、ハーフダメージとデスデュエルと言われるどちらかが死ぬまでのふたつが用意してあるが、どちらかが「参った」とか「resign」と表明すると終わるルールもシステム上のものではないけれど慣習としてある。


 ハーフダメージはどちらかのHPが半分になったところで画面に終了の表示がちょうど真ん中に視線を遮るように出て続行不能になる。


 この世界にこのデュエルグラウンドは2つあって、ひとつはここ。もう一つの町では複数人数のデュエルが出来る。二人、三人、五人ずつのチーム戦で、テイマー戦も広さがあるそっちでしかできない。テイマーが連れ歩くのはたいてい大きい竜なのでそうなる。


 デュエルグラウンドの周りにいるプレイヤーと交渉。


7L7:Half? or to the death?


Aleph:to the death


 勝ったり負けたりするのが楽しい。デュエルグラウンドの周りにはシステム側で配置されている野良ヒーラーが歩いているのですぐ蘇生も出来る。

 シヴァやギルマスには滅多に勝てない。ギルマスに勝てるとしたら六階梯以上の魔法を使わないで、マジック武器なしのNPCの店買い武器を使ってもらえば10回に1回はいい勝負に…と書いていて空しくなってくる。


 シヴァならハンデ戦で10回に2、3回ぐらいは取れるはず。ギルマスの順位は10位以内から絶対下がらない。シヴァだってベスト50から滅多に出ない。ロックだったら武器はどれを使っていても勝ち越せるのに。


 ニコは対人戦が好きではないらしい。弱いしな。攻撃も軽いし、ロックみたいなdex-meleeタイプを目指すみたい。刀を装備するのが好きらしくて、broad swordのほうが鹿ならもっと早く倒せると教えたのにダメージが軽い刀しか使っていない。


 このデュエルグラウンドの周りでうろうろしているのは、決まったギルドに入っていない野良プレイヤーが多い。口が悪くてPKぐらいなんでもないと思うような奴もいるし、生産系のキャラを殺してインゴットや板や、皮を奪い取るやつもいる。自分の生産キャラがやられたときに覚えておいた名前を見かけることもあるし、そういうやつらを戦闘キャラで叩きのめすのはいい気分だ。


 俺だって、結構PvPの腕はあるほうだと思う。デュエルグラウンドでは勝ち越してるし。ただ、ギルマスとシヴァがハイランカーだというのがちょっと規格外すぎるってこと。


――と思っていたら、いやに強いのに当たった。負ける。ギルマスやシヴァよりは弱いだろうけど、確実に押し負ける感じだ。防御型のキャラは鈍足で、攻撃が遅いはずで、魔法と包帯のコンボでヒールが間に合いやすいからと思っていたら、どうも持っている武器がマジックのようで、ひどいダメージが入る。


 ぐあっと画面が赤くなって持っていかれた。

 あーあ。英語でなんだかいっぱい罵倒されてる。武器が壊れたらしい。知るか!うるせえ!


7L7:Fuckin'freak,get lost!


一瞬、ギルマスの注意を思いだした。Fuckという言葉はギルドのタグをつけたキャラでは使うな、BBは全員ジェントルマンということになっているのだから、禁止だと。


 ああもう…ギルドやめちゃおうかな。大体ギルマスは説教臭すぎんだよ、みんな言いまくってるのに。FUとしか打たないやつも多いそれはつまりはFuck Youってことで、みんなあいさつ代わりにしか使ってないみたいなノリなのに、何がジェントルマンだ。


 やれやれ、今日はもう、鉱石でも掘って終わりにしよう。鎧の修理が多分要る。インゴットはプレイヤーから買うと高いから、自分で掘って精錬するのが一番安上がりだしな。


 町の宿屋でログアウトしてキャラを代えた。

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