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俺たちの過去

――夕食時。


「オリヴィエちゃん、いーーーっぱい食べてねっ!!」

 相変わらず、ニコニコと何が楽しいのか俺の食事している姿を見つめて、親父が言った。

「お父様……でも、最近なんだか贅肉が付いてきて、気になるのですが……」

 俺が、一旦食事を止めて言うと、親父は「ノンノンノンノン!!」と否定してみせた。

「オリヴィエちゃんは痩せてても太ってても可愛いでござるよ!」

 そういう話ではないのだが。

 俺は、この親父を説得することを諦めて、分厚い肉の塊にかじりついた。ちなみに、今日のメインディッシュは若鶏の半身焼きである。


 ここ数日、毎日毎日贅沢な食事ばかりしているので、腹回りが大きくなった気がするのだ。元のオリヴィエはどうやってこのナイスバディを維持していたのだろう?と考える。

 

 そして。

 食事が終わったのを確認してから、俺は「あの、お父様……」とおずおずと切り出した。

「何かなっ!?オリヴィエちゃんが僕に話しかけてくれたぞっ!!何かなっ!!」

 と、親父は上機嫌で問う。俺は、意を決すると、

「キラのことなんですが……」

 と言葉を続けた。しかし――


「……その名前を言うんじゃない……」

 急に、親父はうなるような低い声で、そう言った。

 俺は親父の豹変に絶句する。


「……あの娘にかかわると、お前は不幸になる。あの娘に近づくな」

 そう、親父は続けると、次の瞬間には、ぱっと顔を上げ、

「あっ!!ごめんねオリヴィエちゃん!!パパ怖かったね!!いつものパパじゃなかったね!!ごめんねっっ!!でも、大事なことだからさっ!!」

 と、続けた。


「……キラと私の間に、何があるっていうんですか……?」

 俺は、びびりながらも追及の手を休めない。

 親父は、黙り込んで、額に手を当て、うなり声をあげる。そして、


「お前が生まれた頃、あれの母親は、お前を殺そうとした……」

 と告げた。




「あれの母親は、私の遊び相手だった。正妻……お前の母親もそれは承知で、結婚してからもそれは続いた。……ある日、あれの母親が姿を見せなくなった。私は、めかけでいることが辛くなって逃げたのだと思った。しかし、だ」


 親父は、息を吸って、続ける。


「2年後、あれの母親は子供を連れて現れた。そして、その子供が私の子供だと告げ、『だから正妻の座は私のものだ』と私と妻に迫った。その時の子供が――」

「キラ、なんですね?」

 と、俺は言葉を継いで続ける。親父は、深くうなずいた。


「当時、妻はお前を妊娠していた。それを知るや、あれの母親は妻を四六時中見張るようになり、ついに……」

 そう、親父は言って、顔を覆う。

「妻を、坂の上から突き飛ばして、お前もろとも殺そうとした――」

 と、絞り出すように告げた。


「今、あれの母親は、刑務所に入っている。妻は、見張られている恐怖と殺されかけた事実に怯え、精神を病んで、今は郊外の病院で過ごしている。だから――」

 そう言って、親父は涙をぬぐうような仕草をした。

「だから、オリヴィエ、お前だけはパパが何があっても守ろうと思ったんだよ……!!何一つ不自由させず、お前の思うがままになるように、この世界を作り直そうとしたんだよ……!!」


 親父は、泣いているようだった。

 俺は、少なからずショックを受けていた。キラと俺は――異母姉妹……?キラは俺の姉なのか……!?


 というか……というか……


「全部お前が悪いんやないかーい!!」「フォカヌポウ!!」

 と、俺は親父の頭を叩いた。なんだよ妾って。要は愛人じゃねーか。

「ぱ、パパは、改心してオリヴィエちゃんを大事に大事に育てようと……!」

「いや、お前がそもそも悪いだろ。お袋を精神病院にぶち込んだきっかけもお前発じゃねーか。何被害者ぶって泣いてやがるんだ、気色悪い。泣けば全て許されるのは、美少女か美女だけだぞマジで」

 俺は、そう言って食堂の暖炉に置いてあった火かき棒を持ち上げた。


「お、オリヴィエちゃんっ!!?何かな?何する気なのかなっ!?」

「うるせー!てめーは女の敵だ!!俺が二度と世間に面見せられねーように顔面ぼっこぼこにしてやるから覚悟しろ!!」

「あ、お、おおうふ……でも、怒ってるオリヴィエちゃんもかわいいな」


 と、そこで。

「お嬢様、失礼」

 と同時に、首に熱を感じ、俺の視界はブラックアウトした。




――「えらいことを聞いてしまった……」


 俺は、ベッドの上でうなった。メイドと執事――俺を気絶させて部屋に運んだ本人が、俺を介抱している。


 正直、俺は、俺自身があそこまで激高するとは思ってもいなかった。ホストの間では……底辺ほど、女を何人もとっかえひっかえで遊ぶやつはいたし、女を孕ませて逃げるやつも特別珍しくはなかった。

 しかし、俺は、許せなかったのだ。それは、ここ数日で女として暮らしてきて、女の目線で世界を見ることができたからだと思う。


 もしくは……オリヴィエの感情が、まだ残っているのか。


「……キラは俺の姉ちゃんなのか……」


 俺には兄貴がいる。親と同じ、公務員を選んだ兄貴で、兄弟仲は最悪だった。だからこそ、俺は公務員に劣等感を持っているし、兄貴の方も俺のことを愚弟として見ているだろう。

 だから、一時期は、可愛い妹とか、優しい姉ちゃん、が欲しくて、七夕飾りに「お姉ちゃんがほしいです」とか絶対叶わない願い事を書いたりもしていた。

 

 しかし、恋愛対象としては別だ。

 ……しかし、俺は思う。


「……異母姉妹って、近親相姦になるのか?てか、罪になるのか?」

 だって、子供できないんだぜ?じゃあ別に良いんじゃねーの?って思ったりもする。


 色々と爆弾落とされた気分の俺は、次にキラに会った時にどんな顔をすれば良いのか、わからなくなっていた。

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