はじめての生理経験
海賊船に連れ去られ、半日を過ごした俺は、無事にドリード義賊団によって家まで送り届けられた。
「親父さんに会っても良いんだけど、ごめんな。義賊と商人は基本的に敵同士なんだ」
そう、ドリードは言って、「じゃあな」と去って行った。死ぬほどかっこいい別れだったので、俺は、現実世界に戻れたら早速女相手に使おうと思った。
パリスともそこで別れ、家の門をくぐる。
「……遅くなりまし……」
そこまで言うと、すぐに、玄関に親父が仁王立ちしていた。そして、
「きゅううううううう!!オリヴィエちゃん、遅かったね!大丈夫だった!?転んじゃって痛くて動けなかったの??」
と、一瞬でキモヲタにチェンジされた。ホントに、これが俺の今の親父なんだよな。
そして、親父は「おや……」と、俺の全身を眺めた。
……しまった。ずぶ濡れのままだ。
「ぎゃああああああ!!オリヴィエちゃんが寒い寒いしてるでござるううううう!!どうしたの!?危ないところに行っちゃダメでしょ!!馬鹿!オリヴィエちゃんの馬鹿!!パパは心臓発作で死にそうですううううう!!」
やっぱりか。親父は、発狂寸前になりながら、メイドを呼ぶ。メイドは、「まあ」と小さく言うと、「オリヴィエ様、こちらに」と、俺を風呂場まで連れて行った。
俺は、風呂場で服を脱ぐ。もう、この体を見ても何とも思わなくなってきた。
そして、ショーツに手をかけると……。
ぬるり。
そんな、嫌な生暖かい感触があった。
「うっそ!漏らした!?」
俺は慌ててショーツを確認すると……。
血だ。
股から血が出ていた。血が。
「うおえええええ!メイドおおおおお!!」
俺は、扉の前で待機しているであろうメイドを呼んだ。
風呂場に入ってきたメイドは、やはり小さく「まあ」と声を上げただけだった。
さすがに俺も、生理のことはわかっている。
女が子供を産むための器官で、股から血を流して、腹も痛くなるらしいとは聞いていた。しかし、女の排泄姿と一緒で、俺も生で生理を見たことも経験したこともない。それに、俺は血が大っきらいなのだ。
「お嬢様、これをお付けください」
そう差し出されたのが、黒い内側につるつるする素材が使われたショーツと、やはり黒のガードル、それから四角い「12個入り」と書かれた一見ピンクで可愛さを演じられた謎の物体だった。
「まず、このナプキンを袋から出します」
「おお、CMでは見たことあるけど……」
「そして、この包装をくるくると解いていきます。粘着テープが付いている方をショーツのクロッチに合わせて、あとは、そのまま履くだけです」
俺は、そのようにしてみたが、なんだか尻がごわごわする。それに、ぺたりと股に何かが貼り付いている。
「メイド、これなんかおかしくねーか?」
「……あ。失礼いたしました。羽付きなので、羽をショーツの外側に出して、クロッチに貼ってください」
……女って、こんなのを1ヶ月に1度、1週間やるのか。羽を付けても、尻のごわごわは気になるし、まさにオムツを付けている状態で、気持ちが悪い。
それにしても。
「ショーツは普通のじゃだめなのか?」
「だめということはありませんが、漏れますよ」
「え?」
「血が、隙間を伝って漏れるのです。そのために、このガードルで肌とナプキンを密着させて、漏れを防ぐのです」
俺は、「はあ~……」と納得した。知り合いの水商売女は、タンポンを入れていることが多かったが、多くの女が「タンポン抵抗ある」と言うのも無理はない、と思った。俺だって、「ケツに座薬入れたまま1週間過ごせ。3時間ごとに取り替えろ」と言われたら死ぬ。
しかし、あのまま海賊船にいなくて良かった、と本気で思った。
あそこは男所帯だし、下手するとナプキンの存在自体知らないやつもいそうだ。
だが……それにしても……。
「これ、取り替えるの俺、だよな?」
「はあ」
「お前が取り替えたりしてくれない?」
「何言ってるんですか」
いや、俺も言ってることがひでーな、とは思ったが、俺は血が苦手なのだ。血まみれのナプキンを処理するとか、考えただけでも気分が沈む。
「衛生面でも、3時間ごとに取り替えることをお勧めします。3日目以降なら、出血は治まってくるので、時間を延ばしても平気ですよ」
そう言われ、俺は「そんなもんか」と思った。生理って、1週間ずっと血が出ると思っていたのだが。
……そういえば、客の女が、よくホラー映画を観たがっていたことを思い出した。
俺は、映画館でできるだけスクリーンを見ないように目を閉じていたのだが、女がそういうスプラッタが割と平気なのは、この生理で大量の出血を経験しているせいなのかとも考えた。
正直、俺が少女の体になってから、「女は損だ」と思うことが増えてきた。
最初こそ、「美少女最高じゃん!」とも思ったのだが、色々と面倒ごとが多すぎる。俺は、世の中の女のことを、少しだけ尊敬した。
危うく好きでもない男達に輪姦されそうになるわ、体はうまく動かないわ、筋肉量そもそも少ないわ、処女は最初が痛てーわ、挙げ句の果てに股から血が出て、しかも腹が痛くなってイライラもするとか……女ってハードモードだな。
……そこで、俺は、恐ろしいことに気がついた。
――「ナカで出したらガキができるだろうが」
海賊の男の一人が言っていた言葉だ。この世界で子供ができたら、俺、産むことになるんだろうか?あの、「鼻からスイカ出す痛み」って言われてるあれを、だ。
絶対嫌だ!!妊娠だけは嫌だ!!
俺は、過去の女達に気軽に「今日は生じゃだめ?」とか聞いていた自分をぶん殴りたくなった。後々大変なのは女なんだよ!!
俺は、少しだけフェミニストに近づいた気がした。




