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プレイヤータウン

 オフ以来、ニコはメンバーとうまいこと仲良うなった。セブンは割と女好きだという評判もあるからその点についてはニコに説明をしといたが、ゲーム内だけで遊んで、二人きりにならんかったら大丈夫やとニコは思うとるようや。


 言葉も前よりはずっとカジュアルに使えるようになって、言い直すことも減った。これはいい傾向やろう。


 この世界は外国人、主にアメリカ人が多い。開発元がアメリカだったというのもあって新しめのサーバーが日本人向け、古いサーバーがアメリカ人向けというてもええ。アルファベット順に選択画面が出るからこのサーバーが上の方に出て、テキトウに選んだだけともいうが、サーバー間のキャラクター移動は出来ないので事実上、一度決めたらもうよほどのことがない限り移らんプレイヤーばっかりや。


 古いアメリカ人プレイヤーが作っとるんが、プレイヤータウン、名付けてKingdom of Avalon。

 つまり、アーサー王物語が好きな人が作ったみたいやな。


 でかい城があり、王と女王が住んでいるという設定でロールプレイをしよる。王と女王のキャラもプレイヤーで、このゲームシステムの中にある「王城」のNPCとは別物。このアヴァロンに属しているプレイヤーはかなりイカれているというていい。


 男性なら、ギルドタグのほかにギルド内の地位があって(うちのギルドではguild masterとsub-guild masterを除けば任意の文字列をいれている)メンバーの推薦がないとすぐには本入会出来ん。サブギルドがあって、そこに入っている間は仮入会。戦闘系であればSquire(従卒)からスタート。


 対人戦が上手なってくるとWarrior(戦士)なんていうタグをつけるようになり、品行方正で善良なプレイヤーであると認められたらKnight of Avalonとかいう称号がギルド内で与えられる。そういう各種称号でも何人以上の推薦が必要か規定があって、城の中庭で任命式が行われるという、さすがのロールプレイ。


 女性はというと、戦闘系ならもちろんナイトも目指せるが、お城で女王様のおつきのメイドが出来たり、生産系なら特に裁縫の腕を上げれば女王様の針子のグループがあったり。男女問わず職人にもそれぞれ鍛冶屋だの、弓づくりの名人だのがスキル別にそろっていて、プレイヤータウンはつまりそういう職人から、騎士に兵隊に、護衛に…というメンバーが家を構えとるわけや。


 ばらばらに建てられるプレイヤーの家をここまでまとめるのに、他の家を用意して交換してもうたり、ある程度リアルマネーを積んだりしたらしいんやが、中世風の英語を話そうという努力をしたり、もちろん弱きを助け、人殺しを討伐し、女王と王が外へ出るときは護衛が付き従うというような、これは見とる分にはちょっと面白いが、大変な努力と時間と演技力がいる、そういう一種のなりきり集団やな。


 面白いのはこの国は王のPrince Consortという肩書で、女王が統べる国であるという設定なところや。つまり一番偉いんは女王様。


 その女王と懇意にしてもうとんのが、俺、つまりIchiという訳で俺はかなりゲーム内で英語を使うようになった。きっかけは俺が何とかゲットしたギルドハウス=家が、このプレイヤータウンの端の方にあるから。


 まだアヴァロンが整ってへんかった頃、一回り大きいのをよこすから交換してくれという条件を飲まず、それならええ隣人として付き合ってほしいという話をしたわけや。この世界において、家のそばの治安がええいうのはすごい大事なことやからな。


 面白半分に人を殺すプレイヤーが近所におったら、生産キャラが家にコールインするたびになぶり殺されたりするし、出入りするのにも気ぃ遣う。


 ロールプレイヤーたちは基本平和な人らで、プレイヤーキラーはあっという間に忌み嫌われて、追い出される。ロールプレイヤーのすごいところは人数がそろうと秩序だった動きが出来ることで、アヴァロン(とその同盟者)のタグのついたプレイヤーをあんまりたくさん殺すと対人戦の得意な騎士と戦士で構成された討伐隊が出るんは、このサーバーのプレイヤーキラーの常識や。


 PKが狩場にしているダンジョンに大勢でゲートインされて殲滅戦になるんやなかったら、囲まれてつかまっていざ尋常に一騎打ち。敵前逃亡は悔しいもんやし、負け犬という評判も立つ。一騎打ちで勝っても次の挑戦者を相手にすることになって、そのうち数で押し負ける、と。


 ついでにいうと、アヴァロンの職人たち=生産キャラはそれほど恐ろしうはないけども、女王からの通達でKOS(キル・オン・サイト。つまり名前を見た途端に殺害してもギルドからはお咎めなしであるという許可)命令が出て、名前が周知されるというほど悪名高くなった場合は、従者から、見習い戦士、戦士団、メイジ隊、護衛隊と騎士たちに至るまで、戦えるメンバーにゲーム内にいる間ずっと付け狙われることになる。


 従者や見習いが悪人を打ち取れば、スキルキャップを待たずに戦士に階級が上がるし、戦士ならたった十二人しかいない「女王の騎士たち」、つまり近衛に抜擢されるチャンスである、というようなことが会議で決まって周知されるのを見ていると、その凝りっぷりには頭が下がる。


 KOSターゲットになれば町でも、ダンジョンでも、フィールドでも気が抜けんようになるし、アヴァロンのメンバーは生産系まで入れると恐ろしい人数がおるから、連絡を取り合ったアヴァロン市民によって追い詰められたプレイヤーキラーがアヴァロンを訪れて、女王の前に膝を屈して赦しを求めたという話も聞いたことがある。


 そのプレイヤーキラーは割とロールプレイヤーの素質があったようで、立派に演技をして女王の恩赦を勝ち取り、悔い改めてプレイヤーキリングをやめて、アヴァロンの対人戦のトレーナーとなった…という結末になっとった。

 その始末を書いた本までアヴァロンのプレイヤーの店にはあったりする。面白いんで買うて読んだが、アヴァロンのお抱え作家というのもおるらしい(まだ会うたことはない)。


 そういうプレイヤータウンが近所にあれば、プレイヤーキラー、略してPKが出んというわけで、うちのギルドハウスはゲームのタウン圏内の次ぐらいに安全な場所に建っとるというわけや。


 ここにいるからには大きいギルドと手を結び、信頼関係を作り、まあある程度はお付き合いでロールプレイも出来なあかん。うちのギルドのメンバーがある程度英語が出来るメンバーばっかりなんは、そういう理由もある。


 少なくとも、hi,thx,yes,no,sorry以上の英会話が出来ないと話にならんし、Fare thee well, good neighbour,have a good hunt!なんて話しかけられたときに手を振って、Fare thee well, good sirぐらいのことを返せるかどうかは円滑な人づきあいに必要や。


 もともと英語が母国語のゴンザ、見ていたらなんとなく英語でコミュニケーションをしとったニコ(英語の方が日本語の敬語問題が出んかららしい)、このゲームに割と古くからなじんで外人のほうが多い時代を経験しとるセブンは、英語で簡単なやり取りなら出来るようやったし、俺とシヴァとロックは練習で、どうにか、という感じやろうか。


 ちなみにアヴァロンには日本人プレイヤーもかなりいる。生産系が多いようで、バイリンガルのプレイヤーが通訳しているらしいので、そういうプレイヤーの助けも時々借りとるが。まあ、ええお隣さん、ということやな。

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