表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/19

借金のカタ

「通行止めだ」

そう言って、外からやってきたのは、パリスと同じ、キラキラをまとった「攻略対象」だった――。


 パリスが、俺を守るように抱きかかえる。

「この子は関係ありません。絵を見せていただけです」

 パリスはそう言うが、その金髪は「はっ」と肩を揺らして笑った。

「そのメスガキが誰だかなんてどうでも良いんだよ。文句は金返してから言え」

 ……パリスのやつも借金してやがった-!!この世界のやつら、ちょっとした町工場並みに借金してねえか!?

 クズ中のクズだった俺だって、借金したことねーぞ。親の財布から金取ったことはあるがな。


 やがて、ずん!と音がして、玄関の扉が破られた。丸太かなにかをぶつけた音だったようだ。

 そして、屈強な男達が5人ほど、室内になだれ込んでくる。


「パリス、てめえ!俺ら『グランド海賊団』に金借りておいて、何のんきに女連れこんでんだ!?」

 角刈りの男が言う。海賊って、金貸すの?なんかすげー能力者のガチバトルとかじゃねーの?俺は、自分が漫画の読み過ぎな知識しかないことを呪った。


 そして、俺は金髪の方を見る。

「あ、あんた、グランドっていうの?」

 俺がそのキラキラ男に声をかけると、金髪は、おや?という顔をしてから、また不敵に笑った。

「いかにも。俺が、海賊団の『キャプテン』、グランドだ」

 そう言って、グランドは顎をしゃくって部下に命令する。俺とパリスは別々に引き離され、俺は屈強な男達にしっかりと両手をまとめられ、捕らえられた。

「そのメスガキ、連れて行くぞ。どうやらパリスの野郎にはまだ金がないようだからな。借金のカタにさせてもらおう」

「そんな!止めてください!その子は関係ありません!」

 パリスが、その華奢な体で突っ込んでこようとするものの、男達が邪魔そうにパリスの体を払うと、すぐに力が入らなくなったようだった。

「放しなさいよ!放せったら!」

 俺が暴れても、両腕を掴まれているので、動きもしない。俺とパリスは、そうやって軽々と引き離されてしまった。


 外に連れ出されると、俺は包帯のような布で目隠しされて、何かに乗せられたようだった。

 そのまま、カポッカポッという音が聞こえ、どうやら俺は馬車に乗せられているのだということはわかった。


「……」

 俺は、うつむいて無言で耐えた。女が借金のカタにされるということは、どういうことかもわかっている。ホスト業界でも、古い体制の店だと、未だに、ツケが払えない女をソープに売り飛ばすこともあるそうだ。もちろん、うちの店ではやっていないが。

 

 やがて、馬車は止まり、俺は連れ出される。何かグラグラ揺れる地面を感じた。やつらの船の中だろうか。


「目隠しを外してやれ」

 そう言われ、俺の視界は自由になった。何か、でかい船の上で、ここは部屋の一室のようだ。

 すえた匂いが鼻先をくすぐる。俺は、顔をしかめた。女子校の少女達の匂いならまだ嗅いでも良いが、むさい男だらけの場所の匂いなど、記憶しておきたくない。

 そういえば、ホストたちの控え室も酷い匂いだった。ロウさんたちのように上級ホストとなると、香水の香り具合も調整して不快にならない程度だったが、俺たち下級ホストは、競い合って香水を付けるので、匂いが混ざって控え室にいると頭痛がするほどだった。


「さあ、味見といくか!」

 そう言って、むさい男ども20人ほどがいやらしい笑みを浮かべる。俺は、「味見」と言われて舌噛んで死ぬ度胸がない自分を恥じた。

「キャプテン、お先にどうぞ」

 そう、男の一人が言ったが、グランドは革手袋を外し、

「俺はいい。ガキの体には興味ねえからな。自室で休むから、お前ら好きにしろ」

 と言うと、ドアをくぐって行ってしまった。


 ……しまった。もしかして、分岐を間違ったのか?

 俺は、ゴクリと喉を鳴らした。以前、ホスト仲間と「ギャルゲー」をした際に、「分岐」といって、正しい受け答えや行動をしないと、バッドエンドなるものに繋がったことを思い出したのだ。

 どうせ汚されるのなら、むさい男どもより、グランドのような美形に越したことはない。それに、俺の体は今、処女かもしれない。ただでさえ、処女の体は性交痛が起きやすいのに、こいつらは挿れて出すことしか考えていなさそうだ。しかも、人数が多い。最悪だった。


「まずは俺からだ……」

 そう言うと、一人の男が前に出て、俺の胸をわしづかみにした。

「おほぅ。良いおっぱいしてるな。ガキのくせによお……」

 もう、早く終わってくれ、早く終わってくれ、とそればかり考えた。


――5分後。

 俺は、相変わらずおっぱいを揉まれ続けていた。当然の疑問が生じる。

「……なあ。お前、なんで胸だけ揉むんだ?」

 男は、驚いた口調で

「おっぱい揉む方が衛生的じゃねーか!?」

 と訊ねてきた。


「キャプテンが、おっぱい揉んでちんちん擦りつけてれば安全だからって……」

「大体、輪姦ったって、こいつらの顔見ながらセックスするとか耐えられんし……」

「ナカに入れたらガキができちまうだろうが。責任問題になるだろうが……」

「誰かの使った穴を使うとか、無理だろ常識的に……」


 男達はざわついている。

 ………………マジかこいつら。


 俺は、そこでひらめいた。男達に響き渡る声で宣言する。

「お前ら、私を誰だと思っている!豪商の娘、オリヴィエだ!これから私を汚すつもりなら、一回5万円を要求する!私は商人の娘だ!商人の取り立ては、地獄の果てまで行くからな!」

 そう言い終えると、男達は、しん、と黙り込んだ。

 

 やがて、

「ちっ、アバズレが……」

 という文句のあと、ぞろぞろと男達は出て行った。俺は正直、膝から崩れ落ちた。

「よ、良かった……汚されなくて、本当に良かった……!」

 そして、美少女すぎるのも、スタイルが良すぎるのも困りものだな、と反省した。これがブスなら、少なくとも海賊船に拉致などされずに済んだのだから。


 気がつくと、日が陰りはじめているようだった。

「……今日は帰れないかな……」

 俺は、ため息をついて、窓の向こうに広がる、夕日に照らされた街を眺めていた……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ