駆逐作戦
「この世界を駆逐せよ」
悪の神が放った言葉の意味を、すぐには理解できなかった。世界を駆逐……響きからして中二病的である。
「この世界を構成する人間たちは、ある特定の駒たちによって、その運命を決定づけられている」
特定の駒たち?ああっ、要するに元々優秀なやつらが中枢にいて、私たちを支配しているっていうことだろう?
「特定の駒たちは世界に複数存在する。彼らを駆逐することができれば、世界は全てそなたに委ねられることになる」
だが問題は、その方法だ。
「そなたは既に一度死んでいる。死者が現世に戻ることを転生というな」
知ってる知ってる。昔よく読んだ小説のテーマだ。まるで、私が物語の主人公になるみたいだな。
「転生の方向は善と悪の2つあるわけだが……」
悪の転生を果たして、世界を破壊するってか?
面白そうだ。やってやろうじゃないか。
「そなたの顔を見る限り、これ以上説明は不要か。覚悟は決まっているようだな……」
私は頷いた。
「それで、方法は?」
これが一番の問題である。
「簡単だ。駒のリストをあげるから、それを探して見つけ次第駆逐するんだ」
「あの……だから、どうやって駆逐するんですか?」
「君は駆逐の意味を知らないのか?」
「いえ、知っているけど……」
「頭から丸呑み……喰っちまえばいいんだよ」
なるほど……頭から丸呑み…………?
「はあっ…………?」
「はあっ、じゃない。そなたは今まで動物を喰ったことが無いのか?」
「いや、そんなことはないけど……」
「ならば、話は簡単だ。同じ要領で喰えばいい」
「とは言ったって、人間だろう?」
「そなたは人肉を喰ったことが無いのか?」
「あの……神様?普通の人間はそんなことしませんよ……」
「そうなのか?この本には、以前その類の連中がいたことを裏付けているが……」
ああっ、そういう民族も確かにいるけれど……。
「まあっ、同じことだ」
「はあっ……」
「前置きはこれくらいにして……ほら、これがリストだ……」
リスト……なるほど、そういうことね。奴らはみんな駒だったのか?直接会ったことないけど、辿っていけば全部結びつくってわけね……。
「最初のターゲットは……こいつだ……」
悪の神が指で示したのは、時の総理大臣、溝内一考だった。
お決まり?うん、お決まり。