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黒いバッグ ⅷ

「帰ってきたのかな、清水さん」

「たぶんそうだと思う」


 僕と琴美は二人で下に降りていった。玄関を開けると、外にはやはり純が立っていた。


「どうだった?」

「ちゃんと燃やしてきた。灰になっているのは確認してきたよ」

「そうか。じゃあやはり終わってたんだな」

「そっちで何かあったのか?」

「幻覚が途中で途絶えたんだ。それでもしかして純がやってくれたからじゃないかって」

「ははあ、そういうことか」

「まあいいや、それよりもそろそろ帰るか?夜も遅いし」

「そうだな。もう帰ることにするよ」


 純は言った。


 それから純が帰り、僕らはもう夜も遅かったので寝ることにした。僕は自分の部屋に入った。するとベッドの上に巨大な丸いものが乗っていた。それは黒かった。表面は一様につるつるであった。息づくように膨らんだり縮んだりすることから、生物であることがうかがい知れた。


 丸い生物の真ん中あたりにあった瞳が開かれた。それはまるで人間のそれであった。


 僕はすぐさま部屋から出て、扉を閉じた。そしてすぐさま琴美のもとに向かった。


「琴美!」

「どうしたのお兄ちゃん?」

「まだ終わってない」

「嘘、だよね?」

「嘘じゃない。ついさっき、また幻覚を見せられた」

「そんな」


 遠いところで重いものが床に落ちるような音が聞こえた。それは僕の部屋のある方角からだった。


「電話をかけるんだ、純に」

「電話番号、知らない」

「僕が知ってる。電話はあるか?」

「うん、ここに」


 僕は琴美からスマホを受け取ると電話をかけた。


「もしもし、純。すまないが、まだ終わっていなかったみたいだ」

「やはりそうだったか」

「どうしたらいい?だってあのバッグは燃やしたわけだろう。そしたら現象を止めようにも現象を起こしているものがなくなっているわけだから、どうしようもないじゃないか。もしかして、これは僕らが死ぬまでずっと永遠に続くのか?」

「そんなことはさせない。約束する。なあ、僕に少し時間をくれないか。今、切羽詰まっているのはわかっている。けれどできる限り早く対処する」

「君を信じるよ」

「ありがとう」


 そして通話が切れた。純が通話を切ったのだ。よほど急いでいるらしい。


「清水さんがなんとかしてくれるの?」


 琴美が訊いた。


「ああ。大丈夫だ。純がなんとかしてくれるまで、二人で乗り切ろう」

 床をのたうつ重い音が扉のすぐそばにまで迫っていた。僕らは二人とも、扉を見つめた。


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