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パーティ台無し作戦!?

――3日間、俺は抜け殻のように過ごした。


 1日目、服屋がきらびやかなドレスを何着も持ってきた。親父は喜んで、「オリヴィエちゃんは何でも似合っちゃうからねええええ!!」とテンション高く言っていたが、俺は「はい」とだけ答えて過ごした。


 2日目、小物やアクセサリーを業者が持ってきた。親父はまたも上機嫌だったが、俺はまた「はい」とだけ答えて過ごした。


――そして3日目――



 マーメイドラインの水色のドレスは、まるで童話の「人魚姫」のようだった。

 アクセサリーも、ダイヤモンドとサファイアがふんだんに使われた、博物館にでも展示してあるレベルのアクセサリーを付けたが、俺は気が沈んだままだった。


 長い髪をゆるくリボンで巻き、化粧もキラが化粧品を作ってきてくれたものを使った。

 無気力状態だったからか、キラと顔を合わせても、例の重ったるい気まずい空気にならなかったのは幸いだ。


「とっても素敵ですよ、オリヴィエ様」

「こんなに美人になって。そういえば、お母様のお加減はいかがかしら?」

「いやー、これだけの美しさを持ったお嬢さんでは、もちろん結婚相手も引く手あまたでしょうな!」


 色々と客が来たが、俺は「はい」「ありがとうございます」と繰り返した。親父は、「実は娘は婚約をしていましてな。是非、この場でご紹介したいと思います。大人しいのは、緊張して照れているのですよ」と、それらしい言葉で俺のテンションの低さを誤魔化していた。


 そして、ざわめきと共に人波がモーセの逸話のようにぱっと割れた。派手に着飾った、親父と同じくらいの年のオバサンと、白いシャツに仕立ての良い紺のスーツ、そして前髪をオールバックに固めたグランドが馬車から降りてきた。


「あれがグランドか。さすがに今日は下品な庶民の服装ではない、か」

「海賊をやってらっしゃるんですって。おお怖い。公爵夫人もご苦労なされて……」


 そういったざわめきだったが、俺は急に、自分の心に灯がともった気がした。これは……怒りの炎だ。

 とにかく、色んなことへの怒りが急激に湧いてきて、俺はキッとグランドをにらんだ。


 グランドは、そんな俺に構わず、俺の真横に並ぶ。


「皆さん!本日は娘の成人パーティにようこそおいでくださいました!我がオリヴィエもめでたく成人となります!また、本日は娘の婚約者であるグランド氏にもおいでいただきまして、これをもって婚約会見とさせていただきます!どうぞごゆっくりお食事・ご歓談の方を……!」


 親父が形式張って言っているが、俺は座っていた豪奢な椅子から立ち上がり、おもむろに来客用のグラスを並べ始めた。

 ざわざわと人が動揺する中で、俺はそれを見ていた執事に「手伝って!トランプのタワーを作るみたいに並べるの!」と、声をかける。


 執事は、実に鮮やかな手つきでグラスを並べる。それが終わると、俺は、ふん、と鼻を鳴らして、大声をあげる。

「公爵夫人にーーーー礼!!」

 急に話を振られた公爵夫人は、目を白黒させていたが、俺が90度にお辞儀すると、来賓客もそれに習った。


「今日はーーー?素敵な!夫人に!!シャンパンシャンパン!!美味しい!でもゲップ出る!!シャンパンシャンパン!!ご馳走に!なっちゃうよ!?シャンパンシャンパン!!」

 

 そう、俺が始めたのは、いわゆるシャンパンコールであった。ホスト時代、何百回とやらされたアレだ。

 俺は、コールをしながら片手でシャンパンの瓶を取り、ギリギリまで栓を抜いていく。


「いくよ!!あ、よいしょ、3・2・1、ハイ!ポンッ!よっしゃーーーーーー!!」


 俺は、腹から声を出して、シャンパンコールをやりきった。そして、今度は空いている席の椅子を移動させて、メイドにそこに立つように指示する。

 椅子の上に立ったメイドにシャンパンの瓶を渡し、グラスタワーの上から注ぐように言う。


 すると、どうなるか。最初にいっぱいになったグラスからシャンパンが流れ、次のグラスへと移り、それが最後まで続くのだ。


『おお~!!』


 どよめきが起こる。そこで、俺はにっこりと笑って言ってみせた。

「以上、オリヴィエの一発芸でした~!!あ、シャンパンはもったいないので各自で飲んでくださいね?」


 公爵夫人は、目をしばたいている。さすがにこんなのが嫁に来たらとんでもないことになると気づいたようだ。

 しかし、

「面白いお嬢さんね」

「あのタワーは美しかったわ」

 と、傍から見ている分には、なかなかウケているようだ。


 これで、グランドも晴れて自由の身、今まで通り、海賊として過ごせる。それには、この婚約を破棄する……しかも、俺が破棄される側でなくてはならないのだ。

 

 しかし……グランドの隣に戻った俺のこめかみに、固いものが突きつけられた。

「動くな。怪我するぞ」

 そう、グランドが言った次の瞬間、会場には悲鳴が響いた。


 グランドは――銃を持っていた。そのまま俺は、親父たちがいる場所から引き離されるようにずりずりと引きずられる。


「逃げたいヤツは逃げろ!!だがな、そこの義父とお母様は動くな!!オリヴィエの頭が吹っ飛ぶぞ!!」

 

 グランド――何故だ!?俺は、混乱したまま、銃を突きつけられて後ろから抱きかかえるようにグランドの腕で拘束されていた。

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